【完結】薔薇の仮面 ~演劇大好き少女は公爵様に溺愛されて~

朝日みらい

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第11章 命を狙う影

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ヴァルターが王族だって知ってから、私は密かに彼を守るために動き始めた。  

だって、彼は宮廷の陰謀と戦ってるんでしょ? だったら、私も何か役に立ちたいじゃない。愛しのヴァルター様がピンチなのに、ただ見てるだけなんてできるわけない!  

というわけで、私は劇団の情報網を駆使し、王宮の裏事情を探り始めた。  

「へぇ~、最近宰相派の貴族たちが何やら怪しい動きをしてるって?あら
、不正に税金をたくさん徴収して、その金を隣国に横流し?それに気付いた先の王妃が殺されて、はては、隣国とつるんで反乱ですか?」 

酒場の奥で情報屋のおじさんから話を聞きながら、私はワインを飲む。酔ったフリをしつつ、情報を仕入れるのがコツなのだ。  

「お嬢ちゃんも物好きだねぇ。でも、余計なことに首を突っ込むと命がいくつあっても足りないぜ?」

「ふふん、大丈夫よ。私、ただの劇団員だから」

と、とぼけてみたけど……正直、心臓バクバクである。  

まぁでも、ヴァルターを助けるためだし! 私だって演技派女優の端くれ! 情報くらい集めてみせるわよ!  

……なんて調子に乗ってたら、やっぱりバレた。  

宰相派の連中に。  

---

その夜。  

私が劇場の裏道を歩いていると、背後から何者かの気配がした。  

「……?」

振り向いた瞬間、黒ずくめの男たちが現れる。  

「お嬢さん、ちょっとお話ししようか」

「え、今度の公演のオーディションの話?」

「……いや、違うな」

いや知ってるわよ!! 絶対違うでしょ!!  

これは……やばいやつだ!!  

「ごめんなさい、今忙しいの! じゃ!!」

私は全力で逃げ出した。  

だが、さすがにプロの刺客たちは違う。足が速い!! こっちはスカートだぞ!? もうちょっとこう、加減してくれてもいいじゃない!?  

路地裏に追い詰められ、私は覚悟を決めた。  

「……いいわよ。やるならやりなさい。でも、私はしぶといわよ?」 

自分でもかっこいいセリフを言ったつもりだった。  

でも、男たちが私に手を伸ばしたその時――。  

「そこまでだ」

背後から響く、低くてよく通る声。  

「……え?」

次の瞬間、黒いマントが翻り、ヴァルターが現れた。  

彼は鋭い視線を刺客たちに向ける。  

「お前たち……俺の女に手を出すとは、いい度胸だな」

「お、俺の女!?」

ちょ、今それ言う!? めちゃくちゃキザなんだけど!!!  

でも――。  

男たちは一瞬でヴァルターの強さを悟ったようだった。  

「ちっ、撤退するぞ!」  

刺客たちはすぐに逃げ出し、ヴァルターは静かに私の方を振り向いた。  

「お前……無茶をするなと言っただろう」

彼の声は静かだったけど、その目は怒っていた。  

「……でも、あなたを守りたかったの」

正直に言った。ヴァルターは驚いた顔をした後、ふっとため息をついた。  

「お前ってやつは……」

そして、私は気づいたら彼の腕の中にいた。  

「え……!?」

ヴァルターは私を強く抱きしめる。  

「無事でよかった」

その言葉が、すごく優しくて――。  

私は、彼の背中にそっと手を回した。  

「ヴァルター……」

---

でも、その後。  

ヴァルターは急にそっけなくなった。  

「マリア、これ以上危険なことはするな」

「え、でも――」

「俺に関わるな」

突き放すような言葉に、胸がギュッとなった。  

「なんでよ!? 私たち、こんなに――」

「だからこそだ」

ヴァルターは少し顔を伏せて、静かに言った。  

「お前を巻き込みたくない」  

……バカ。  

そう言ってしまうあなたこそ、私の中でどんどん大きくなっていくのに。  

でも、そんなことで諦める私じゃない。  

「……ふぅん?」

私はニヤリと笑って、ヴァルターの顔をじっと見つめた。  

「じゃあ、私があなたを巻き込んでやるわ」

ヴァルターの目が驚きに揺れる。  

「……お前って、本当に……」

そして、彼は、私の髪にそっと手を添え――。  

その夜、私たちはますます強く、互いを求め合うようになった。  

でも、同時に宮廷の陰謀も、確実に私たちを追い詰め始めていたのだった――。 
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