【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

朝日みらい

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 その後、国王陛下や王妃様にも挨拶を済ませた。

 二人とも優しく接してくれて、とても嬉しかったのだが……やはり緊張してしまい、うまく話せずじまいだった。

 それでも国王陛下から直々にお言葉をいただけたので、それだけでも満足していた。

 そして、いよいよ宮廷で開かれる盛大な夜会が催され、フィリップ殿下とのダンスの時間がやってきた。


 王太子殿下はダンスが上手かった。

 アシェリーは彼のリードに合わせて踊ることができた。とても楽しい時間だった。彼はアシェリーのことを気遣ってくれていて、無理をさせないでくれたし、優しくしてくれた。その一つ一つの行動や仕草に優しさが見え隠れしていた気がするのだ。

 もうそれだけで幸せな気分になれたのだが……問題はこの後である。

 これから夕食会だ。国王陛下や王妃様、そしてフィリップ殿下と一緒に食事をするのだ。緊張するなという方が無理である。

 しかし、緊張していたのはアシェリーだけではなかったようだ。

 国王陛下や王妃様も口数が少なく、どことなくぎこちなかったのである。

 それは無理もないことだろうと思う。

(まあ、わたしみたいな平凡な田舎娘に気を使ってくれているのよね)とアシェリーは思ったが……。

 そんなことを考えていたら夜会が終わり、国王陛下と王妃様や来賓は退席された。

 残ったのはフィリップ殿下とアシェリーだけだ。

 そして食事も終わり、食後のお茶を飲んでいるところだった。

「ほら、アシェリー。口をあけて」

と王太子殿下が言った。

 アシェリーは戸惑いながらも口を開いた。

 すると口の中に甘いものが入ってきたのだ。クッキーだ。思わず笑顔になってしまった。

 美味しい!

「いい顔をしてるね」

と王太子殿下が微笑んでいる。

 恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまったが、同時に嬉しくもあった。

 アシェリーは緊張しながらも、思い切って口を開いた。

「あの……ちょっとお暇をいただきたいのですが……」

 するとフィリップ王太子殿下は怪訝な表情を浮かべた。

 アシェリーは慌てて説明し始めた。

 宮殿の生活になかなかなじめずに緊張して落ち着かないことを話した。

(わたしはやっぱり、宮廷には向かないのよ…)

 アシェリーは心の中で思った。

(私なんか…いないほうがいいんだわ)

 しかし、フィリップ殿下の返事は予想外のものだった。

 彼は困ったような表情を浮かべるとため息をついたのだ。

「一か月後に隣国の国王夫妻が国賓として訪れる予定なんだ。君にはその時に隣に立ってもらう予定だったんだけど……」

(隣国の国王夫妻ですって!?)

 アシェリーは驚いた。

 (そんなの聞いてないわ!)
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