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第五章
第34話
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クララに手を引かれ、セリストは宝石箱のような、きらめく馬車に乗せられた。
二匹の白馬が使用人に手綱を引かれて、ゆっくりとした足取りで走り出す。
柔らかい羊毛の座席に向かい合わせになって、セリストは、気まずそうにクララを見つめた。
クララは、薄らと唇に薄紅をさして、幾重にも髪を結い上げて、赤いリボンをあしらっている。ふわふわに膨らんだスカートに、シルクのなめらな生地のドレスに細かい小鳥の刺繍が施されている。
「お腹空いたでしょう。これから、ベニース湖畔でピクニックでもしましょう。ほら、食べ物なら、たくさん持ってきたの」
クララは、隣の座席のバスケットに手を置いて、ポンポンたたいてみせた。
「クララ様、でも今日は前回とはまた見違えるように変身なさって」
「そうかしら。わたし、セリスト様とお会いして、じぶんの愚かさに気づいたんです」
セリストは、眉を寄せた。
「愚かさとは?」
クララは、小窓を開けて、ゆっくりと過ぎていく大聖堂を眺めながら、言った。
「わたしは何も分かっていなかったんだって。わたしの身体には、貴族の習慣が染みついてた。それなのに、意固地になって、家族にかみついたりして。愚かだわ」
「そうでしたか」
セリストは、目を伏せた。
「それで、わたしの誕生日に、屋敷を出て神官庁舎に住むことにしたの」
二匹の白馬が使用人に手綱を引かれて、ゆっくりとした足取りで走り出す。
柔らかい羊毛の座席に向かい合わせになって、セリストは、気まずそうにクララを見つめた。
クララは、薄らと唇に薄紅をさして、幾重にも髪を結い上げて、赤いリボンをあしらっている。ふわふわに膨らんだスカートに、シルクのなめらな生地のドレスに細かい小鳥の刺繍が施されている。
「お腹空いたでしょう。これから、ベニース湖畔でピクニックでもしましょう。ほら、食べ物なら、たくさん持ってきたの」
クララは、隣の座席のバスケットに手を置いて、ポンポンたたいてみせた。
「クララ様、でも今日は前回とはまた見違えるように変身なさって」
「そうかしら。わたし、セリスト様とお会いして、じぶんの愚かさに気づいたんです」
セリストは、眉を寄せた。
「愚かさとは?」
クララは、小窓を開けて、ゆっくりと過ぎていく大聖堂を眺めながら、言った。
「わたしは何も分かっていなかったんだって。わたしの身体には、貴族の習慣が染みついてた。それなのに、意固地になって、家族にかみついたりして。愚かだわ」
「そうでしたか」
セリストは、目を伏せた。
「それで、わたしの誕生日に、屋敷を出て神官庁舎に住むことにしたの」
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