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第12章 王宮の罠
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陰謀を暴くために奔走するヴァルターを追い詰めるため、宰相派は宮廷に罠を仕掛けているらしい。
「またか……本当にしつこい連中ね」
劇場の控え室で、私はため息をつきながら葡萄酒をあおった。いや、こんなことしてる場合じゃないんだけど。けど、最近ずっと気を張り詰めてたから、ちょっとくらい飲まないとやってられないのよ!
「ったく、ヴァルターのやつ、ちゃんとご飯食べてるのかしら」
最近忙しくて、まともに会えていない。あの人、ただでさえ真面目すぎるのに、きっと寝る間も惜しんで宮廷で戦ってるんでしょ? 想像するだけで、ぎゅうっと胸が痛くなる。
そう、私はヴァルターが心配でたまらないのだ。
だから、情報を集めようと動いていたら――
宮廷から正式な召喚が来た。
「王妃陛下が、あなたを王の側室にしたいとお考えだそうです」
……は??
---
王宮の一室に呼び出された私は、目の前の王妃陛下を前に、ワケが分からないまま固まっていた。
「そ、側室って……」
「ふふ。あなたは民衆にも人気のある才女ですもの。王の正妃にはなれなくても、側室として宮廷に仕えれば、あなたの価値もさらに高まるでしょう?」
なんかすごくキラキラした笑顔で言われたけど、私にとっては悪夢以外の何ものでもない!!
「無理です!! 絶対にお断りします!!」
勢いよく叫んだら、王妃陛下は微笑みながらも、ピシッと冷たい視線を投げてきた。
「あなたに選択の余地はないわ。王宮に仕えなさい。そうすれば、あなたの才能も存分に生かせるでしょう?」
「えっと……それは……」
冷や汗が流れる。やばい、めちゃくちゃ強引じゃない!?
でも、ここでうっかり「はい」なんて言ったら、劇団ともヴァルターとも離れることになっちゃう!!
「劇団を……辞めるなんて、できません」
「では、王命を拒むというのね?」
王妃陛下の目が細くなる。あ、これ、完全に試されてるやつだ。
私、どうするべき……!?
---
その夜、ヴァルターに報告すると、彼はあからさまに不機嫌になった。
「……側室だと?」
低い声で呟かれ、私は一歩後ずさる。
「え、いや、もちろん断ったわよ!? だって、そんなの――」
「当然だ」
ドンッ!!
ヴァルターは、思い切りテーブルを叩いた。お、お怒りだ!?
「マリア、お前は何もわかっていない。王妃が動いたということは、お前を俺のそばに留めるつもりはないということだ。つまり――」
「つまり……?」
「遠ざける準備をしている」
ハッとする。
そうか……私は、ヴァルターの側にいることで、彼を守るつもりでいた。でも、それは逆に、彼を危険にさらしていたのかもしれない……。
ヴァルターは険しい顔のまま、私を見つめる。
「マリア、お前はもう俺のそばにいるべきじゃない」
「……え?」
「このままでは、お前が陰謀に巻き込まれる」
まさか……本気で言ってるの?
「……そんなのイヤよ!!」
私は思わず叫んでいた。
「だって、私……ヴァルターのことが好きなの!! 守りたいのよ!!」
ヴァルターの瞳が、一瞬揺れる。
けど、次の瞬間――
「俺も、お前を愛している」
グイッ!!
え、ちょ、ちょっと!?
ヴァルターは私の腰を抱き寄せ、唇を塞いだ。
「んっ……!?」
甘くて、熱くて、強引なキスだった。
……苦しい。
でも、それ以上に、離れたくなくなるようなキスだった。
彼は唇を離し、私の頬を撫でながら、静かに言う。
「だからこそ、もう、お前を危険な場所には置きたくないんだ」
ヴァルターの瞳には、深い愛情と、同じくらいの苦悩があった。
……ずるい。そんな顔、されたら。
「……わかったわ」
私はぎゅっと拳を握りしめた。
「でも、私も簡単には諦めないからね?」
ヴァルターは、苦笑しながら私の髪を撫でる。
「それでこそ、お前だ」
私たちは、お互いに愛し合っている。
だけど、このまま一緒にいては、ヴァルターの命が危険になる。
……どうすればいい?
「またか……本当にしつこい連中ね」
劇場の控え室で、私はため息をつきながら葡萄酒をあおった。いや、こんなことしてる場合じゃないんだけど。けど、最近ずっと気を張り詰めてたから、ちょっとくらい飲まないとやってられないのよ!
「ったく、ヴァルターのやつ、ちゃんとご飯食べてるのかしら」
最近忙しくて、まともに会えていない。あの人、ただでさえ真面目すぎるのに、きっと寝る間も惜しんで宮廷で戦ってるんでしょ? 想像するだけで、ぎゅうっと胸が痛くなる。
そう、私はヴァルターが心配でたまらないのだ。
だから、情報を集めようと動いていたら――
宮廷から正式な召喚が来た。
「王妃陛下が、あなたを王の側室にしたいとお考えだそうです」
……は??
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王宮の一室に呼び出された私は、目の前の王妃陛下を前に、ワケが分からないまま固まっていた。
「そ、側室って……」
「ふふ。あなたは民衆にも人気のある才女ですもの。王の正妃にはなれなくても、側室として宮廷に仕えれば、あなたの価値もさらに高まるでしょう?」
なんかすごくキラキラした笑顔で言われたけど、私にとっては悪夢以外の何ものでもない!!
「無理です!! 絶対にお断りします!!」
勢いよく叫んだら、王妃陛下は微笑みながらも、ピシッと冷たい視線を投げてきた。
「あなたに選択の余地はないわ。王宮に仕えなさい。そうすれば、あなたの才能も存分に生かせるでしょう?」
「えっと……それは……」
冷や汗が流れる。やばい、めちゃくちゃ強引じゃない!?
でも、ここでうっかり「はい」なんて言ったら、劇団ともヴァルターとも離れることになっちゃう!!
「劇団を……辞めるなんて、できません」
「では、王命を拒むというのね?」
王妃陛下の目が細くなる。あ、これ、完全に試されてるやつだ。
私、どうするべき……!?
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その夜、ヴァルターに報告すると、彼はあからさまに不機嫌になった。
「……側室だと?」
低い声で呟かれ、私は一歩後ずさる。
「え、いや、もちろん断ったわよ!? だって、そんなの――」
「当然だ」
ドンッ!!
ヴァルターは、思い切りテーブルを叩いた。お、お怒りだ!?
「マリア、お前は何もわかっていない。王妃が動いたということは、お前を俺のそばに留めるつもりはないということだ。つまり――」
「つまり……?」
「遠ざける準備をしている」
ハッとする。
そうか……私は、ヴァルターの側にいることで、彼を守るつもりでいた。でも、それは逆に、彼を危険にさらしていたのかもしれない……。
ヴァルターは険しい顔のまま、私を見つめる。
「マリア、お前はもう俺のそばにいるべきじゃない」
「……え?」
「このままでは、お前が陰謀に巻き込まれる」
まさか……本気で言ってるの?
「……そんなのイヤよ!!」
私は思わず叫んでいた。
「だって、私……ヴァルターのことが好きなの!! 守りたいのよ!!」
ヴァルターの瞳が、一瞬揺れる。
けど、次の瞬間――
「俺も、お前を愛している」
グイッ!!
え、ちょ、ちょっと!?
ヴァルターは私の腰を抱き寄せ、唇を塞いだ。
「んっ……!?」
甘くて、熱くて、強引なキスだった。
……苦しい。
でも、それ以上に、離れたくなくなるようなキスだった。
彼は唇を離し、私の頬を撫でながら、静かに言う。
「だからこそ、もう、お前を危険な場所には置きたくないんだ」
ヴァルターの瞳には、深い愛情と、同じくらいの苦悩があった。
……ずるい。そんな顔、されたら。
「……わかったわ」
私はぎゅっと拳を握りしめた。
「でも、私も簡単には諦めないからね?」
ヴァルターは、苦笑しながら私の髪を撫でる。
「それでこそ、お前だ」
私たちは、お互いに愛し合っている。
だけど、このまま一緒にいては、ヴァルターの命が危険になる。
……どうすればいい?
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