年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月までー月の名前ー

玖羽 望月

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☆番外編3☆

honey moon 10

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私がそんなことを思った理由は簡単だ。さっきまでお菓子を貰いに来ていた子どもたちの中には自分と似た衣装の子もいたけど、その付き添いやパーティーに訪れた魔女たちはみんなもっと大人ぽい衣装だった。まぁ、自分のこの身長じゃ無理もないか……と諦めもしたのだった。

「確かにね?でも似合ってるからさ、来年もそれ着て欲しいかも」

なんて睦月さんは笑いながら言い、私は「無理だよ!日本でこれ着て歩く自信はないよ!」と赤面しながら答えた。

「え~?俺にだけ見せてくれればそれでいいのに~」

睦月さんはそう言って残念そうに口を尖らせていた。

そして戻ったリビングは人で溢れていた。座るところなんてなくて、皆立ったままだ。その上全員本格的な仮装をしていて、テンションはかなり上がっている。想像以上の盛り上がりに、私は多少引き気味になってしまっていた。

睦月さんと長門さんがうんざりしていたのもわかるかも……

なんて思いながら、睦月さんに手を引かれて人のあいだをすり抜けるように歩いた。
その辿り着いた先に見えたのは、アダルトな魔女や、アクション映画のヒロインに扮した近所の奥様方に囲まれている怪人ファントム
睦月さんと同じような黒いマントに白いシャツ。ベストはグレーのものを着ていて、顔にはマスカレードを思わせる仮面を付けている。

「司、あっという間に正体バレたんだよねぇ」

私が怪人に群がる人達を見て唖然としたのを見ていたのか、睦月さんに耳打ちされた。
確かに元からこっちの人と遜色ない体格でスマート着こなし。目を引くのは間違いない。

「よ……瑤子さんには見せられないね」
「本当に。でも仮装した司の写真は喜んでたよ」

少し離れた場所から様子を伺いながらコソコソと話をする。

「いつの間に撮ったの?」
「もちろん隠し撮りだよ。スマホでね?撮らしてくれるわけないしね?」

確かにそうだろうと思う。
けれど、この場に来られなかった瑤子さんが、長門さんの珍しい姿を見て喜んでいるのも目に浮かぶようだ。

「それにしても……。そろそろ司を救出に行こうか。近所の人だから無碍にもできないだろうし。それに、奥様方の争いが始まる前にね?」

そう言って笑いながらウインクする睦月さんに私は尋ねる。

「なんか物騒だね。今までそんなことあったとか?」
「えーと。うん、まぁ……。それなりにね?」

昔を思い出したのか、睦月さんは苦笑いしながらそう答えた。

無事に長門さんを救出し、3人で隅に移動する。

「ったくロイのやつ。これ、ちゃんと時間通りに終わるんだろうな」

長門さんは瓶に入ったビールを呷りながら不満気に漏らしている。

「あと1時間で帰ってくれるかねぇ」

睦月さんも溜め息を吐きながらまだ盛大に盛り上がっているゲストたちを眺めていた。
今日ここを使うのは、夜10時までとロイさんと約束しているらしい。と言っても、2人は絶対に時間は押すから、11時までに居なくなってくれたら万々歳だなんて言い合っていた。

「何か飲み物取ってこようか?」

睦月さんが私の持っていたソーダ水の瓶を攫いながら尋ねる。

「あ、私行くよ?」
「自分のも取ってくるし、何か食べるものも持ってくるよ。同じものでいい?」
「うん」

私が頷いていると、睦月さんは「じゃ、司もビールいるでしょ?一人じゃ持てないから一緒に来てよ」と、有無を言わさず長門さんの腕を引いている。

「へいへい」

仮面で表情は見えないが、絶対に面倒くさそうな顔をしているだろう長門さんはそう言って睦月さんとキッチンへ向かった。

「Hey!」

ぼんやりと海外ドラマのような光景を眺めていると、隣からそんな声がして振り返った。見ると、海賊風のバンダナに眼帯をした男の人と、包帯でグルグル巻きにされたミイラ男が立っていた。

「You're a pretty witch.」

あ、私に呼びかけてたんだ。と思いながらも、なんと返していいのかわからない。

「Do you live nearby?」
「えーっと……」

たぶん、近くに住んでるのか聞きたいんだろうけど、やっぱりとっさに言葉が出てこない。

「Come have some fun with us.」

そう言うと、一人が私の腕を取ろうとして、私は身構えた。そこにスッと腕が現れ、伸びてきた手を止めた。そして、まさにヴァンパイアと言いたいなるくらいの鋭い視線を見せていた。
その様子に相手は一瞬たじろぎ、肩をすくめてやれやれと言った感じで手を広げると、目の前から去っていった。

「さっちゃん、大丈夫?何かされた?」

険しい表情で私の顔を覗き込む睦月さんに、私は打ち消すように手を振り「だ、大丈夫!」と返す。

「あいつら、さっきからこっち見てると思ってたけど……。さっちゃん狙いだったのか。ごめん、一人にして」

睦月さんは私の手を握りながら謝る。

「気にしないで?私狙いの人がいるなんて思わないもの」

それに睦月さんは大きく息を吐くと、「わかってないなぁ」と呟いた。
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