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第10章 秘密の告白
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連日、劇は大成功だった。
私の全力の演技に観客は魅了され、セレーナの嫌がらせも結果的には私のアドリブ力を引き出すスパイスにしかならなかった。幕が降りた瞬間、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
そして――。
「かんぱーーーい!!!」
千秋楽が無事に終わり、劇団の仲間たちは、お祝いの大宴会を開いた。 セレーナは来なかったけれど。
酒場を貸し切り、役者もスタッフもみんな浮かれまくっている。テーブルの上には豪華な料理が並び、ワインが次々と注がれていく。
「マリア!! 今日のお前、最高だったぞ!!!」
「あのセレーナの顔見た!? まるでレモンを丸かじりしたみたいな表情してたわ!!」
仲間たちは口々に褒めちぎってくれる。
「えへへ……ありがと!」
私もすっかり気を良くしてワインを口にする。はぁ~、この勝利の美酒!! 最高すぎる!!
でも――。
ふと、酒場の片隅に目を向けると、ヴァルターが静かにワインを飲んでいた。
…なんか、浮かない顔してる?
---
私はこっそり彼の隣に滑り込んだ。
「ねぇねぇ、ヴァルター。せっかくの宴会なのに、なんでしんみりしてるの?」
彼は軽く眉を上げると、私のグラスをトン、と自分のグラスに合わせた。
「……いや、お前を見ていた」
「え?」
「舞台の上のお前は、本当に輝いていた。まるで光みたいだった」
ま、またそれ!!
「ちょっと!! そんな真顔で甘いこと言うのやめてよ!! 心臓に悪い!!」
顔を赤くしながら抗議すると、彼は珍しくクスッと笑った。
「お前のそういう反応、面白い」
「くぅぅ……!!」
でも、誤魔化されないわよ!
私は真剣な顔を作り直し、彼をじっと見つめた。
「ヴァルター、本当は何か考え込んでるんでしょ?」
彼の肩がピクリと動く。
「さっきから、どこか遠くを見てる顔してた」
私はじっと彼の瞳を覗き込んだ。
すると、ヴァルターはふっと視線を落とし、静かにため息をついた。
「……お前には、いずれ話さなければならないと思っていた」
彼はグラスを置き、ゆっくりと口を開く。
---
「俺は、王族だ」
「…………へ?」
頭が真っ白になった。
酒のせいかと思って、もう一度聞き返す。
「い、いま、なんて?」
「俺は、この国の王族なんだ」
……うん、聞き間違いじゃない。
いやいやいやいや、そんな急に何を言い出すの!?!?!?
「え、王族って、王様の親戚のことよね!? え、どのくらい近いの!? もしかして王子様!?」
ヴァルターは静かに頷いた。
「俺は亡くなった、先の王妃の息子だが、訳あって公爵家に拾われた。だが、亡くなったのは病でなく、毒殺だ」
「ぎゃあああ!!??」
思わず頭を抱えた。
ちょっと待って、じゃあヴァルターって、普通に考えて『超重要人物』じゃない!?
それが、なんで劇団の仮面劇役者なんてやってるのよ!?!?!?
「え、まって、つまり王宮の陰謀とか、そういうやつ!?」
ヴァルターは頷いた。
「俺は、宮廷の闇と戦っている。だから身分を隠し、公爵家の嫡男として、道楽者として劇団の一員として王宮に出入りしているんだ」
……
……
なんかすごい話になってきた。
---
しばらく頭を抱えていたけど、ヴァルターの横顔を見たら、なんだか胸がぎゅっとなった。
彼はいつも冷静で、飄々としているように見える。
でも、今の彼は違った。
どこか苦しそうで、孤独そうで、でもそれを表に出すこともなく――。
「ヴァルター……大変だったんだね」
私がそっと彼の手に触れると、彼は驚いたように目を見開いた。
「……お前、怖くないのか?」
「そりゃあビックリしたけど……でも、それ以上に、あなたが今までずっと戦ってきたことのほうが、気になる」
ヴァルターは少し黙ったあと、ふっと小さく笑った。
「お前は、本当に変わってるな」
「むしろ、あなたのほうが変わってるわよ!」
私はぎゅっと彼の手を握り直す。
「私は、あなたの味方よ」
ヴァルターの表情がわずかに緩んだ。
そして――
「……ありがとう」
彼は、私の手をそっと引き寄せた。
「お前がいてくれて、本当に良かった」
……もう!! そんなこと言われたら、もっと惚れちゃうじゃない!!!
---
でも、私たちがそうやって静かに語り合っている間にも――
王宮の陰謀は、確実に深まっていたのだった。
私の全力の演技に観客は魅了され、セレーナの嫌がらせも結果的には私のアドリブ力を引き出すスパイスにしかならなかった。幕が降りた瞬間、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
そして――。
「かんぱーーーい!!!」
千秋楽が無事に終わり、劇団の仲間たちは、お祝いの大宴会を開いた。 セレーナは来なかったけれど。
酒場を貸し切り、役者もスタッフもみんな浮かれまくっている。テーブルの上には豪華な料理が並び、ワインが次々と注がれていく。
「マリア!! 今日のお前、最高だったぞ!!!」
「あのセレーナの顔見た!? まるでレモンを丸かじりしたみたいな表情してたわ!!」
仲間たちは口々に褒めちぎってくれる。
「えへへ……ありがと!」
私もすっかり気を良くしてワインを口にする。はぁ~、この勝利の美酒!! 最高すぎる!!
でも――。
ふと、酒場の片隅に目を向けると、ヴァルターが静かにワインを飲んでいた。
…なんか、浮かない顔してる?
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私はこっそり彼の隣に滑り込んだ。
「ねぇねぇ、ヴァルター。せっかくの宴会なのに、なんでしんみりしてるの?」
彼は軽く眉を上げると、私のグラスをトン、と自分のグラスに合わせた。
「……いや、お前を見ていた」
「え?」
「舞台の上のお前は、本当に輝いていた。まるで光みたいだった」
ま、またそれ!!
「ちょっと!! そんな真顔で甘いこと言うのやめてよ!! 心臓に悪い!!」
顔を赤くしながら抗議すると、彼は珍しくクスッと笑った。
「お前のそういう反応、面白い」
「くぅぅ……!!」
でも、誤魔化されないわよ!
私は真剣な顔を作り直し、彼をじっと見つめた。
「ヴァルター、本当は何か考え込んでるんでしょ?」
彼の肩がピクリと動く。
「さっきから、どこか遠くを見てる顔してた」
私はじっと彼の瞳を覗き込んだ。
すると、ヴァルターはふっと視線を落とし、静かにため息をついた。
「……お前には、いずれ話さなければならないと思っていた」
彼はグラスを置き、ゆっくりと口を開く。
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「俺は、王族だ」
「…………へ?」
頭が真っ白になった。
酒のせいかと思って、もう一度聞き返す。
「い、いま、なんて?」
「俺は、この国の王族なんだ」
……うん、聞き間違いじゃない。
いやいやいやいや、そんな急に何を言い出すの!?!?!?
「え、王族って、王様の親戚のことよね!? え、どのくらい近いの!? もしかして王子様!?」
ヴァルターは静かに頷いた。
「俺は亡くなった、先の王妃の息子だが、訳あって公爵家に拾われた。だが、亡くなったのは病でなく、毒殺だ」
「ぎゃあああ!!??」
思わず頭を抱えた。
ちょっと待って、じゃあヴァルターって、普通に考えて『超重要人物』じゃない!?
それが、なんで劇団の仮面劇役者なんてやってるのよ!?!?!?
「え、まって、つまり王宮の陰謀とか、そういうやつ!?」
ヴァルターは頷いた。
「俺は、宮廷の闇と戦っている。だから身分を隠し、公爵家の嫡男として、道楽者として劇団の一員として王宮に出入りしているんだ」
……
……
なんかすごい話になってきた。
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しばらく頭を抱えていたけど、ヴァルターの横顔を見たら、なんだか胸がぎゅっとなった。
彼はいつも冷静で、飄々としているように見える。
でも、今の彼は違った。
どこか苦しそうで、孤独そうで、でもそれを表に出すこともなく――。
「ヴァルター……大変だったんだね」
私がそっと彼の手に触れると、彼は驚いたように目を見開いた。
「……お前、怖くないのか?」
「そりゃあビックリしたけど……でも、それ以上に、あなたが今までずっと戦ってきたことのほうが、気になる」
ヴァルターは少し黙ったあと、ふっと小さく笑った。
「お前は、本当に変わってるな」
「むしろ、あなたのほうが変わってるわよ!」
私はぎゅっと彼の手を握り直す。
「私は、あなたの味方よ」
ヴァルターの表情がわずかに緩んだ。
そして――
「……ありがとう」
彼は、私の手をそっと引き寄せた。
「お前がいてくれて、本当に良かった」
……もう!! そんなこと言われたら、もっと惚れちゃうじゃない!!!
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でも、私たちがそうやって静かに語り合っている間にも――
王宮の陰謀は、確実に深まっていたのだった。
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