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今思えば我ながら早熟な子だった。同年代の子と遊んでいていても年の離れた兄のようなポジション。両親は村の人に賢い静かな子といつも言っていが心の何処かで否定していた。また自分が猫の姿になれ、常時そのふわふわな耳と尻尾があるのが不思議だった。まぁ、レンという自分の名前は何故かしっくりきたのだが。

自分の中のモヤモヤした疑問が解消されたのは村によそ者が来て略奪をし、村が燃えている様を見た時だ。森に囲まれた村を見渡せる崖の上の一等高い木。そこで俺は故郷が燃えているのを見ながらふと思う。
「あれ、俺ってこんな目よかったか?」
確かいつもメガネをかけていたはず…

メガネ?メガネってなんだ?たしかレンズを入れて視力を良くするものだよな。…じゃあなんで俺はそれを使っていた?こんなにも目が良いのに。

考えれば考えるほど新たな疑問が出てきて、次第に自分が何かさえ分からなくなる。

ああ、俺には前世があるんだと自覚した時は首輪をし、鎖に繋がれていた。

鎖を引っ張ってみれば大袈裟にジャラジャラなる。
「ああ、起きたか!どれ、その顔を見せろ。」
音に引き寄せられるように来たのはふくよかな人間。俺も前世は人間だったんだよなーっと焦点の合わない目で人間を見る。

「おほう!長毛の白い毛並みだけでも希少というのにさらにその紫の目!顔も整っておるしあの辺鄙な村に行った甲斐があるってものだな!」
「辺鄙な村……お前、俺の故郷を燃やした奴らの仲間か!」
鳥肌が立ち、目の焦点がしっかりすれば、目の前の人間が急に気持ち悪いものに見えてくる。
ガシャガシャと鎖を鳴らし目の前の人間に近づこうとすればそれを阻むように檻の存在に気がつく。

「あんな野蛮な輩たちと一緒にしないでくれたまえ。わっちは貴族様とお取引をしておる!動くケタが違うのだよ!まぁいい。お前年はいくつだ?…………なんだその目は!」

人間を睨め付けるように見ていた俺に激怒する。
「どうやら立場を知らぬらしい。いいか、お前は奴隷、俺が主人だ。獣人なら獣らしく腹を見せわっちに服従の意を示せ!」

「誰がするかバーカ!!それよりお前は村を燃やしたやつなんだな!俺の両親はどうなった!みんなは!どこにいる!」

気づけば大声で叫んでいた。

「ええい!うるさい!お前の方に合わせ部屋を移動させてやろうとも思ったが我慢ならん!せいぜいその檻の中で反省してろ!」

最後に持っていたステッキって殴り、遠ざかっていく人間。痛みで蹲りながら静かに涙を流していた。

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