67 / 102
第67話
「私たちを置いていかないで・・・!!」
しおりを挟む
カトレアに案内され、リチアは今ランの部屋の前に立っている。息を整え、いざ入ろうとしたがなかなか入る勇気が出せないでいれば部屋の扉が開かれる。
ラン「おや、リチアさん?」
リチア「せっ、先輩!えと・・・あの・・・」
ラン「とりあえず、中へどうぞ」
リチア「あ、はい、お邪魔、します」
リチアはランの部屋に入るとランは扉を閉める。
ラン「それで、どうかしたのですか?わざわざこんな夜更けに来るだなんて」
リチア「せ、先輩と一緒にパンを食べようと思ったんです!ど、どうぞ!」
そう言ってパンの耳を差し出すリチア。
何故パンの耳なのかはあえてそこは突っ込まずにランはパンの耳を受け取るとそれを机に置く。
ラン「ありがとうございます。ベッドに腰掛けて話しましょうか」
二人はベッドへと腰を落とした。
リチアは緊張しているのか、ずっとだんまりだった。
ラン「なにか話があって来たのでは?」
リチア「え!え、と・・・
その・・・先輩て、本当に・・・私の・・・」
ラン「職人様の前でつい口を滑らせてしまいましたが、リチアさんが僕のたった一人の妹だということは本当のことです」
リチア「で、でも・・・そんな・・・だって、名前も違いますし・・・」
私の憧れの人が・・・私の、お兄様、だったなんて・・・。
ラン「リチアさんも僕も、花からとって付けられた名前なのですよ。
僕は父様からそう聞かされました。
リチアさんはストレリチア。僕は胡蝶蘭、てね」
・・・ストレリチア・・・。
ラン「・・・まぁコチョウという名はとうの昔に捨てましたが。
もちろん、ランなんて名は偽名。仲間からはランと呼ぶようにと伝えておきました」
リチア「・・・先輩は、じゃあ、知ってたんですか・・・?私のこと・・・ずっと・・・私のこと守ってくれてたのは・・・」
ラン「えぇ。知っていました。リチアさんが小学生の頃に攫われそうになっていた時、顔を見てすぐに僕の妹だって分かりました」
リチア「そんなに・・・前から・・・。
お母様、心配してました・・・探してました・・・。何故、家に帰ってあげないんですか・・・」
ラン「今帰っても僕に気づくことはないでしょう。母様が騎士学校に訪れた時だって、僕とは気付いてませんでしたし。
それに・・・僕に怯えている母様を、もう見たくありませんから・・・。
母様から僕の話聞いたのでしょう?」
リチア「え、あ、はい・・・」
ラン「聞いたのならわかると思いますが、僕は産まれてまもなく、一度命を落とすこととなったのです。多分、2ヶ月くらいだったかと。ですが・・・そんな僕を救ってくださった方がいるのです」
リチア「それって・・・?」
ラン「それがカトレア様です」
ー
当時まだ赤ん坊だったコチョウは産まれてから一度も泣くことはなかった。ところがある日の夜、父と母は眠ってるコチョウを見つめていた。
「・・・この子、産まれた時から全然泣かないし、笑わないし・・・声もあげないわよね・・・」
「あぁ・・・コチョウが笑ってる顔がみたいな・・・」
「ええ・・・そうね」
そして母がコチョウに手を伸ばして頬に手を添えると母は気づいてしまった。
「!!」
「どうした?」
「コチョウが・・・冷たいの!!」
「な・・・!」
父がコチョウの心臓に耳を当てる。
「心臓が・・・止まって、る・・・?」
「そんな・・・!す、すぐに救急車!救急車呼んで!」
「わ、わかった!」
その時、丁度外を歩いていたまだ幼い格好のカトレアがその家の前にコチョウの墓が出現したのを見る。
墓を見たあとで
カトレアは窓のカーテンの隙間から中を見た。
中から啜り泣く声が聞こえる。
「コチョウ・・・いや・・・逝かないで・・・!私たちを置いていかないで・・・!!」
カトレア「・・・」
父親が電話をかけようと受話器を取る。
そして電話かけようとボタンを押したところで、カトレアが玄関の扉を開けて中へと入っていく。
電話をする父親は気付いていない。
カトレアは父親の背後を通って母とコチョウがいるであろう部屋を目指す。
母はコチョウに抱きついて泣き喚いているとカトレアがゆっくり近付いてきてコチョウの小さな手に触れると瞳を瞑る。
すると突如その場は真っ白い空間が広がってそこにはコチョウとカトレア以外誰もいなかった。
カトレアはその場に寝ているコチョウへと近付く。
カトレア「そう・・・貴方は死んでしまったのね・・・まだほんの赤ん坊だというのに・・・」
と、そこでコチョウは目を開ける。ここがどこなのか把握する為にむくりと起き上がってカトレアを見ると首を傾げていた。
そんなコチョウにカトレアはコチョウのおでこへ人差し指を押し当てると言葉を紡いだ。
カトレア「わらわの言っている言葉、わかる?分かるのであればわらわの質問に答えよ。そなたはまだ生きたいか?それともこのままあの世へ行くかどちらがよい?
わらわの取引に応じれば、そなたをもう一度蘇らせてやることはできる」
赤ん坊であるランにその言葉を理解できているのかは分からないが、カトレアには分かっていた。
神の力を使えばたとえ赤ん坊であっても言葉を理解できるということは・・・。
コチョウはゆっくり、そして小さく口を開いた。
コチョウ「いき たい」
ラン「おや、リチアさん?」
リチア「せっ、先輩!えと・・・あの・・・」
ラン「とりあえず、中へどうぞ」
リチア「あ、はい、お邪魔、します」
リチアはランの部屋に入るとランは扉を閉める。
ラン「それで、どうかしたのですか?わざわざこんな夜更けに来るだなんて」
リチア「せ、先輩と一緒にパンを食べようと思ったんです!ど、どうぞ!」
そう言ってパンの耳を差し出すリチア。
何故パンの耳なのかはあえてそこは突っ込まずにランはパンの耳を受け取るとそれを机に置く。
ラン「ありがとうございます。ベッドに腰掛けて話しましょうか」
二人はベッドへと腰を落とした。
リチアは緊張しているのか、ずっとだんまりだった。
ラン「なにか話があって来たのでは?」
リチア「え!え、と・・・
その・・・先輩て、本当に・・・私の・・・」
ラン「職人様の前でつい口を滑らせてしまいましたが、リチアさんが僕のたった一人の妹だということは本当のことです」
リチア「で、でも・・・そんな・・・だって、名前も違いますし・・・」
私の憧れの人が・・・私の、お兄様、だったなんて・・・。
ラン「リチアさんも僕も、花からとって付けられた名前なのですよ。
僕は父様からそう聞かされました。
リチアさんはストレリチア。僕は胡蝶蘭、てね」
・・・ストレリチア・・・。
ラン「・・・まぁコチョウという名はとうの昔に捨てましたが。
もちろん、ランなんて名は偽名。仲間からはランと呼ぶようにと伝えておきました」
リチア「・・・先輩は、じゃあ、知ってたんですか・・・?私のこと・・・ずっと・・・私のこと守ってくれてたのは・・・」
ラン「えぇ。知っていました。リチアさんが小学生の頃に攫われそうになっていた時、顔を見てすぐに僕の妹だって分かりました」
リチア「そんなに・・・前から・・・。
お母様、心配してました・・・探してました・・・。何故、家に帰ってあげないんですか・・・」
ラン「今帰っても僕に気づくことはないでしょう。母様が騎士学校に訪れた時だって、僕とは気付いてませんでしたし。
それに・・・僕に怯えている母様を、もう見たくありませんから・・・。
母様から僕の話聞いたのでしょう?」
リチア「え、あ、はい・・・」
ラン「聞いたのならわかると思いますが、僕は産まれてまもなく、一度命を落とすこととなったのです。多分、2ヶ月くらいだったかと。ですが・・・そんな僕を救ってくださった方がいるのです」
リチア「それって・・・?」
ラン「それがカトレア様です」
ー
当時まだ赤ん坊だったコチョウは産まれてから一度も泣くことはなかった。ところがある日の夜、父と母は眠ってるコチョウを見つめていた。
「・・・この子、産まれた時から全然泣かないし、笑わないし・・・声もあげないわよね・・・」
「あぁ・・・コチョウが笑ってる顔がみたいな・・・」
「ええ・・・そうね」
そして母がコチョウに手を伸ばして頬に手を添えると母は気づいてしまった。
「!!」
「どうした?」
「コチョウが・・・冷たいの!!」
「な・・・!」
父がコチョウの心臓に耳を当てる。
「心臓が・・・止まって、る・・・?」
「そんな・・・!す、すぐに救急車!救急車呼んで!」
「わ、わかった!」
その時、丁度外を歩いていたまだ幼い格好のカトレアがその家の前にコチョウの墓が出現したのを見る。
墓を見たあとで
カトレアは窓のカーテンの隙間から中を見た。
中から啜り泣く声が聞こえる。
「コチョウ・・・いや・・・逝かないで・・・!私たちを置いていかないで・・・!!」
カトレア「・・・」
父親が電話をかけようと受話器を取る。
そして電話かけようとボタンを押したところで、カトレアが玄関の扉を開けて中へと入っていく。
電話をする父親は気付いていない。
カトレアは父親の背後を通って母とコチョウがいるであろう部屋を目指す。
母はコチョウに抱きついて泣き喚いているとカトレアがゆっくり近付いてきてコチョウの小さな手に触れると瞳を瞑る。
すると突如その場は真っ白い空間が広がってそこにはコチョウとカトレア以外誰もいなかった。
カトレアはその場に寝ているコチョウへと近付く。
カトレア「そう・・・貴方は死んでしまったのね・・・まだほんの赤ん坊だというのに・・・」
と、そこでコチョウは目を開ける。ここがどこなのか把握する為にむくりと起き上がってカトレアを見ると首を傾げていた。
そんなコチョウにカトレアはコチョウのおでこへ人差し指を押し当てると言葉を紡いだ。
カトレア「わらわの言っている言葉、わかる?分かるのであればわらわの質問に答えよ。そなたはまだ生きたいか?それともこのままあの世へ行くかどちらがよい?
わらわの取引に応じれば、そなたをもう一度蘇らせてやることはできる」
赤ん坊であるランにその言葉を理解できているのかは分からないが、カトレアには分かっていた。
神の力を使えばたとえ赤ん坊であっても言葉を理解できるということは・・・。
コチョウはゆっくり、そして小さく口を開いた。
コチョウ「いき たい」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる