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☆番外編3☆
honey moon 20
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見慣れた景色を眼下に、機体は旋回し陸に降りる。スピードを落としノロノロと動く飛行機に、『田舎の国内線と違って駐機場まで長いもんなぁ……」と思いながら身を預けていた。
「ったく!早く着かねーのかよ!」
向こう側から長門さんのイライラした様子の声が聞こえ、私は席から身を乗り出しそちらを伺った。
「もうちょっとでしょ?着陸してから駐機場まで時間かかるのいつもの事じゃん」
「うるせー!分かってる!」
私の隣の席の睦月さんは、その向こう側の長門さんとそんなやりとりをしていた。
長門さんが落ち着かないのも、仕方ないよね?
私は、向こう出発する前に届いたメッセージを思い返した。
『無事生まれました。女の子です。写真は司に送ってないので、当日のお楽しみ。まだ見せないでね』
そう送られてきた可愛らしい赤ちゃんの写真。まだクシャクシャだけど、それでも両親の美男美女ぶりは生まれたてでも受け継いでいる。
そのメッセージを空港にいる時に受け取り、長門さんはとにかく安堵しながら溜め息を吐きその場に座り込んでいた。
『もー!その情け無い姿、瑤子ちゃんに送るよ?』
笑いながらスマホを向けようとする睦月さんに『お前は本当に一言多い!』と言いながら、長門さんは立ち上がった。
『とにかく。おめでとう、司』
『おめでとうございます』
私達がそれぞれそう言うと、長門さんは穏やかな表情で『あぁ。ありがとな』と返してくれたのだった。
「俺は先に行く」
機体が止まり、シートベルト着用サインが消えたと同時に長門さんは立ち上がる。
「はいはい。瑤子ちゃんによろしくね!」
睦月さんの楽しげな言葉すら、届いているのかわからないくらい、あっという間に長門さんは消えていった。
「本当に、最後まで笑わせてくれるよねぇ」
「睦月さん、笑いすぎだと思うよ?」
私達はゆっくり立ち上がり、出口へ向かう。
「だって、あんなソワソワした司なんて、そうそう見れないよ?」
「確かに……凄く意外ではあったけど」
初めて会ったときは、近寄り難くて、話しかけることすらできなかったけど、この旅行でいっそう意外な一面を見た気がする。それから、睦月さんとの絆なようなものも。もちろん2人には言えないけど、大人になっても言いたいことを言い合える親友っていいな、なんて思ってしまった。
「どうかした?」
睦月さんの横顔を眺めながらそんなことを考えていると、睦月さんは私に笑顔を見せた。
「ううん?帰ってきたね!かんちゃんを迎えに行こう?」
「だね」
そう言って、睦月さんは私の手を握ってくれた。
◆◆
「はぁ~っ!可愛いっ!壱花ちゃん、また大きくなりましたね!」
年が明けた1月。
今まで長門さんのご実家に里帰りしていた瑤子さんが、ようやく自宅に戻ってきた。ご実家にいるときにも、もちろんお祝いを兼ねて顔を見せてもらいにいったのだけど、そのときはまだフニャフニャな感じだったのに、今はずいぶんしっかりしている。
「本当に。あっという間に大きくなっていくのよね。びっくりしちゃう」
そう言って瑤子さんは、壱花ちゃんを寝かせているベビーラックを覗きこみ、自分の愛娘の頰をつついている。
「確かに。日に日に重くなってる気はするな」
リビングに座る私たちを眺めるように、ソファの上から長門さんは言う。
「そんなこと感じるくらい子育てしてるんだねぇ……司が」
その隣でしみじみと言う睦月さんに、「俺だってやるときゃやるっつーの!」と長門さんは顔を顰めていた。
「岡田さんも、言ってるうちに他人事じゃなくなりますよ?ねぇ、咲月ちゃん」
「ですね。まだ全然実感湧かないんですけど」
そう言って、私は自分のお腹に手を当てる。まだまだ変化の少ないお腹に新たな命が宿ってるなんて、未だに信じられない。
「いいでしょ!ハネムーンベイビー!」
何故か得意気にそう言う睦月さんに、長門さんは「何がいいでしょ、だ!バカか!」と思いっきり呆れている。
4ヵ月に入ったし、いいタイミングだからと、さっき2人に子どもができたことを報告した。びっくりするくらい悪阻らしい悪阻もなく、それまで何度か会っていた瑤子さんには驚くのと同時に羨ましがられた。
「私もまだまだ新米だけど、何かあったらいつでも相談してね?」
「ありがとうございます。心強いです」
「お前には、俺がレクチャーしてやる!」
「えぇ~?急に先輩風吹かすなぁ」
そんなことを、笑いながら言い合う。そして私は、ぐずることなく宙を見上げている壱花ちゃんを覗き込んだ。
「壱花ちゃんも。生まれてきたら仲良くしてね?」
私が話しかけたのに答えるように、壱花ちゃんは笑顔になった。
「あ、笑った」
「えっ、見せて見せて!」
睦月さんも嬉しそうに寄ってくる。
「どうだ。俺の子は。可愛いだろう?」
「うわっ!司にそんなこと言われる日がくるなんて思ってなかった!」
笑い声が響く、穏やかで温かな昼下がり。
ずっとこれからも、こんなふうに過ごしていけたらいいな、なんて、ここにいる人たちの幸せそうな顔を眺めながら思う。
ううん?きっと続いていくのだろう。甘い甘い、honey moonは。……永遠に。
Fin
「ったく!早く着かねーのかよ!」
向こう側から長門さんのイライラした様子の声が聞こえ、私は席から身を乗り出しそちらを伺った。
「もうちょっとでしょ?着陸してから駐機場まで時間かかるのいつもの事じゃん」
「うるせー!分かってる!」
私の隣の席の睦月さんは、その向こう側の長門さんとそんなやりとりをしていた。
長門さんが落ち着かないのも、仕方ないよね?
私は、向こう出発する前に届いたメッセージを思い返した。
『無事生まれました。女の子です。写真は司に送ってないので、当日のお楽しみ。まだ見せないでね』
そう送られてきた可愛らしい赤ちゃんの写真。まだクシャクシャだけど、それでも両親の美男美女ぶりは生まれたてでも受け継いでいる。
そのメッセージを空港にいる時に受け取り、長門さんはとにかく安堵しながら溜め息を吐きその場に座り込んでいた。
『もー!その情け無い姿、瑤子ちゃんに送るよ?』
笑いながらスマホを向けようとする睦月さんに『お前は本当に一言多い!』と言いながら、長門さんは立ち上がった。
『とにかく。おめでとう、司』
『おめでとうございます』
私達がそれぞれそう言うと、長門さんは穏やかな表情で『あぁ。ありがとな』と返してくれたのだった。
「俺は先に行く」
機体が止まり、シートベルト着用サインが消えたと同時に長門さんは立ち上がる。
「はいはい。瑤子ちゃんによろしくね!」
睦月さんの楽しげな言葉すら、届いているのかわからないくらい、あっという間に長門さんは消えていった。
「本当に、最後まで笑わせてくれるよねぇ」
「睦月さん、笑いすぎだと思うよ?」
私達はゆっくり立ち上がり、出口へ向かう。
「だって、あんなソワソワした司なんて、そうそう見れないよ?」
「確かに……凄く意外ではあったけど」
初めて会ったときは、近寄り難くて、話しかけることすらできなかったけど、この旅行でいっそう意外な一面を見た気がする。それから、睦月さんとの絆なようなものも。もちろん2人には言えないけど、大人になっても言いたいことを言い合える親友っていいな、なんて思ってしまった。
「どうかした?」
睦月さんの横顔を眺めながらそんなことを考えていると、睦月さんは私に笑顔を見せた。
「ううん?帰ってきたね!かんちゃんを迎えに行こう?」
「だね」
そう言って、睦月さんは私の手を握ってくれた。
◆◆
「はぁ~っ!可愛いっ!壱花ちゃん、また大きくなりましたね!」
年が明けた1月。
今まで長門さんのご実家に里帰りしていた瑤子さんが、ようやく自宅に戻ってきた。ご実家にいるときにも、もちろんお祝いを兼ねて顔を見せてもらいにいったのだけど、そのときはまだフニャフニャな感じだったのに、今はずいぶんしっかりしている。
「本当に。あっという間に大きくなっていくのよね。びっくりしちゃう」
そう言って瑤子さんは、壱花ちゃんを寝かせているベビーラックを覗きこみ、自分の愛娘の頰をつついている。
「確かに。日に日に重くなってる気はするな」
リビングに座る私たちを眺めるように、ソファの上から長門さんは言う。
「そんなこと感じるくらい子育てしてるんだねぇ……司が」
その隣でしみじみと言う睦月さんに、「俺だってやるときゃやるっつーの!」と長門さんは顔を顰めていた。
「岡田さんも、言ってるうちに他人事じゃなくなりますよ?ねぇ、咲月ちゃん」
「ですね。まだ全然実感湧かないんですけど」
そう言って、私は自分のお腹に手を当てる。まだまだ変化の少ないお腹に新たな命が宿ってるなんて、未だに信じられない。
「いいでしょ!ハネムーンベイビー!」
何故か得意気にそう言う睦月さんに、長門さんは「何がいいでしょ、だ!バカか!」と思いっきり呆れている。
4ヵ月に入ったし、いいタイミングだからと、さっき2人に子どもができたことを報告した。びっくりするくらい悪阻らしい悪阻もなく、それまで何度か会っていた瑤子さんには驚くのと同時に羨ましがられた。
「私もまだまだ新米だけど、何かあったらいつでも相談してね?」
「ありがとうございます。心強いです」
「お前には、俺がレクチャーしてやる!」
「えぇ~?急に先輩風吹かすなぁ」
そんなことを、笑いながら言い合う。そして私は、ぐずることなく宙を見上げている壱花ちゃんを覗き込んだ。
「壱花ちゃんも。生まれてきたら仲良くしてね?」
私が話しかけたのに答えるように、壱花ちゃんは笑顔になった。
「あ、笑った」
「えっ、見せて見せて!」
睦月さんも嬉しそうに寄ってくる。
「どうだ。俺の子は。可愛いだろう?」
「うわっ!司にそんなこと言われる日がくるなんて思ってなかった!」
笑い声が響く、穏やかで温かな昼下がり。
ずっとこれからも、こんなふうに過ごしていけたらいいな、なんて、ここにいる人たちの幸せそうな顔を眺めながら思う。
ううん?きっと続いていくのだろう。甘い甘い、honey moonは。……永遠に。
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