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中に入ると、すでに橋本さんは祭壇の前にドレス姿で立ち、それを司と大江さんが真剣に、でも凄く楽しそうに撮っている。
入り口付近に固まっていると、kyo君が男の人を連れだってやって来た。kyo君は、テレビでもなかなか見ることのないブラックスーツ。もう一人はタキシード姿。
私は、あの時の雑誌の人だ……とその姿を見て思う。
祥子さんがその人に声をかけていると、kyo君が私に話しかけてくれる。
「あ、長森さん。お疲れ様です!」
「お疲れ様です」
つい真面目に挨拶を返すと、kyo君がニッコリ笑ってくれた。
うわぁ。やっぱりカワイイ……
その笑顔にキュンとしてしまい、この場に司がいなくて良かった、いたらどんな顔されるか、なんて頭を過ぎる。
「長森さん、司さんのマネージャーになったんだって?」
kyo君にそう尋ねられ、私は名刺を取り出して渡す。
「今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそ」
私たちがそんな会話をしていると、ふと視線を感じた。見ると、タキシード姿の男の人がこちらを見ていた。
そりゃ……この場違い感。あんた誰?って思うわよね
私が一度しまった名刺を取り出そうとすると、kyo君にいらないって突っ込まれ……ちょっと居た堪れない気分になりながら自己紹介をする。
「失礼しました。初めまして。長門さんと仕事でご一緒させていただいております、長森瑤子と申します。本日はおめでとうございます」
あくまでも仕事の関係を強調して笑顔を向けると、誠実そうなその人は小さく笑い返してくれた。
「ありがとうございます。土居武琉と言います。……。あの……」
何故か言い辛そうに、武琉君はそこで言葉を止めた。
「何か?」
「いえ……司さんと仕事って、大変だなって思って」
凄く真面目な顔してそう呟かれ、もしかしなくてもこの人も司に酷い目にあったんじゃないかと同情したくなった。
「ご安心下さい。これからは私がちゃんと見張りますので」
「おー!長森さんさすが。ホント、見張ってて!」
kyo君にもそう言われ、私はやっぱり何かあったんだと察してしまった。
「たぶん、これからは大丈夫だと思います」
躊躇いながら武琉君にそう言われて、私は小首を傾けた。すると、武琉君は私を見てふっと表情を緩めた。
「司さん変えたのはあなたかな?って思ったんで」
「え………」
その後が続かないまま、驚いていると話題を変えるように、kyo君が口を開いた。
「しかし、花嫁撮影会はいつまで続くんだよ」
確かに……。2人とも本気すぎる……
業を煮やしたまどかさんの鶴の一声でようやく撮影は終わり、牧師姿の元気の良い男の子の音頭で式が始まった。
幸せそうな2人の姿を見ていると、何だかこっちまで幸せになって来て、胸がいっぱいになる。
男同士、なんてそんなのどうでもよくなる位に2人の絆のようなものをヒシヒシと感じる。
きっと、2人にとってお互いが唯一無二の存在なんだろうな……
誓いのキスを交わす姿を見て、そう感じた。
ただし、恥ずかしそうに口付けする2人を茶化すように司が「ヒュ~!」なんて口笛を吹くもんだから、慌てて私は腕を引っ張って嗜める。
「ちょっと!何やってるのよ!」
小声でそう言うと、「いいだろ?これくらい」と悪戯っ子のような顔して司は答えた。
ホント、こう言うところは急に子供っぽくなるんだから……
でもこう言う部分も、しょうがないなぁって可愛く思って、どこか憎めない。
司に気を取られていて主役の2人を見ていなかったら、武琉君が焦ったように声を出していて、そちらを振り返る。見ると、橋本さんの瞳からは美しい涙の粒が零れ落ちている。その余りの美しさに息を呑んでその様子を眺めていると、涙を拭いて2人は笑顔になった。
何だか少し、ほんの少しだけ、切なくなって、羨ましくなる。
皆に祝福されて結婚式を上げる2人と、もしかしたら誰にも祝福される事はないかも知れない自分。
そんな、暗くなる気持ちがジワジワと自分を蝕んで行くような感覚がした。
「では、皆さん。外に軽食を用意してますので、移動お願いしまーす!」
牧師役の男の子の明るい声に、弾かれるようにハッと顔を上げる。
「行くぞ」
司が少し顔を曇らせていた事に気づかず、もう背中を向けていたその姿の後に私は続いた。
入り口付近に固まっていると、kyo君が男の人を連れだってやって来た。kyo君は、テレビでもなかなか見ることのないブラックスーツ。もう一人はタキシード姿。
私は、あの時の雑誌の人だ……とその姿を見て思う。
祥子さんがその人に声をかけていると、kyo君が私に話しかけてくれる。
「あ、長森さん。お疲れ様です!」
「お疲れ様です」
つい真面目に挨拶を返すと、kyo君がニッコリ笑ってくれた。
うわぁ。やっぱりカワイイ……
その笑顔にキュンとしてしまい、この場に司がいなくて良かった、いたらどんな顔されるか、なんて頭を過ぎる。
「長森さん、司さんのマネージャーになったんだって?」
kyo君にそう尋ねられ、私は名刺を取り出して渡す。
「今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそ」
私たちがそんな会話をしていると、ふと視線を感じた。見ると、タキシード姿の男の人がこちらを見ていた。
そりゃ……この場違い感。あんた誰?って思うわよね
私が一度しまった名刺を取り出そうとすると、kyo君にいらないって突っ込まれ……ちょっと居た堪れない気分になりながら自己紹介をする。
「失礼しました。初めまして。長門さんと仕事でご一緒させていただいております、長森瑤子と申します。本日はおめでとうございます」
あくまでも仕事の関係を強調して笑顔を向けると、誠実そうなその人は小さく笑い返してくれた。
「ありがとうございます。土居武琉と言います。……。あの……」
何故か言い辛そうに、武琉君はそこで言葉を止めた。
「何か?」
「いえ……司さんと仕事って、大変だなって思って」
凄く真面目な顔してそう呟かれ、もしかしなくてもこの人も司に酷い目にあったんじゃないかと同情したくなった。
「ご安心下さい。これからは私がちゃんと見張りますので」
「おー!長森さんさすが。ホント、見張ってて!」
kyo君にもそう言われ、私はやっぱり何かあったんだと察してしまった。
「たぶん、これからは大丈夫だと思います」
躊躇いながら武琉君にそう言われて、私は小首を傾けた。すると、武琉君は私を見てふっと表情を緩めた。
「司さん変えたのはあなたかな?って思ったんで」
「え………」
その後が続かないまま、驚いていると話題を変えるように、kyo君が口を開いた。
「しかし、花嫁撮影会はいつまで続くんだよ」
確かに……。2人とも本気すぎる……
業を煮やしたまどかさんの鶴の一声でようやく撮影は終わり、牧師姿の元気の良い男の子の音頭で式が始まった。
幸せそうな2人の姿を見ていると、何だかこっちまで幸せになって来て、胸がいっぱいになる。
男同士、なんてそんなのどうでもよくなる位に2人の絆のようなものをヒシヒシと感じる。
きっと、2人にとってお互いが唯一無二の存在なんだろうな……
誓いのキスを交わす姿を見て、そう感じた。
ただし、恥ずかしそうに口付けする2人を茶化すように司が「ヒュ~!」なんて口笛を吹くもんだから、慌てて私は腕を引っ張って嗜める。
「ちょっと!何やってるのよ!」
小声でそう言うと、「いいだろ?これくらい」と悪戯っ子のような顔して司は答えた。
ホント、こう言うところは急に子供っぽくなるんだから……
でもこう言う部分も、しょうがないなぁって可愛く思って、どこか憎めない。
司に気を取られていて主役の2人を見ていなかったら、武琉君が焦ったように声を出していて、そちらを振り返る。見ると、橋本さんの瞳からは美しい涙の粒が零れ落ちている。その余りの美しさに息を呑んでその様子を眺めていると、涙を拭いて2人は笑顔になった。
何だか少し、ほんの少しだけ、切なくなって、羨ましくなる。
皆に祝福されて結婚式を上げる2人と、もしかしたら誰にも祝福される事はないかも知れない自分。
そんな、暗くなる気持ちがジワジワと自分を蝕んで行くような感覚がした。
「では、皆さん。外に軽食を用意してますので、移動お願いしまーす!」
牧師役の男の子の明るい声に、弾かれるようにハッと顔を上げる。
「行くぞ」
司が少し顔を曇らせていた事に気づかず、もう背中を向けていたその姿の後に私は続いた。
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