手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

文字の大きさ
55 / 102
第55話

「何回だって家に逃げてきてもいいのよ」

しおりを挟む

リチアは制服姿のままバスに乗って自分の家を目指した。

日が暮れるそんな時間帯に家に帰ってくるも、
なかなか入ることができずにいたがせっかくここまで来たのだから入らないわけにもいかなくてリチアは意を決して家の扉を開けた。




ガチャ...




「え。リチア??」

リチア「あ、た、ただいま」

「こんなに早く帰ってくるなんて思わなかったものだからご飯なんも用意してないわよ!?
お父さんは今日飲み会でご飯はいらないそうだし。私はもう食べてしまったし・・・まだ今から待てる?すぐご飯の用意するからね」
そう言ってキッチンへ走ろうとする母に、リチアはその背中に抱きついた。



リチア「ご飯は・・・いらないです。落ち着く、暖かい飲み物が、いいです・・・」

「・・いらない?大丈夫??」

リチア「・・・うん・・・」



お母さんの背・・・あったかい・・・。


リチアは今日の任務でのことを思い出す。自分を守って刺されたランのことであったり、たくさんの人を・・亡くした
り・・・









リチアはリビングでソファーに腰かけ、母はリチアの前のテーブルにホットココアを置くとリチアの隣に腰掛ける。


リチアは机に置かれたコップを持って、ホットココアを一口飲んでいたら、チャロもリチアが帰ってきて嬉しいのか、リチアの膝の上にやって来る。
リチアはそんなチャロを撫であげれば喉を鳴らしていた。

チャロ「にゃー」

リチアはコップをテーブルに置いてチャロを見る。

リチア「・・・あの時、貴方だけでも無事で、ほんとに良かった」



私がまだ小学生の頃、
バスに轢かれそうになっていたチャロをなんとか助けることはできたけどその後は私が轢かれ、そこで本来なら私の命は終わってるはず、だったんだけど・・・。


チャロはリチアの膝の上で丸くなり、それをただ見つめて撫でていれば母が口を開く。


「それで、突然今日帰ってくるなんて・・・任務でなんかあった??」

リチア「え」

「さっき、ニュースで流れてたわ。凱旋門近くで女の子が無差別に人を殺してそこで何人もの命が失われたって」

リチア「・・・」

「騎士団も出動したんでしょ?」

リチア「・・・はい」

リチアはチャロを撫でる手がかすかに震え、その手をとって優しく包み込んでくれる母。


「そう・・・。でも、リチアが帰ってきて嬉しかったよ。明日学校に戻るんでしょう??」

リチア「っはい・・・」

リチアは母に抱きつく。


リチア「お母様・・・私、頑張りますから・・・なにがあっても・・・。
辛くても、逃げない、から。・・・逃げるのは・・今日限りにします・・・・」

「リチア・・・」

リチア「今日の任務・・・もう、いろいろ、あって・・・辛いこと・・・忘れたくて・・・胸も、痛くて・・・」


リチアは今日の任務で子供を亡くした母が睨んでる顔が頭の中に鮮明にこびりついて、なかなか消えてくれなかった。


リチア「それで・・・家に帰ってきちゃったんですが、お母様の顔見て、安心しました・・・」

「何回だって家に逃げてきてもいいのよ。
辛いこと、悲しいことあったら、家に来たら思いきりさらけ出して、我慢しないで泣いたっていいんだから」



母のその言葉に、リチアは今実まで我慢していた涙が一気に溢れてきて、母の胸で思い切り泣いた。

母はただ黙ってそんなリチアを抱きしめ、チャロもリチアのことを心配そうに見上げていた。














リチアは部屋のベッドにて眠ると、母は1人リビングにて棚に置かれたオモチャを手に取る。
それはコチョウが母にそっくりだと言って買ってきたものだそうで。
そのオモチャを見る母。







そっか・・・リチアは騎士学校でちゃんと頑張ってるんだ。





・・・・・コチョウ・・・・。






母はコチョウがくれたオモチャを胸に抱きしめた・・・。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...