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第14話 最期の時
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紅羽side
維頼くんはもう一度黒蛇に刀を構えた。維頼くんは、本当に黒蛇と戦う気だ……。
「紅羽さん、これだけは信じてほしい。俺は二度と君を傷つけない。今度こそ、君を救ってみせる!」
それは彼の強い意志を表しているようだった。ああ、彼は本気なんだ。ならば私も、本気で黒蛇と戦うのだ。
「うん……!」
私のその言葉を聞くと、彼は刀を振りかざし、黒蛇の元へ向かっていく。しかし、今度はその刃は通らなかった。
「良い度胸だ、大月維頼。だが、足りぬな」
そう言って黒蛇は彼を軽くあしらう。反動で倒れた彼は、苦しそうな呻き声を上げ始めた。
「ぐ……」
「維頼くん……!」
彼の元へ駆け寄ろうとしたが、黒蛇がそれを止める。維頼くんはまるで呼吸が出来ないように苦しがっている。
「大月維頼……前のやり方でお前を殺しても良いが、簡単に殺してはつまらぬ。紅羽、そなたが殺せ。この男に感謝などするな。此奴はそなたを殺した憎き男なのだぞ?」
黒蛇は私が殺すようにと促す。射抜くような眼差しで見られて冷や汗が出た。しかし、私はもう決めたのだ。
「……殺せない」
「紅羽……我に逆らうつもりか」
「私は、もうあなたには従わない!」
私はそう言い放つと、黒蛇に向かって妖術を使って嵐を起こす。彼を止めなくては、維頼くんが死んでしまう!私が妖術を使うとは思っていなかったのか、黒蛇が少しよろける。維頼くんは苦しさから解放されたようだった。
「おのれ、紅羽……我に妖術を使うなど!」
「言ったでしょう、私はもうあなたには従わない。私は、彼と共にここを出る!」
「……その言葉、決して許しはせぬ……!」
黒蛇の声が一気に低くなる。私は咄嗟に維頼くんの元へ駆け寄った。黒蛇の周りを、邪悪な影が渦巻いている。一体、彼は何をする気なのだろう。
その場の空気が張り詰める。黒い霧のようなものが黒蛇を覆うと、彼はみるみるうちに恐ろしい姿へと変化していった。その姿はまるで人間を一飲みにするような黒い大蛇であり、禍々しい空気を身に纏っている。
「大蛇……」
私も維頼くんもその恐ろしい黒蛇の姿に一瞬引けを取る。黒蛇はその一瞬を見逃さなかった。彼は目にも留まらぬ速さで維頼くんの方へ向かっていくと、彼の左肩に思い切り噛み付いた。
「ぐっ……」
「維頼くん!!」
「……紅羽、最後の忠告だ。今我に下れば全て許してやる。さもなければこの男を殺す」
「私は……」
信じると、誓ったのだ。彼のことを。私は、私を救ってくれると言った彼のことを決して裏切らない……!
私は先程より強力な妖術で今度は黒蛇の首を締める。維頼くんと一緒ならきっと乗り越えられる。そう信じて。
「紅羽っ、絶対に許さぬ」
維頼くんがその隙に黒蛇の元から離れると、再び刀を構える。その構え方は素人のものではなく、前世の彼のものだとすぐに分かった。
「行くぞ、龍神!」
維頼くんは神速でその場から踏み切ると、黒蛇に斬りかかる。私も妖術で黒蛇に追い討ちをかけた。1人だったら出来なかった。でも、2人ならば、きっと出来る。私たちはお互いを信じている。だから何にも負けない自信があった。
緩んだ隙に、維頼くんが刀を黒蛇の目に突き刺した。止めを刺すなら今しかない!
「これで終わりよ」
私は今まで誰にも見せたことのない、一番強力な妖術を使った。黒蛇でさえ知らない、私の最後の切り札を。発動した妖術によって光が辺りを包んでいく。眩しさにゆっくりと目を閉じる。辺りは何も見えなくなった……。
しばらくしてゆっくり目を開けると、元の姿をした黒蛇が地面に倒れているのが見えた。私たちは、ついに彼を倒したのだ。維頼くんもそれを確認すると、私の元へ駆け寄って来てくれた。
「これで、終わったのか」
「うん。全部、終わった」
そう安堵してお互いに言葉を交わす。しかし、次の瞬間、足下からもう1人の声が響いた。
「まだ、終わってはおらぬ……」
その声は、息も絶え絶えな黒蛇の声だった。
「下がって、紅羽さん」
再び維頼くんが刀を黒蛇へと向ける。黒蛇は言葉を続けた。
「お前はじきに死ぬ。きっぱりと諦めたらどうだ」
「フッ……死ぬのならば、せめて紅羽を……一飲みにしてくれる」
彼は、私を道連れにしたがっている。そこまで彼は孤独を恐れているのだろうか。元々、気高き龍神であったはずの彼がこんなに黒く染まって……彼を愛し信仰していた人々もきっといただろうに。
私は人間になりたかった。ずっと憧れていた。普通の人間になることが唯一の望みだった。でも、私が本当にやるべきことは何なのか。それは、あの時黒蛇を助けてから、決まっていたことなのかもしれない。
私は維頼くんに刀を下ろすように促すと、一歩前に出る。
「紅羽さん……?」
「ごめんね維頼くん……。私を救ってくれるって言ってくれて、本当に嬉しかった。あなたを信じたことで、恐れずに戦えた。でも、私は自分の務めを果たさないといけないと思うの」
「そんな……」
彼は私を止めなかった。止められなかったのかもしれない。私が彼を真っ直ぐに見据えて、決して揺るがないことを察したから。
「黒蛇……あなたの望み通り、私は最期まであなたのそばにいる。それであなたが救われるなら、私はそれでいい」
「紅羽……誠か、その言葉」
「ええ……。あなたはずっと寂しかったのでしょう?なら、私がそばにいる。もう心配しなくていいわ」
そういって床に膝をつき、黒蛇を抱きしめる。一度は彼を助けたのだもの。最期まで、あなたを助けるのが、私の務め……。
「紅羽……」
黒蛇の声はいつにもなく震えていた。彼は、泣いていた。
「愛するとは、尊いものだな……紅羽。そして何より美しい」
そういって黒蛇は私の頬を撫でる。
「黒蛇?」
「おかしなことだ。……先程まで、そなたと共に死にたいと思っていたのに、今はたまらなく生きていてもらいたいと、そう思うのだ」
「黒蛇……」
「どうか、生きてくれ。この先も……ずっと。我は、そなたの幸せを、誰よりも願っている……」
そういうと彼は維頼くんを見上げる。維頼くんも彼と視線を合わせた。
「……紅羽を頼む」
「ああ、当然だ……」
その言葉を聞くと、黒蛇は安心したかのようにフッと笑った。そしてふとどこかを見つめると、彼は彼自身の話を語り始めた。
「思い出したのだ……我は遠い昔、そなたらが暮らしていた土地の、集落の神社に祀られていた神だった。
しかし、人間共はそのうち信仰を忘れ、我は人間にその怒りをぶつけた。それが神々を怒らせ、奴等は我に死ねぬ無様な蛇となる呪いをかけたのだ」
「そう、だったのね」
「だが、もう過ぎたことだ。……紅羽、そなたが我を闇から連れ出してくれた。そして、そなたからの愛を受け取った。もう心残りなどない」
彼は私を突然抱き寄せた。壊れ物を扱うように優しく。
「愛しているぞ、紅羽」
そこで私の意識は途絶えた。
***
維頼side
突然、紅羽さんが気を失った。龍神はこの期に及んで何かしようとしているのかと思ったが、どうやら違うようだ。
「紅羽さんの、記憶を消す?」
「ああ。紅羽は人間に、完全に戻れるわけではないが、元凶である我が死ねば人間らしい生き方はできるであろう。そのために、鬼としての記憶は不要だ」
「そうか……なら、紅羽さんはここでの記憶を全て失うのだな。お前はそれでもいいのか?」
「我は、構わぬ。紅羽が幸せならば、それで良い」
「龍神……」
「さあ、紅羽を連れさっさと行け。もう二度とここに来てはならぬ」
「分かった」
俺は紅羽さんを抱きかかえると、絶と、加えて律という紅姫の妖と名乗る者に見送られながら、歪んだ暗い世界を後にした。
維頼くんはもう一度黒蛇に刀を構えた。維頼くんは、本当に黒蛇と戦う気だ……。
「紅羽さん、これだけは信じてほしい。俺は二度と君を傷つけない。今度こそ、君を救ってみせる!」
それは彼の強い意志を表しているようだった。ああ、彼は本気なんだ。ならば私も、本気で黒蛇と戦うのだ。
「うん……!」
私のその言葉を聞くと、彼は刀を振りかざし、黒蛇の元へ向かっていく。しかし、今度はその刃は通らなかった。
「良い度胸だ、大月維頼。だが、足りぬな」
そう言って黒蛇は彼を軽くあしらう。反動で倒れた彼は、苦しそうな呻き声を上げ始めた。
「ぐ……」
「維頼くん……!」
彼の元へ駆け寄ろうとしたが、黒蛇がそれを止める。維頼くんはまるで呼吸が出来ないように苦しがっている。
「大月維頼……前のやり方でお前を殺しても良いが、簡単に殺してはつまらぬ。紅羽、そなたが殺せ。この男に感謝などするな。此奴はそなたを殺した憎き男なのだぞ?」
黒蛇は私が殺すようにと促す。射抜くような眼差しで見られて冷や汗が出た。しかし、私はもう決めたのだ。
「……殺せない」
「紅羽……我に逆らうつもりか」
「私は、もうあなたには従わない!」
私はそう言い放つと、黒蛇に向かって妖術を使って嵐を起こす。彼を止めなくては、維頼くんが死んでしまう!私が妖術を使うとは思っていなかったのか、黒蛇が少しよろける。維頼くんは苦しさから解放されたようだった。
「おのれ、紅羽……我に妖術を使うなど!」
「言ったでしょう、私はもうあなたには従わない。私は、彼と共にここを出る!」
「……その言葉、決して許しはせぬ……!」
黒蛇の声が一気に低くなる。私は咄嗟に維頼くんの元へ駆け寄った。黒蛇の周りを、邪悪な影が渦巻いている。一体、彼は何をする気なのだろう。
その場の空気が張り詰める。黒い霧のようなものが黒蛇を覆うと、彼はみるみるうちに恐ろしい姿へと変化していった。その姿はまるで人間を一飲みにするような黒い大蛇であり、禍々しい空気を身に纏っている。
「大蛇……」
私も維頼くんもその恐ろしい黒蛇の姿に一瞬引けを取る。黒蛇はその一瞬を見逃さなかった。彼は目にも留まらぬ速さで維頼くんの方へ向かっていくと、彼の左肩に思い切り噛み付いた。
「ぐっ……」
「維頼くん!!」
「……紅羽、最後の忠告だ。今我に下れば全て許してやる。さもなければこの男を殺す」
「私は……」
信じると、誓ったのだ。彼のことを。私は、私を救ってくれると言った彼のことを決して裏切らない……!
私は先程より強力な妖術で今度は黒蛇の首を締める。維頼くんと一緒ならきっと乗り越えられる。そう信じて。
「紅羽っ、絶対に許さぬ」
維頼くんがその隙に黒蛇の元から離れると、再び刀を構える。その構え方は素人のものではなく、前世の彼のものだとすぐに分かった。
「行くぞ、龍神!」
維頼くんは神速でその場から踏み切ると、黒蛇に斬りかかる。私も妖術で黒蛇に追い討ちをかけた。1人だったら出来なかった。でも、2人ならば、きっと出来る。私たちはお互いを信じている。だから何にも負けない自信があった。
緩んだ隙に、維頼くんが刀を黒蛇の目に突き刺した。止めを刺すなら今しかない!
「これで終わりよ」
私は今まで誰にも見せたことのない、一番強力な妖術を使った。黒蛇でさえ知らない、私の最後の切り札を。発動した妖術によって光が辺りを包んでいく。眩しさにゆっくりと目を閉じる。辺りは何も見えなくなった……。
しばらくしてゆっくり目を開けると、元の姿をした黒蛇が地面に倒れているのが見えた。私たちは、ついに彼を倒したのだ。維頼くんもそれを確認すると、私の元へ駆け寄って来てくれた。
「これで、終わったのか」
「うん。全部、終わった」
そう安堵してお互いに言葉を交わす。しかし、次の瞬間、足下からもう1人の声が響いた。
「まだ、終わってはおらぬ……」
その声は、息も絶え絶えな黒蛇の声だった。
「下がって、紅羽さん」
再び維頼くんが刀を黒蛇へと向ける。黒蛇は言葉を続けた。
「お前はじきに死ぬ。きっぱりと諦めたらどうだ」
「フッ……死ぬのならば、せめて紅羽を……一飲みにしてくれる」
彼は、私を道連れにしたがっている。そこまで彼は孤独を恐れているのだろうか。元々、気高き龍神であったはずの彼がこんなに黒く染まって……彼を愛し信仰していた人々もきっといただろうに。
私は人間になりたかった。ずっと憧れていた。普通の人間になることが唯一の望みだった。でも、私が本当にやるべきことは何なのか。それは、あの時黒蛇を助けてから、決まっていたことなのかもしれない。
私は維頼くんに刀を下ろすように促すと、一歩前に出る。
「紅羽さん……?」
「ごめんね維頼くん……。私を救ってくれるって言ってくれて、本当に嬉しかった。あなたを信じたことで、恐れずに戦えた。でも、私は自分の務めを果たさないといけないと思うの」
「そんな……」
彼は私を止めなかった。止められなかったのかもしれない。私が彼を真っ直ぐに見据えて、決して揺るがないことを察したから。
「黒蛇……あなたの望み通り、私は最期まであなたのそばにいる。それであなたが救われるなら、私はそれでいい」
「紅羽……誠か、その言葉」
「ええ……。あなたはずっと寂しかったのでしょう?なら、私がそばにいる。もう心配しなくていいわ」
そういって床に膝をつき、黒蛇を抱きしめる。一度は彼を助けたのだもの。最期まで、あなたを助けるのが、私の務め……。
「紅羽……」
黒蛇の声はいつにもなく震えていた。彼は、泣いていた。
「愛するとは、尊いものだな……紅羽。そして何より美しい」
そういって黒蛇は私の頬を撫でる。
「黒蛇?」
「おかしなことだ。……先程まで、そなたと共に死にたいと思っていたのに、今はたまらなく生きていてもらいたいと、そう思うのだ」
「黒蛇……」
「どうか、生きてくれ。この先も……ずっと。我は、そなたの幸せを、誰よりも願っている……」
そういうと彼は維頼くんを見上げる。維頼くんも彼と視線を合わせた。
「……紅羽を頼む」
「ああ、当然だ……」
その言葉を聞くと、黒蛇は安心したかのようにフッと笑った。そしてふとどこかを見つめると、彼は彼自身の話を語り始めた。
「思い出したのだ……我は遠い昔、そなたらが暮らしていた土地の、集落の神社に祀られていた神だった。
しかし、人間共はそのうち信仰を忘れ、我は人間にその怒りをぶつけた。それが神々を怒らせ、奴等は我に死ねぬ無様な蛇となる呪いをかけたのだ」
「そう、だったのね」
「だが、もう過ぎたことだ。……紅羽、そなたが我を闇から連れ出してくれた。そして、そなたからの愛を受け取った。もう心残りなどない」
彼は私を突然抱き寄せた。壊れ物を扱うように優しく。
「愛しているぞ、紅羽」
そこで私の意識は途絶えた。
***
維頼side
突然、紅羽さんが気を失った。龍神はこの期に及んで何かしようとしているのかと思ったが、どうやら違うようだ。
「紅羽さんの、記憶を消す?」
「ああ。紅羽は人間に、完全に戻れるわけではないが、元凶である我が死ねば人間らしい生き方はできるであろう。そのために、鬼としての記憶は不要だ」
「そうか……なら、紅羽さんはここでの記憶を全て失うのだな。お前はそれでもいいのか?」
「我は、構わぬ。紅羽が幸せならば、それで良い」
「龍神……」
「さあ、紅羽を連れさっさと行け。もう二度とここに来てはならぬ」
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