手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

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第68話

「ここだけの話、心肺が停止してるのですよ」

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コチョウ「当時の僕はほんの赤ん坊でした。なので言葉もうまく話せなかったし、言葉も理解できませんでした。
けれどカトレア様のお力で、言葉も話せるし、理解できるようになったのです」





ーーー



カトレア「そなたは病気か何かだったの?」

コチョウ「・・・びょーき、わか、らない。こきゅうするのが、いきぐるしくなって・・・」

カトレア「それじゃ乳幼児突然死症候群かしらね。
それで、そなたはまだ生きたいのね?」

コチョウ「まだ、いきたい。ママのおなか中、もう一人居て、ぼくの妹にあたるって、ママからそう言われてた・・・。
その妹のかお見るまで、死んじゃいけないって・・・」

カトレア「・・・・そう。貴方はそもそも死んではいけない人材かもしれないわね。
神様の勘がそう言っている」

コチョウ「かみ、さま、なの?」

カトレア「えぇ。生まれ変わったの。神様にね。
貴方が生きたいと言うのであれば、わらわと取引しよう。
貴方の心臓をわらわに頂戴?

心臓をくれれば貴方はもう一度生きることができるわ」

コチョウ「ほんとう・・・?ぼく、あげます。いきることができるのなら」

カトレア「・・・・交渉成立ね。
蘇ったらわらわの元へ来なさい。娘さんの顔を見た後でも構わないから、いつでも貴方がわらわの元に来るのを待っているわ。・・・コチョウラン」

コチョウ「コチョウ、ラン??それは、ぼくのなまえ・・・?」

カトレア「わらわが新しくつけた。もう一度人生を歩む者としてね。貴方にはコチョウランという花を捧げるわ。

それから、本当は貴方に力を分け与えなくちゃいけないのだけど貴方はまだ赤ん坊だから魔法の加減が上手くできないと思うの。そうなればきっと自分の身をも滅ぼしかねない。
だから、貴方がわらわのところに来た時にでも力を付与しようとおもうわ。いいわね?コチョウラン」



その言葉に、コチョウは頷いた。



カトレア「理解が早くて助かるわ。それじゃ、これよりそなたの心臓を貰い受けるわね」


そう言ってカトレアは神様の力を使いランに手を伸ばせばその手のひらから鎖がジャラララと出てきてその鎖はコチョウに真っ直ぐ飛んでいきます胸に突き刺さり中から心臓を引き抜くと、コチョウはその場に血を吹いて倒れる。




カトレアはコチョウの心臓を手にして、
倒れているコチョウを見て笑う。














ふふ。大丈夫。また現世で会いましょうね。




ーー




コチョウ「まぁそれで、カトレア様のおかげでこうして現世に蘇ってこれたわけですが蘇った時真っ先にに見えたのは母様の悲しんだ顔でしたね」













死んだと思っていたコチョウはうっすらと目を開けて、小さな手を母に伸ばす。

「コ・・・チョウ・・・?あぁ・・・っ、よかった!コチョウ・・・死んだかと思った・・・っ」


母はコチョウの手を握る。
コチョウは何も言葉を発さずに、母を真っ直ぐ見つめていた。



「貴方!コチョウが、コチョウが目を覚ましたの!!」

「なんだって!?救急車がすぐこっちに向かってくれるって!」

「・・・念のため、病院に連れて行きましょう」





この後カトレアが両親に気付かれることなく外に出るとコチョウランの墓が光り、やがてゆっくり消えて行った。










もう、母様と父様を、悲しませたくないとそう誓って・・・。

でも結局は、僕と言う存在が、母様を悲しませることとなった。






ーー

病院




「死んだはずが蘇ったと、言っていましたね。
うーん・・・これは一体どう言うことだ」

「せ、先生?コチョウはどうなのですか?」

「今再検査という形で診療室で診てもらっていますがここだけの話、心肺が停止してるのですよ。なぜ、それで生きているのかは不思議なのですが・・・」







え・・・・。









ーー



コチョウ「母様はきっと僕が怖かったのでしょうね。だから、あの日から母様は僕に笑いかけてはくれなくなった・・・
世話してくれたのは父様だけだった」

リチア「・・・っ」


コチョウはずっと見ていた。母がずっと落ち込んでいる姿を。







コチョウが3歳になったとき。
赤ん坊の時から喋らなかったコチョウは成長するたびに話すようになった。




コチョウ「ママ~これあげる。ママにそっくりだったから買ってもらった」

コチョウはオモチャを持ってキッチンにいる母に渡す。
だが、

「!」パシン!

母は思わずオモチャをはじこうとしたが、コチョウの頬を引っ叩いてしまった。
それには母自身驚いて、自分の手を見つめている。




「お、おいどうしたんだ!?」

母は我にかえると膝をつき、コチョウの頬に手を添えると、そっと強く抱きしめた。


「ごめん・・・ごめんね・・・コチョウ・・・ごめん・・・・」

コチョウ「ママ、ぼくのこときらい?」

「そっ、そんなことない、そんなこと・・・」

コチョウ「だいじょうぶ。ぼく、ママがだいすき。ママのおなかの中の子うまれてくるまで、ぼく、そばにいる」

「なに、言ってるの?コチョウはこれからもずっと側にいるのよ・・・!家族なんだから」







ーーーー






コチョウ「僕には行くところあるからと言って、リチアが産まれて半年経った頃、家を出ました。それからカトレア様の元に行きました」


そしてカトレア様は僕に力を与えてくれました。
この力で誰かを守るために、戦える力を。



カトレアはコチョウに魔法を捧げる。
風の魔法を体に浴びたコチョウの髪の色と瞳の色はエメラルド色へと染め上げた。











コチョウ「実際のところ、心臓を捧げてから自分でももう何年生きているかわからなくなっていて。すべてにおいて感情というものが僕の中から全部なくなっていく気がした。でも、ひとつだけ、なくなってないものがあることに気がつきました。
リチアさんですよ」

リチア「わ、たし?」

コチョウ「あなたと初めて出会った時、まだ幼いあなたを見れた時、僕は初めて感情を表に出せたんです。
感情というものを全部、失ったかと思ってましたが貴方の前だと笑顔をだせるみたいなんです」

リチア「おに・・・せ、先輩・・・」

コチョウはリチアの頬にそっと触れる。

コチョウ「二人きりの時はお兄様と呼んでくれて構いませんよ」


リチア「・・・っわ、わたし・・・うれし、かった・・・です・・・お兄様と会えたことが・・・。嬉しくて・・・っ

そ、っか・・・任務で・・・先輩に抱きしめられた時心の中が落ち着いたのは・・・・お兄様だったから、なんですね」


リチアはコチョウの胸に飛び込む。それを優しく受け止めるコチョウ。



リチア「お会い、できてよかった・・・お兄様・・・」



コチョウはリチアの頭を撫でる。
そして目を細めた。





僕が今こうして、ここに居られて成長できてるのは全部、カトレア様のお陰。

それは僕だけではなく、キキョウ様、ノウゼンカズラ様、アザレア様も同様でしょう・・・。


神様に心臓を捧げた者は、その時点から時は動かず、停止している。赤ん坊の時点から心臓を捧げた僕はまだほんの赤ん坊に過ぎなくて、リチアさんは僕よりも年上になってしまった。
それでも、リチアはずっと僕の大切な妹には変わらないから。




そして、リチアもまた、神に心臓を捧げた者の一人ということ・・・。普通の人間には使えないような力が使えるということは、そういうことなのだから・・・。





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