手向け花を捧ぐーREー

第４０話

「お兄ちゃんのなかに・・・いるん、でしょ・・・？」

　






ーその日の夜、シャムアの家の前を通った市民達が居てそこにはデットとロネの父親がそれぞれ血を流して倒れているのを目撃した。懐中電灯の明かりでそれらを照らしあげる。



「え・・・し、死んでる・・・？」

「こっちの男は完全に亡くなっているが・・・」

「こっちの男の子も死んでるの・・・？」

「で、でも脈がかすかに・・・」

「は、はやく、救急車か騎士学校に連絡を・・・」





デット「ん・・・」



市民らは連絡しようかと携帯を取り出したところ、デットは目を開いた。


「め、目覚めた・・・！」
「う、嘘・・・」
「き、奇跡だ・・・」
「き、キミ・・・だ、大丈夫？？」

デット「・・・あれ、僕は・・・」

「この男と揉めた、のか？この男はキミの知り合い？」

そこに倒れている男を見て、デットは思い出した。
そして体を動かそうとしたらふと撃たれた箇所が痛み出す。






僕・・・生き、てる・・・？なぜ・・・・





そうだ・・・ロネ、ロネは・・・！？





デットは起き上がって、ゆっくりと立ち上がるとどこかへと歩き出す。


「ちょ、ちょっとキミ！？そんな怪我でどこに・・・！？」

「今救急車呼ぶから待ってて・・・！」
1人の女性が救急車を呼ぼうと携帯を操作していた時だった。


黒いナニカがデットの中から現れ大きな口を開けパクリ、とその女の頭にかぶりついた。
女は携帯を地面に落とす。



「ひぃ・・・！！」


懐中電灯を当ててそれを見てしまった市民。
黒いナニカはむしゃむしゃと女を全部平らげた。


「く、食われた！？な、なんだ、こいつは・・・！」

「ば、化け物・・・！？」

「い、いやもしかしたら創造神様により産み出された神か・・・！？」

「神は私たちの味方なんじゃないの・・・！？なんで・・・！」


デット「腹ペコダァ・・・」


その場にいた市民達と、ロネの父親も含め黒いナニカによって全員食べ尽くされたのだった..,。







ーーー


パリーン！


喉が乾いたと言って席を立ったロネはキッチンの水道水から水を汲んで口に運ぼうとした瞬間。
ふと気持ち悪さが込み上げてを床に落とし、コップは割れてしまう。

ロネ「ううっ・・・！」

ロネはその場にうずくまる。

「ロネ・・・？大丈夫！？」


痛い・・・気持ち悪い・・・っなに・・・これ・・・っ



母はロネに駆け寄り、手を伸ばしかけようとした時だ。
その手が怖かったのかロネは母親の手をはじいた。
それにはロネ自身も驚く。

ロネ「ぁ・・・」

「ロネ・・・」

ロネ「ちが・・・お母さん・・・ごめ・・・なさ・・・
わた・・し・・・わたし・・・」

「・・・わかってるわ。今まで怖い思い、してきたんだもんね・・・。
怖かったのよね、きっと・・・思い出させちゃったね・・・ごめんなさい・・・」




と、そんな時だった。
インターホンが鳴ったのは。



「少し出てくるわね。ロネはしばらく横になっていたほうがいいわ」


ロネは玄関に向かう母親の背中を見送る。そして玄関先から母親の声が聞こえる。


「え・・・デット・・・！？」

ロネ「っ！」

"デット"と言う言葉に反応したロネは痛む腹を押さえつつも玄関に向かう。






「あなた・・・無事・・・だったの？」

デット「・・・うん・・・ごめんなさい・・お母さん。僕・・・お父さんを・・・」

デットの言葉の途中で母はデットが帰ってきてくれたことが嬉しくて優しく抱きしめた。



「わかってる・・・でも・・・
あなたは悪くない。お父さんが少しおかしかっただけだもの・・・」

デット「・・・お父さん、だけじゃないよ・・・シャムアも・・・」

「シャムア・・・？」

デット「・・シャムアも・・・殺されて・・・僕とシャムアでロネを迎えに行ったとき・・・人身売買してた奴に・・・撃たれて・・・っ」

「・・・！」



シャムアは親戚の子で・・・デットとロネにとっては姉貴同然で・・・小さい頃からいつも二人を面倒見て可愛がってくれた・・・・。デットは本当はうちの子供ではないけれど・・・ロネが産まれてくる前に雨の中1人ぼっちでいた幼いデットを拾った。



行く場所がないからって、デットは言っていた・・・。
それなら家に来ない？って誘ってみたんだ。子供は大人無しじゃ1人で生きていくのも難しそうだったから・・・。



その後ロネも無事に産まれ、デットが全力でお世話してくれて凄く助かったし・・・。



シャムアだって・・・。















「・・・いつか・・・シャムアのご遺族に・・・挨拶、行きましょうか」

デット「・・・うん・・・」

「・・・おかえり、デット」

デット「・・っ・・・ただ、いま・・・」


そして、そんな二人にロネは近づき母の背後からデットを見る。デットはロネに気づくと、


デット「！ロネ・・・」

ロネ「お兄ちゃん・・・」


ロネはお腹を押さえつつもデットに近付くなりその手を引いて外へと出て家の扉を閉める。
そしてデットへと向き直った。




ロネ「お兄ちゃんのなかに・・・いるん、でしょ・・・？神様・・・」


ロネがそう言うとデットは口角を釣り上げ、
本物のデットとは左右が異なったデットがそこに居た・・・。