ホビーレーサー!~最強中年はロードレースで敗北を満喫する~

大場里桜

文字の大きさ
59 / 101
5章 2年目の終わり。それは夢の終わり。

第59話 チームメンバーとヒルクライムする

しおりを挟む
 今日はチームメンバーでヒルクライムのトレーニングをする事にした。集合場所は定番のヤビツ峠。
 麓の名古木の交差点に集まったのは西野、北見さん、木野さん、南原さん、ひまりちゃんの5人と私。忙しい東尾師匠と普段何処で走っているか謎の利男は不参加だ。
 さて今日はどうしようか? トレーニングで一緒に走ると言っても走力に差がある。
 北見さんと木野さんは私より明らかに速いから、序盤で置いていかれると思う。
 私は以前より速くなったから、ひまりちゃんより前を走る事になる。
 ひまりちゃんと一緒に走るだろう南原さんは最後尾になるだろう。
 西野は……いつも通り私と合わせて走ってくれるだろう。
 だから、一緒に走りやすいように今のベストタイムを西野に伝える。
 西野は北見さんや木野さんより遅いけど、私より明らかに速いから自由に走ってくれても良いのだけどな。

「余計な事は言わないでね。分かったわね?」

 突然ひまりちゃんに話しかけられる。
 余計な事か……この前の事だよな。
 私が余計な事を言って、南原さんに嫌われるのが嫌だという意味だよな。
 それは彼の事を気に入ってくれているって事。
 もちろん余計な事は言わないさ、二人を応援しているからな。

「分かってるよ。今日は楽しく走ろう。南原さんを頼むよ」
「そういうのが余計だって」

 ひまりちゃんが不機嫌そうに言った後、南原さんの方に向かっていった。

「えっと、今の……ひまりちゃん」

 隣にいた西野が戸惑いがちに言う。
 まぁ、今までのひまりちゃんと態度が違うから戸惑うだろうな。

「あぁ、今のがひまりちゃんだな」
「どういう事か言いなさいよ。隠し立ては無しよ」

 西野に詰め寄られる。
 そんなに追求するような目をしなくても、西野には正直に話すのにな。

「隠す事なんてないよ。実は……」

 南原さんとひまりちゃんの出来事を西野に伝えた。
 南原さんがレースを引退する話、ひまりちゃんと出会った理由……

「なるほどね。事情は分かったけど、少し失礼じゃない?」
「いいんじゃないかな。素直なだけだよ」
「でもねぇ……」
「切っ掛けは何であれ、余計な事を言われたくないって事は、南原さんの事を気にしてるからだろう。若いっていいよな」
「猛士はどうなの?」
「私か? 今までは仕事一筋だったし、今はレース一筋だからな。考えてはいないな」
「そんなんで良いの? 年齢的に、そろそろ結婚とか考えたら?」
「結婚は年齢で決めるものではないよ。ノノこそどうなんだ? チームリーダーとして応援するよ」
「お節介おじさんの応援なんていらないわよ」

 西野が不機嫌になる。
 私は若い皆を応援したいだけなのだがな。
 どうもうまくいかない。これがジェネレーションギャップなのだろうか?
 年齢が近い北見さんと木野さんに聞いてみる。

「恋愛に年代は関係ねぇだろ? 中杉君はそういうのダメダメだな」
「猛士さんはもう少し周りを見た方が良いですよ。色々鈍感すぎです」

 二人にまで否定されるとは……
 恋愛に年代は関係ない……私が駄目だと言うが……何故だ?
 気にしても仕方がないな。今はこれから上る峠に集中しよう。
 ひまりちゃんの行動で話が逸れたが、今日は皆で峠を走りに来たのだ。
 早速みんなで走り始める。
 明らかに速い北見さんと木野さんの二人が、予定通り先頭を走る。
 カーブを2回曲がった時にはあっさり100m程度離されていた。
 この速度差だと、あと5分程度で視界から消えそうだな。
 南原さんはひまりちゃんに合わせて後方をゆっくり走っている。
 私は必死に西野を追いかける。いつも的確だな。
 西野は私のベストタイムより少し速い速度で淡々と走っている。
 私のヒルクライムの走り方は特殊だ。
 通常は抑え気味で走り、苦手な10%を超える短い急坂の部分が現れたら、腰を上げスプリントに近い走りで一気に駆け上がる。
 そして急坂を上り切った後に抑え気味に走り足を休める。
 平地のレースと同じでスプリントインターバルで上るのだ。
 普通はヒルクライムで加減速を行う走りはオススメ出来ない。
 それでも私がスプリントを織り交ぜながら上るのは、加減速に強いスプリンターだからだ。
 爆発的な加速力を発揮する速筋を使わないとタイムが縮められない。
 速筋が多いって事は逆に遅筋が少ないのだから、普通に淡々と走っているだけでは対抗出来ない。
 今の走りが正しいかは分からない。
 だけど今の自分に出来る事をするだけだ。
 黙々と前を走る西野を追いかける。
 そして頂上に辿り着いた……ベストタイムより3分遅いな。
 前半飛ばし過ぎて後半力尽きたからだな。
 西野に速くなったところを見せようと思って少し力み過ぎたか。
 先に着いていた北見さん、木野さんと一緒に10分待ったところで、南原さんとひまりちゃんの二人も頂上に辿り着いた。

「お待たせしました」

 これで全員集合だな。折角だから、もう一本走る前に少しロードバイクについて話をするか。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...