駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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エピローグ

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 キイっと音がして、記憶より深い飴色に変わったドアが開く。
 依澄さんに促されて先に入ると、その光景に驚いて立ち止まった。
 数十人の人たちが一斉に私を囲む。年齢も性別も様々だが、みんなどこか見覚えのある顔ばかりだ。その中の一人、少しふくよかな男性が、真っ先に声をかけてきた。

「エマ! お帰り!」

 知っている人のはずなのに、誰だかわからない。
 混乱したままポカンとしていると、「ダニー。恵舞が驚いてるだろ」とクスクスと笑う依澄さんが私の横に立った。私は彼の呼んだ名前と、自分の知るその人を頭の中で照らし合わせてみた。

「え! ダニー⁈ 車屋さんの? なんかすごく……」

 太ったとは言えず、言葉を濁す。彼は昔、ルークと同じくらいスリムだった。その変わりように驚く。

「エマ。久しぶりね。元気だった?」

 ダニーの横から声を掛けてきた女性は彼の妻だ。昔の優しい雰囲気のまま変わっていない。

「アメリア。久しぶり。元気だったよ」

 それを皮切りに、次々と懐かしい顔が話しかけてくる。私とルークが結婚したと聞き、顔の広いダニーがあちこち声をかけてくれたようだ。みんな口々に、私たちを祝福する言葉をかけてくれる。知らず知らずのうちに、私の目から嬉し涙がこぼれていた。

「――じゃあ、夜はジェームスのレストランでパーティーだからな! 二人とも遅れるなよ?」

 ダニーがそう言いながら帰っていく。教会の中は波が引いたように静かになった。

「……びっくりした。依澄さんからのサプライズよね?」
「あぁ。ダニーに話したら乗り気でな。喜んでくれたなら嬉しいが」
「もちろん嬉しいに決まってる。何人かに会えたらいいなって思ってたから」
「そうか。夜はもっと来てくれるらしいぞ?」

 彼は私に優しく笑いかける。ルークと同じ表情で。そんな依澄さんと手を繋ぐと、外に出た。

「もう一つ、寄りたいところがあるんだ。行ってもいい?」

 彼を見上げて頷くと、そのまま歩き出す。そこに向かいながら、私は幼い頃の記憶を辿った。

「……大きくなったな」

 私がルークに初めて出会った場所。教会のシンボルツリーは、あの頃より一層大きく見えた。それを見上げて呟いた私の前に、依澄さんは立った。

「恵舞、愛してる。これからも変わらない愛を、この木に誓うよ」

 また涙があふれて頬を伝う。
 手が届かない人だと思っていた。もう二度と会えないと思っていた。けれど運命とは不思議なものだ。

「私も……愛してる」

 気持ちが込み上げて、それしか言葉にならない。そんな私を引き寄せた彼と見つめあう。
 
 ――重なった唇から、溺れそうなほど甘い、あふれるような愛情を与え合った。

Fin
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