年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

玖羽 望月

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☆番外編3☆

honey moon 6

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ミッシェルもとい、みかちゃんの家に集まっていたのは、共通の友人知人だった。レイちゃんもアンちゃんも、みかちゃんと知り合いだなんて一言も教えてくれなかったんだけど。そして遅れてやって来たロイ。確かに、この部屋のオーナーなんだから知り合いだろう。
司は前からそれを知っていたのに、聞いたことは無かった。そもそも、俺は司とみかちゃんがどうやって知り合ったのかも知らないのだけど。

皆がリビングのソファで寛いでいると、奥からみかちゃんが誰かを伴って出てきた。

「皆さん、食事の用意ができたのでダイニングへどうぞ?」

そう言うみかちゃんの後ろに控えていた人の姿を見て、俺と司が同時に「えっ!」「はっ?」と声を上げた。

そして示し合わせたようにその人の名前を呼んだ。

「「メグ⁈ 」」

司も知らなかったようで、驚いた様子だ。みかちゃんも「え?知り合い?」と目を丸くしている。けれど、メグだけは相変わらず真っ白なひっつめ髪のお堅い無表情のままこちらを見ると、驚いた様子もなく「お久しぶりですね。ツカサ、ムツキ」と淡々と言った。

「久しぶりだね、メグ!会えると思ってなかったよ」

俺はそう言ってメグの元へ歩み寄った。

「なんだ。ツカサもムツキも知らなかったのか?ミッシェルのハウスキーパーのことを!」

後ろから、フライドチキンの店の創業者のようなお腹を揺らして、笑いながらロイがやって来る。

「ミッシェルがハウスキーパーを探していると聞いて、この家のことならメグが適任だと紹介したんだが」

ロイがそういうのも頷ける。メグはこの家の、と言うか司のハウスキーパーを6年していたのだ。正直、司よりこの家のことは知っているはずだ。

「こちらがムツキの?」

状況が飲み込めないまま俺を見上げいたさっちゃんの前にメグがやってくるとそう口にする。

「そう。マイワイフ、咲月だよ?メグに紹介できて良かった」

俺が英語でそう会話していると、さっちゃんは自分のことを言われていると気づいたようで、メグに簡単に挨拶していた。そしてメグはそんなさっちゃんに、目を細めて笑みを浮かべていた。

「お会いできて嬉しいです。マーガレットです。メグとお呼びください。それにしても……。とても可愛らしいかただこと。ムツキにお似合いです」

メグは柔らかな表情でそう言う。

ニューヨークにいる間、司と、そして俺のことも見守ってくれていた人。自分の母とは全く違うけど、それでも俺はメグに母親のような感覚を覚えていたのだった。


◆◆


「司……イタイケな中学生にそんなことしたんだ……」

皆でテーブルを囲み、懐かしいメグの料理を食べながらみかちゃんの思い出話を聞いていた。話は司との出会い。その内容は本人達と直也君しか知らず、皆興味深々だ。
みかちゃんが皆に分かるように、英語と日本語を交えて語ってくれたのは、彼女が中学3年生の春、近所の神社で司に出会った話だった。

そう言えば昔、フラッと何処へ行ったきり数日帰らなかったことあったっけ。てっきり、どこぞの美女とお楽しみかと思ったら、相手は中学生だったなんて。

「別に俺は何もしてねーだろ。写真撮っただけだ」

俺の言いように顔を顰めながら司は俺に言う。

「確かに撮っただけでしたよ?素人の中学生相手に注文は多かったですけど」

みかちゃんはクスクス笑いながらそう返す。

「なんか目に浮かびます……」

さっちゃんまでもそんなことを口にしていて、司は黙ったまま決まりの悪そうな表情を浮かべていた。

「その時撮ってもらった写真、今でも大切にしてるんです。あの時、夢も希望も持っていなかった私が、その気になれば何にでも変われそうな気がしたから」

そう言って笑みを浮かべ、みかちゃんは直也君に視線を送る。

「そうだね。みかちゃんはその通りに、今じゃ何にでもなれる人になれた」

直也君は穏やかな表情でみかちゃんを見ている。それに、2人の間にある絆のような温かいものを感じる。

「ミッシェルは、これからもっといろんなことに挑戦するといいわよ。ライオンに立ち向かうくらいの勇気を持ってね」

アンちゃんはそんなことを笑顔で言っている。きっとまた、お得意の占いだろう。彼女は、こうすれば良いとか悪いとは言わない。ただ、そうやって少し背中を押してくれるのだ。

「あ、今インスピレーション湧いたかも」

レイちゃんはふとそんなことを言うと、ポケットから小さなクロッキー帳と鉛筆を取り出し書き始めた。今まで何度か見たことのある、レイちゃんらしい光景だ。

「そうだぞ?ミッシェル。今度お前さんが豪邸に移るときには、この部屋はあの大女優が使っていたとアピールできるからな。頼むぞ!」

そう言ってロイは豪快に笑っている。

「さあさあ皆様。お食事はまだまだございますよ?」

メグは空いた皿を片付けながら、少し楽しそうな表情だ。

「……睦月さん」

さっちゃんが隣から小さく呼びかける。

「ん?何?」
「なんか……凄く楽しいね」

とびきりの笑顔でそう言う愛妻に、俺は「俺もだよ」と答えながら、皆の明るい笑顔を眺めていた。
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