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第七章

第54話

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 三人はランプを提げて、城門を抜けて、城のまわりを一周した後で、森の中に足を踏み入れた。

 空気はじっとりとした湿気があり、地面はぬかるみ、風で枝の梢や葉のカサカサという音がやけに不気味さを感じさせた。
 枝にとまった野鳥の眼がギラギラと黄色に発光して、来訪者を監視している。

 そんな静まりかえった森の中で、セリスだけは、脳天気に口笛を吹いていた。そして、
「肝試しって知っていますか?」
と、きいた。

 二人は顔を見合わせると、セリスは続けた。

「俺が育った村では、夏の夜になると、森の中で、ロウソクの火を灯して歩くんですよ。お化け役は、森の中で待ちかまえて、脅かして遊ぶんです。そんなことを、思い出しちまって」

 秘書官クレイは、急に立ち止まった。

「では、セリスさん。本当の肝試しってものを、これからやってみますか」

「えっ?」
 ふたりは、立ち止まって、振りかえった。

 クレイは、不吉な笑みを浮かべると、
「子どもたち、今だアアアアウウウオオ!」
と、叫んだ。

 その声は、次第に人間の声質ではなく、獣の鳴き声に変わっていく。

 周りをから、赤いギラギラとした目が無数に見えた。
 林から、無数のヒドラ獣が姿を現して、たちまちふたりを取り囲んだ。

 ふたりはランプを地面におき、背中合わせになった。

「周りに10体。俺は攻撃。ロリーネ?」

「私は、目くらまし。それからセリスト様の援護」

 セリスは、ホルダーから剣をひき抜き、調薬師ロリーネは、腰ベルトの布袋から、白色の玉を取り出して、地面に投げ下ろした。

 白煙が舞い上がる中、セリスは弧を描きながら駆け出し、周囲のヒドラ獣の腹に一線に描いて切り裂いていく。

 獣たちがひるんだ隙に、ロリーネは今度は赤玉を取り出して、ヒドラ獣の傷口めがけて投げつけた。

 赤玉が命中する毎に、ヒドラ獣の肉体は火炎と血しぶきを上げながら、次々に大破した。
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