手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

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第67話

「私たちを置いていかないで・・・!!」

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カトレアに案内され、リチアは今ランの部屋の前に立っている。息を整え、いざ入ろうとしたがなかなか入る勇気が出せないでいれば部屋の扉が開かれる。



ラン「おや、リチアさん?」

リチア「せっ、先輩!えと・・・あの・・・」

ラン「とりあえず、中へどうぞ」

リチア「あ、はい、お邪魔、します」

リチアはランの部屋に入るとランは扉を閉める。

ラン「それで、どうかしたのですか?わざわざこんな夜更けに来るだなんて」

リチア「せ、先輩と一緒にパンを食べようと思ったんです!ど、どうぞ!」

そう言ってパンの耳を差し出すリチア。
何故パンの耳なのかはあえてそこは突っ込まずにランはパンの耳を受け取るとそれを机に置く。

ラン「ありがとうございます。ベッドに腰掛けて話しましょうか」

二人はベッドへと腰を落とした。
リチアは緊張しているのか、ずっとだんまりだった。


ラン「なにか話があって来たのでは?」

リチア「え!え、と・・・
その・・・先輩て、本当に・・・私の・・・」

ラン「職人様の前でつい口を滑らせてしまいましたが、リチアさんが僕のたった一人の妹だということは本当のことです」

リチア「で、でも・・・そんな・・・だって、名前も違いますし・・・」

私の憧れの人が・・・私の、お兄様、だったなんて・・・。


ラン「リチアさんも僕も、花からとって付けられた名前なのですよ。
僕は父様からそう聞かされました。
リチアさんはストレリチア。僕は胡蝶蘭、てね」


・・・ストレリチア・・・。



ラン「・・・まぁコチョウという名はとうの昔に捨てましたが。
もちろん、ランなんて名は偽名。仲間からはランと呼ぶようにと伝えておきました」

リチア「・・・先輩は、じゃあ、知ってたんですか・・・?私のこと・・・ずっと・・・私のこと守ってくれてたのは・・・」

ラン「えぇ。知っていました。リチアさんが小学生の頃に攫われそうになっていた時、顔を見てすぐに僕の妹だって分かりました」

リチア「そんなに・・・前から・・・。
お母様、心配してました・・・探してました・・・。何故、家に帰ってあげないんですか・・・」

ラン「今帰っても僕に気づくことはないでしょう。母様が騎士学校に訪れた時だって、僕とは気付いてませんでしたし。
それに・・・僕に怯えている母様を、もう見たくありませんから・・・。
母様から僕の話聞いたのでしょう?」

リチア「え、あ、はい・・・」

ラン「聞いたのならわかると思いますが、僕は産まれてまもなく、一度命を落とすこととなったのです。多分、2ヶ月くらいだったかと。ですが・・・そんな僕を救ってくださった方がいるのです」

リチア「それって・・・?」

ラン「それがカトレア様です」






当時まだ赤ん坊だったコチョウは産まれてから一度も泣くことはなかった。ところがある日の夜、父と母は眠ってるコチョウを見つめていた。

「・・・この子、産まれた時から全然泣かないし、笑わないし・・・声もあげないわよね・・・」

「あぁ・・・コチョウが笑ってる顔がみたいな・・・」

「ええ・・・そうね」

そして母がコチョウに手を伸ばして頬に手を添えると母は気づいてしまった。

「!!」

「どうした?」

「コチョウが・・・冷たいの!!」

「な・・・!」
父がコチョウの心臓に耳を当てる。



「心臓が・・・止まって、る・・・?」

「そんな・・・!す、すぐに救急車!救急車呼んで!」

「わ、わかった!」





その時、丁度外を歩いていたまだ幼い格好のカトレアがその家の前にコチョウの墓が出現したのを見る。

墓を見たあとで
カトレアは窓のカーテンの隙間から中を見た。
中から啜り泣く声が聞こえる。


「コチョウ・・・いや・・・逝かないで・・・!私たちを置いていかないで・・・!!」

カトレア「・・・」



父親が電話をかけようと受話器を取る。
そして電話かけようとボタンを押したところで、カトレアが玄関の扉を開けて中へと入っていく。


電話をする父親は気付いていない。
カトレアは父親の背後を通って母とコチョウがいるであろう部屋を目指す。

母はコチョウに抱きついて泣き喚いているとカトレアがゆっくり近付いてきてコチョウの小さな手に触れると瞳を瞑る。
すると突如その場は真っ白い空間が広がってそこにはコチョウとカトレア以外誰もいなかった。


カトレアはその場に寝ているコチョウへと近付く。


カトレア「そう・・・貴方は死んでしまったのね・・・まだほんの赤ん坊だというのに・・・」

と、そこでコチョウは目を開ける。ここがどこなのか把握する為にむくりと起き上がってカトレアを見ると首を傾げていた。

そんなコチョウにカトレアはコチョウのおでこへ人差し指を押し当てると言葉を紡いだ。



カトレア「わらわの言っている言葉、わかる?分かるのであればわらわの質問に答えよ。そなたはまだ生きたいか?それともこのままあの世へ行くかどちらがよい?
わらわの取引に応じれば、そなたをもう一度蘇らせてやることはできる」


赤ん坊であるランにその言葉を理解できているのかは分からないが、カトレアには分かっていた。
神の力を使えばたとえ赤ん坊であっても言葉を理解できるということは・・・。 





コチョウはゆっくり、そして小さく口を開いた。









コチョウ「いき たい」








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