手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

文字の大きさ
98 / 102
第98話

「リチアから、離れろ・・・!」

しおりを挟む
早く・・・一刻も早くこの学校から出て、全市民にこの事を伝えなくちゃ・・・!

騎士学校のあの連中はヤバいってことを・・・
関わってはいけないって、頼ってはいけないんだって・・・!!

皆に、はやく、はやくーー!




保険の先生が指紋認証で扉を開けて外に出ようとすると・・・



「・・・!」


立ちはだかる様にそこにキキョウが剣を構えて待ち構えていた。

「ひ・・・」


先生は後ずさる。


キキョウ「・・・真実に気づいた者は消す。1匹たりとも逃がさん。それがここのルールだ。お前もすでに・・・いや、ずいぶん前から真実に気づいているな?」

「い、いや・・・いやぁあ!」


なに・・・、な、なんで!?今まで気付かれてこなかったのに・・・!?





先生は学校の中へと引き返そうとすると、そこにノウゼンカズラとアザレアが立ちはだかる。
二人の手にも剣が握られてた。




「や・・・やめ、て・・・」



キキョウはそう言って怯えていた2年生の生徒の事を一瞬思い浮かべ、剣から炎を湧き上げるとそのまま先生の背後から胸を突き刺す。

先生の内側から炎が燃え盛り、先生は全身焼き尽くされる。

その燃え盛る炎を見ていたアザレア、ノウゼンカズラ、キキョウ。キキョウはその炎を見るたびに思いだす。
母と父が炎に焼かれていく光景を・・・。
キキョウは頭を抑え、剣を手元から消して拳を握った。

剣を消すと先生から上がっていた炎も消え、焼け焦げた先生がその場に倒れ伏せもう息はしていなかった。
それを見てからノウゼンカズラはキキョウに声をかけた。


ノウゼンカズラ「・・・大丈夫かよ」

キキョウ「あぁ・・・平気だ」
まだ私が人間であった頃の記憶が、ちらつく・・・。


あの男だけは・・・いつか・・・私の手で・・・・。



ノウゼンカズラ「てか、こいつの心臓貫いて良かったのか?まだ使うんじゃ・・・」

キキョウ「カトレア様はもう人形は作れないと仰った。・・・それに、心臓を貫かなければまた神との交渉により蘇ってくる輩が増えるかもしれんからな。念には念をだ」

ノウゼンカズラ「そう、か。人間なんて簡単に辞めれちまう世界だもんな。
・・・俺らみてぇに。神を持つ者は簡単には死なねぇし、神を簡単に明かす事はしねぇしで戦いづれぇし。神を教えちまったら自分が殺されるって気付くから・・・さりげなくで探りを入れるしかねぇんだ・・・」

キキョウ「・・・・」








ーーー





リチアはコチョウから後退していると、窓際に到達して背中は壁についたところでもうこれ以上後ろに下がることはできない。・・・逃げられない。
そう観念した時だった。



ケイリィ「リチアから、離れろ・・・!!」

そんな声が聞こえ見てみれば教室の入り口に剣を構えて立っているケイリィがいた。
かすかだが、ケイリィの剣を握る手が震えているのが見て分かる。




コチョウ「これはこれは、ケイリィさん。どうして学校に?なにか忘れ物ですか?」

ケイリィ「・・・そんなところです」

コチョウ「こんな夜更けに?」

ケイリィ「リチアという忘れ物です。
全部、聞きました。先輩達がこの学校でしてること・・・。ここにいた2年の先輩達は皆、人形にされて・・・売られてるって・・・!なにが市民を守る騎士ですか・・・・なにがヒーローですか・・・!ぜんぜん正しくないし・・!ただの犯罪集団じゃないですか・・・!!!」

リチア「・・・ケイ・・っ」


コチョウ「・・・」

コチョウは黙り、ケイリィに向き直る。



"どうして・・・?先輩達は正しいはず、なのに・・・恨まれるようなことなんて一度も・・・"


"騎士様があんな子供相手に負けるわけがない・・・!
我らのヒーロー・・・この世界の希望、なんだから・・・"



コチョウ「ずっと感じて、思ってたことです。そんなことは」


ケイリィ「え・・・?」



それはほんの一瞬の出来事だった。


目の前に立っていたコチョウは瞬間移動したかと思えばケイリィのすぐ目の前にいつの間にか立っていたことにケイリィは行動が遅れてしまった。

ケイリィ「!」



僕らは、ヒーローとは程遠い存在だということ・・・。



ケイリィに向かってコチョウが剣を振り下ろそうとするのをみてこの後どうなるか想像してしまったケイリィは避けようとした。だがその剣はケイリィの肩に深く刺されてそのままの勢いで丸ごと腕を一本切り落としたのだ。


ケイリィ「ぐわああああぁ!!!」



リチア「!!!」


ケイリィの切られた腕から大量の血が流れ、ケイリィはその場に倒れた。


コチョウ「やはりケイリィさんもあの者らと共に消してあげるべきでしたね」


片方の腕で、切断された部分を押さえて顔を苦痛に歪めながらコチョウを睨みあげる。


コチョウ「消えた1年の生徒ですが、あの子達は罰を与えることとしました。
人形にはしていません。ちゃんと、生きていますよ。
真実を知った者は消さないとならない。
だから今から僕は貴方を殺さなくてはいけません。
人形化にすれば痛みを伴わずに済んだのですが、残念ながら今の僕では力が弱くて、使えないのです。

だけど、カトレア様なら、あなたを永遠に死なずに生きれる命を下さると思います。

貴方達の消えた生徒側もこちら側にいます。
どうしますか?ケイリィさん。永遠に生きながらえる命が欲しいか、ここで野垂れ死ぬか」


ケイリィ「ぐ・・・うぅ・・・っ」


コチョウ「腕、痛むでしょう?早く答えないと、人間なのだからそんな大量の血を流していたら死んでしまいますよ」

ケイリィ「・・・・っ」


ケイリィはあまりの痛さに言葉を出すこともできずに、ただコチョウを睨むことしかできない。

血の流しすぎで頭がくらくらして今にも瞼を閉じてしまいそう。
ここで閉じてしまったら、リチアがラン先輩に・・・。
俺は・・・ここで死ぬのかな・・・。
好きな人すら守らずに・・・。




ケイリィが瞼を閉じかけたその時。
ふと体に暖かみを感じた。
なんとなくだが、痛みも引いていってるような・・・。

ケイリィは目を開いて見てみると、
自分にバリアが張られているのが分かる。
そのバリアから発生させているのだろうか。体が暖かみをもってるのって・・・。


そしてケイリィを守るようにしてリチアがコチョウの前に立ち剣を構えて剣の矛先をコチョウに向けていた。

その時のリチアの瞳は青く光っていて、その瞳はコチョウを睨んでいた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...