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第一章
第4話
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貧しい者を食い物にして金を貸して、おのれの利益ばかりしか興味ない商人貴族ギルド。
クララは、そんな身分にはうんざりしていた。だから、神の名の下に、禁欲に生きる神官に憧れていた。
「おっしゃる意味が分かりますよ。私の家は貧しく、毎日を食べるだけで精一杯でした。
そんな中でわたしは病気になりました。お金がなく、医者を呼ぶこともや薬も買えません。
でも、金貸しはお構いなしに借金を取り立ててきましたよ」
クレイは、三階の奥にある客室に、クララを招き入れた。
飾り気のない、ひとり用の質素な部屋だった。
バルコニーがあり、窓側に机と、据え付けの収納棚とベッドが、机には水差しとコップがあった。
「おトイレは廊下の突き当たりです。一階には共同の浴場と、食堂があります。
お疲れでしょうから、まずはお風呂に入られてから、お食事ということでよろしいですか」
「は、はい」
「では、後のことは住み込みの手伝いの者たちが取り計らいます。明日でしたら、テレス様ともお会いできるでしょう」
クレイが背を向けた時、クララは重要なことを思い出して、あわてて声を掛けた。
「あの、わたしの従者はどうしているでしょうか」
「あの方なら、従者用の宿舎に泊まっていただきます。馬小屋の隣にあります。四人部屋ですが。何か問題でも?」
「ああ、その、あの」
クララはしどろもどろになって、額に手をやった。
あの従者は、馬車の運転もできないばかりか、気位が高い。
何しろ酒ぐせが悪く、夜な夜な宿場近くの酒場に出かけては、客たちとトラブルを引き起こしてくる。
追跡魔法をしみこませた靴で、何とか彼の足跡は辿れる。
だが、そのせいで何度、無駄な戦闘魔法をしてきたことだろう。
久しぶりの夜の町で、ぜったい、あの男ははめをはずすに決まっている。
クララは無理やり、引き攣った笑みを浮かべた。
「クレイさん。お食事ですが、わたし、町の近くのお店で夕食を取りますわ。外食が好きなんです」
クレイは首を彼女に向けた。
「そうなんですね。ただ、こんな夜遅くになると、食事ができるのはせいぜい、飲み屋ぐらいでしょうが」
「飲み屋……ですか」
クララは、そんな身分にはうんざりしていた。だから、神の名の下に、禁欲に生きる神官に憧れていた。
「おっしゃる意味が分かりますよ。私の家は貧しく、毎日を食べるだけで精一杯でした。
そんな中でわたしは病気になりました。お金がなく、医者を呼ぶこともや薬も買えません。
でも、金貸しはお構いなしに借金を取り立ててきましたよ」
クレイは、三階の奥にある客室に、クララを招き入れた。
飾り気のない、ひとり用の質素な部屋だった。
バルコニーがあり、窓側に机と、据え付けの収納棚とベッドが、机には水差しとコップがあった。
「おトイレは廊下の突き当たりです。一階には共同の浴場と、食堂があります。
お疲れでしょうから、まずはお風呂に入られてから、お食事ということでよろしいですか」
「は、はい」
「では、後のことは住み込みの手伝いの者たちが取り計らいます。明日でしたら、テレス様ともお会いできるでしょう」
クレイが背を向けた時、クララは重要なことを思い出して、あわてて声を掛けた。
「あの、わたしの従者はどうしているでしょうか」
「あの方なら、従者用の宿舎に泊まっていただきます。馬小屋の隣にあります。四人部屋ですが。何か問題でも?」
「ああ、その、あの」
クララはしどろもどろになって、額に手をやった。
あの従者は、馬車の運転もできないばかりか、気位が高い。
何しろ酒ぐせが悪く、夜な夜な宿場近くの酒場に出かけては、客たちとトラブルを引き起こしてくる。
追跡魔法をしみこませた靴で、何とか彼の足跡は辿れる。
だが、そのせいで何度、無駄な戦闘魔法をしてきたことだろう。
久しぶりの夜の町で、ぜったい、あの男ははめをはずすに決まっている。
クララは無理やり、引き攣った笑みを浮かべた。
「クレイさん。お食事ですが、わたし、町の近くのお店で夕食を取りますわ。外食が好きなんです」
クレイは首を彼女に向けた。
「そうなんですね。ただ、こんな夜遅くになると、食事ができるのはせいぜい、飲み屋ぐらいでしょうが」
「飲み屋……ですか」
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