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第6話 動揺
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人ならざる者の街。薄暗く、数々の赤い明かりが灯る道には、妖たちがぞろぞろと歩いているのが見える。その街の中心に、高い城がそびえ立っていた。
ここは人間が来てはいけない場所なのだろう。中には危険な妖もいそうだ。
「ここが貴方の城?」
「そうだ。そなたもきっと気にいるはずだ」
城は真っ黒で、とても気味が悪い。所々に下がる赤い灯火が不気味さを助長している。
「もういい加減下ろして。自分で歩けるわ」
そういうと彼はようやく私から手を離す。
「ここは随分不気味な街ね。妖たちの中にも、危険そうな者がいるし」
「そんなことはない。皆我の従者たちだ。皆人間に対して敵意を持ってはいるが」
「そうよね……あなたが従えてるくらいだもの」
城の前まで着くと、待ち構えていた僕らしき妖が恭しくお辞儀をする。
「お待ちしておりました。主様、紅姫様」
「彼女を案内してやってくれ」
彼がそういうとその妖の隣にもう1つの影が現れる。またここの妖だろうか。だが、現れたその姿には、意外にも見覚えがあった。
「な……あなたは」
「お久しゅうございます、姫」
先ほどの妖のように恭しく頭を下げた少女はこちらにニコッと笑いかける。
間違いない。彼女は私が千年前に作り出した妖だ。
「生きていたの?ずっと……?」
「はい。主様に救われたのですよ」
彼女は律という名前で、私が作り出した妖の中でも、最も強い力を持っていた。そして1番信頼を置いている妖でもあった。
生き延びていてくれたことは素直に嬉しく思うが、驚きを隠せない。まさか私がいなくなってからも、千年間生き続けることができたなんて。
「驚いたわ。でも、あなたが生きていてくれてよかった」
すると、彼女は悲しそうな顔をして言った。
「あの時は、姫をお守りできず申し訳ございませんでした。姫の死を知り、自決しようとしたところ、主様に止められ……こうして生き延びたのです」
あの時というのは、前世で私が人間に殺された時のことだろうか。私は、まだ自分の最期を思い出せてはいない。
「咎めるつもりはないの。でも、後で私がいなくなってからのこと、ゆっくり聞かせてほしい」
「もちろんです! ぜひお話しさせてくださいね」
そういうと彼女は微笑んだ。
城へ入ると、彼女にあちこち部屋へと案内される。城内は見た目通りとても広かった。しかし、辺りに様々な仕掛けが施されているようだ。
中でも、階段を使わなくとも登れる仕掛けや、勝手についていく明かりなど、目を見張る仕掛けばかりだった。
1番最後に案内されたのは最上階にある1つの部屋だ。
「ここは姫の御部屋ですよ」
部屋には鏡や物入れなどが揃っている。窓の外には縁側もあるようで、ここからも真っ黒な空が見える。
「ありがとう、律」
「いえ、私は貴女の僕ですから。なんなりとお申し付けください」
彼女は浅くお辞儀をする。今でも私を主だと思ってくれているのだろうか。彼女の姿勢は私が紅として生きていた頃と何も変わっていないようだ。
今は黒蛇が居ない。彼が居ない今、色々と聞き出すチャンスだ。
「ねえ、律」
「はい、どうされました?」
「あなたはさっき、あいつに救われたって言ってたけど、彼のことはどう思ってる?」
律は少し考えてから話し始める。
「主様に従うことは、初めは躊躇していました。私は姫の妖ですし、私も共に死ぬ運命でしたから……
でも、主様から姫のことを聞いて従うことにしたのです」
「私の……何の話を?」
「姫を蘇らせることができる、と。だから私は僕になることにしました。
結果として、あの方は本当に貴女を蘇らせてくださいました。これ以上喜ばしいことはありません」
律は嬉々としてそう言うと、私の手を包み込むようにぎゅっと握る。
律も彼と同じ思いを持っていたの……?
戸惑いを隠せない。1番信頼していると言いながら、私は何も彼女の気持ちを分かっていない。
「……私は、鬼になんてなりたくない」
「え?」
「私は、人間でいたいの……」
「姫……?」
私が動揺していることに気づいて、律が心配そうに私の顔を覗き込む。
「今日は早めにお休みになられてください。お疲れでしょう」
律はそう言うと、私に微笑みかける。彼女は私が状況に混乱していると思っているのかもしれない。
「ええ、そうするわ」
「お召し物はそちらに。何かありましたらすぐに私をお呼びくださいね」
彼女は再び会釈をすると、部屋を出て言った。
私は1人になると、縁側のそばへ寄って窓から下の景色を見下ろす。
「本当に、暗い場所ね」
上からも、ポツポツと灯る明かり以外何も見えなかった。月や星が無いのももちろんだが、私はここで暮らすしかないのだろうか。
そんなのは嫌だ。私はいつか必ずここを抜け出す。そして、私は再び人間として、紅羽として生きる。
「維頼くん……」
こんな状況で、なぜだか私は彼のことを思い出していた。
***
維頼side
あれから俺はずっと考えていた。紅羽さんがどうしていなくなったのか。しかし、考えても考えても答えは見つからない。
どこにいるんだよ……。
彼女は夏休みに、実家へ戻ると言っていた。その後、彼女がこちらへ戻ることはなかった。何らかの事件に巻き込まれたのかもしれないけど、彼女は未だに実家のある県にいるはずだ。
俺は今日の昼に、紅羽さんの戸籍上の家である三上家へ向かった。行方不明の情報を新に流した張本人、三上柚木乃に情報を求めるためである。
しかし、彼女はこう言い放った。
「私は何も知らない。高校の時から話してないし。実質他人だから」
「え……でも戸籍上は家族でしょ。どうしてそんなことが言えるの?」
無関心にそう言う彼女に怒りを覚えた俺は強めにそう言う。すると、なぜか彼女の方が憤慨し、俺に強く言い放った。
「あの子は家族じゃない!それに、アンタだって知ってるでしょ? もう私はあの子と話せないんだから」
何の情報も聞き出せないと分かった俺は、三上家を出ると、早々に自宅へと戻ることにした。
結局、何も得られるものはなかったのだ。
警察も探している。でも何も情報が出ていない。俺はこのままでいいのだろうか?何もせず、じっと情報を待ち続けているだけで……。
いや、そんなことは出来ない。だって俺は……
「俺は……」
紅羽さんに、もう1度会いたいと思うから。
もう心は決まっていた。紅羽さんの実家に行こう。何も出来ないかもしれない。それでも何もしないという選択肢は選べなかった。
そうと決めたからには出来るだけ情報を集めよう。
確か彼女はメッセージで、大きいお祭りに行くと言っていた。彼女の実家がある県は比較的小さいから、大きなお祭りだったら場所を絞れるかも知れない。
ネットで調べると、ちょうど1週間前に大きなお祭りが開催されたという情報が見つかる。花火も打ち上がったそうだ。
これだ。
すぐに場所を調べると、そのお祭りが行われた神社へ向かう準備をする。少し遠い場所だが、交通機関を使えば何とかなりそうだ。
俺は新幹線のチケットをネットで購入し、早朝、そこへ向かった。
もう一度、彼女に会うために。
ここは人間が来てはいけない場所なのだろう。中には危険な妖もいそうだ。
「ここが貴方の城?」
「そうだ。そなたもきっと気にいるはずだ」
城は真っ黒で、とても気味が悪い。所々に下がる赤い灯火が不気味さを助長している。
「もういい加減下ろして。自分で歩けるわ」
そういうと彼はようやく私から手を離す。
「ここは随分不気味な街ね。妖たちの中にも、危険そうな者がいるし」
「そんなことはない。皆我の従者たちだ。皆人間に対して敵意を持ってはいるが」
「そうよね……あなたが従えてるくらいだもの」
城の前まで着くと、待ち構えていた僕らしき妖が恭しくお辞儀をする。
「お待ちしておりました。主様、紅姫様」
「彼女を案内してやってくれ」
彼がそういうとその妖の隣にもう1つの影が現れる。またここの妖だろうか。だが、現れたその姿には、意外にも見覚えがあった。
「な……あなたは」
「お久しゅうございます、姫」
先ほどの妖のように恭しく頭を下げた少女はこちらにニコッと笑いかける。
間違いない。彼女は私が千年前に作り出した妖だ。
「生きていたの?ずっと……?」
「はい。主様に救われたのですよ」
彼女は律という名前で、私が作り出した妖の中でも、最も強い力を持っていた。そして1番信頼を置いている妖でもあった。
生き延びていてくれたことは素直に嬉しく思うが、驚きを隠せない。まさか私がいなくなってからも、千年間生き続けることができたなんて。
「驚いたわ。でも、あなたが生きていてくれてよかった」
すると、彼女は悲しそうな顔をして言った。
「あの時は、姫をお守りできず申し訳ございませんでした。姫の死を知り、自決しようとしたところ、主様に止められ……こうして生き延びたのです」
あの時というのは、前世で私が人間に殺された時のことだろうか。私は、まだ自分の最期を思い出せてはいない。
「咎めるつもりはないの。でも、後で私がいなくなってからのこと、ゆっくり聞かせてほしい」
「もちろんです! ぜひお話しさせてくださいね」
そういうと彼女は微笑んだ。
城へ入ると、彼女にあちこち部屋へと案内される。城内は見た目通りとても広かった。しかし、辺りに様々な仕掛けが施されているようだ。
中でも、階段を使わなくとも登れる仕掛けや、勝手についていく明かりなど、目を見張る仕掛けばかりだった。
1番最後に案内されたのは最上階にある1つの部屋だ。
「ここは姫の御部屋ですよ」
部屋には鏡や物入れなどが揃っている。窓の外には縁側もあるようで、ここからも真っ黒な空が見える。
「ありがとう、律」
「いえ、私は貴女の僕ですから。なんなりとお申し付けください」
彼女は浅くお辞儀をする。今でも私を主だと思ってくれているのだろうか。彼女の姿勢は私が紅として生きていた頃と何も変わっていないようだ。
今は黒蛇が居ない。彼が居ない今、色々と聞き出すチャンスだ。
「ねえ、律」
「はい、どうされました?」
「あなたはさっき、あいつに救われたって言ってたけど、彼のことはどう思ってる?」
律は少し考えてから話し始める。
「主様に従うことは、初めは躊躇していました。私は姫の妖ですし、私も共に死ぬ運命でしたから……
でも、主様から姫のことを聞いて従うことにしたのです」
「私の……何の話を?」
「姫を蘇らせることができる、と。だから私は僕になることにしました。
結果として、あの方は本当に貴女を蘇らせてくださいました。これ以上喜ばしいことはありません」
律は嬉々としてそう言うと、私の手を包み込むようにぎゅっと握る。
律も彼と同じ思いを持っていたの……?
戸惑いを隠せない。1番信頼していると言いながら、私は何も彼女の気持ちを分かっていない。
「……私は、鬼になんてなりたくない」
「え?」
「私は、人間でいたいの……」
「姫……?」
私が動揺していることに気づいて、律が心配そうに私の顔を覗き込む。
「今日は早めにお休みになられてください。お疲れでしょう」
律はそう言うと、私に微笑みかける。彼女は私が状況に混乱していると思っているのかもしれない。
「ええ、そうするわ」
「お召し物はそちらに。何かありましたらすぐに私をお呼びくださいね」
彼女は再び会釈をすると、部屋を出て言った。
私は1人になると、縁側のそばへ寄って窓から下の景色を見下ろす。
「本当に、暗い場所ね」
上からも、ポツポツと灯る明かり以外何も見えなかった。月や星が無いのももちろんだが、私はここで暮らすしかないのだろうか。
そんなのは嫌だ。私はいつか必ずここを抜け出す。そして、私は再び人間として、紅羽として生きる。
「維頼くん……」
こんな状況で、なぜだか私は彼のことを思い出していた。
***
維頼side
あれから俺はずっと考えていた。紅羽さんがどうしていなくなったのか。しかし、考えても考えても答えは見つからない。
どこにいるんだよ……。
彼女は夏休みに、実家へ戻ると言っていた。その後、彼女がこちらへ戻ることはなかった。何らかの事件に巻き込まれたのかもしれないけど、彼女は未だに実家のある県にいるはずだ。
俺は今日の昼に、紅羽さんの戸籍上の家である三上家へ向かった。行方不明の情報を新に流した張本人、三上柚木乃に情報を求めるためである。
しかし、彼女はこう言い放った。
「私は何も知らない。高校の時から話してないし。実質他人だから」
「え……でも戸籍上は家族でしょ。どうしてそんなことが言えるの?」
無関心にそう言う彼女に怒りを覚えた俺は強めにそう言う。すると、なぜか彼女の方が憤慨し、俺に強く言い放った。
「あの子は家族じゃない!それに、アンタだって知ってるでしょ? もう私はあの子と話せないんだから」
何の情報も聞き出せないと分かった俺は、三上家を出ると、早々に自宅へと戻ることにした。
結局、何も得られるものはなかったのだ。
警察も探している。でも何も情報が出ていない。俺はこのままでいいのだろうか?何もせず、じっと情報を待ち続けているだけで……。
いや、そんなことは出来ない。だって俺は……
「俺は……」
紅羽さんに、もう1度会いたいと思うから。
もう心は決まっていた。紅羽さんの実家に行こう。何も出来ないかもしれない。それでも何もしないという選択肢は選べなかった。
そうと決めたからには出来るだけ情報を集めよう。
確か彼女はメッセージで、大きいお祭りに行くと言っていた。彼女の実家がある県は比較的小さいから、大きなお祭りだったら場所を絞れるかも知れない。
ネットで調べると、ちょうど1週間前に大きなお祭りが開催されたという情報が見つかる。花火も打ち上がったそうだ。
これだ。
すぐに場所を調べると、そのお祭りが行われた神社へ向かう準備をする。少し遠い場所だが、交通機関を使えば何とかなりそうだ。
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