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第七話
しおりを挟む「ヒュ、ウ、私、捨てる?」
「……ん?」
ミアが溜に溜め込んで、吐き出した言葉は、2度聞してしまうほどのありえない言葉だった。
先程、ミアは何と言った?
俺が、ミアを捨てる?
逆はありえると頭の回転が働くが、こっちはない。絶対にありえない。
「ミ、ミア?どこでそんな言葉を覚えたんだ?」
俺はミアの前で、ミアを捨てるなんて話題を出した覚えはない。それに、俺はミアが望まない限り、ミアを手放す思いもない。
「ヒュ、ウ、私、邪魔?」
うるうると、今にでも涙をこぼしそうな眼でミアがこちらを上目遣いで見る。
やばい、かわいい。死ねる、俺、今死ねる。
「邪魔じゃない。ミアが望まない限り、俺はミアを離さない」
たとえ、ミアが望んでも、この村の外にミアを出すつもりは一切ない。
「でも、ヒュ、ウ、他の人」
「さっきのことか?さっきは客人が来ていただけだ」
うん、どこをどう間違えてもアイツらのためにミアを邪魔に思う事など一切ない。
「その人、女の人」
「女性じゃない。全員男だ。それに、もう行くのを辞めたから、もう行かない」
俺は計画から抜けたから、もうアイツらと会う予定はない。向こうが会いたいと言っても、ミアを犠牲にしようとした奴らと一緒に居ようとは全く思わない。
「ほんと?」
「ああ。言葉で言うことしかできないが、本当だ」
こうなるんだったら、誰でもいいからこの村の男を1人でも連れて行けば良かった。証明できないのが悔やまれる。
「俺は、もう2度と、ミアに嘘はつかない」
これは俺の中のケジメでもあり、絶対に破らない約束だ。
前のように、約束を破ることなんて絶対にしない。
ミアとの約束を守る為だったら、俺は神だろうが、悪魔にだろうが関係ない、魂を売るだろう。
「私、ヒュ、ウ、信じ、てる」
「ああ」
やばい、涙が出そうだ。
この村に戻って来てから今まで信じてるなんて前向きなことを言わなかったミアが、信じてくれている。それが何よりも嬉しいし、幸せに思う。
「ありがとう、ミア」
俺を信じてくれたこともそうだが、嫉妬してくれたことも、心配したことも、全てが愛おしく思う。
きっと、きっと、俺は狂っているのだろう。
ミアが絡むと、全てが嬉しいし、愛しく感じる。
ミアの心の動きを知ることができて、幸せだと思っている。
俺とミアの邪魔をする奴は絶対殺すし、ミアを傷つけた奴を許すつもりはない。
あの客人どもだって本当は殺すつもりだった。
ミアを傷つけた奴らの血が一滴でも流れている奴らを生かすつもりはなかった。
でも、利用価値があった。
だから生かした。
ただそれだけでしかない。
俺がそう思っているのを、アイツらもアイツらで勘づいている。
それでも、アイツらは国内外に知らない者など赤子しかいない程に有名な俺を頼るしか方法がなかった。
俺は、アイツらに利用価値とミアが絡むと御しやすくなる。生かしておこうと考える。
アイツらはそれを利用し、自らに価値があり、アイツらが考えた計画に俺が参加する価値を示しただけ。
俺と同じく、俺に利用価値があるから利用しただけだ。
そして今回、アイツらの計画の利用価値は無になり、アイツら自身の利用価値も巫山戯た発言で地に落ちた。
それでいながら、俺がアイツらを殺さず、名を貸した理由は、アイツらの計画が成功すると、ミアを傷つけた奴らへの復讐になり、俺達がもっと生きやすくなるから。
それ以上も以下もなかった。
ミアが幸せに生きる為の、ただの駒でしかないのだ。
「だから、精々ミアへの贖罪の為に動け。そして、俺への借りをきっちりと返せ」
「ヒュ、ウ?」
「何でもない、ミア。パンケーキを焼くから待っててくれ」
ぼそりと呟いたが、近くにいたミアに聞かれたらしい。
ミアが何かあったのかと伺いを立ててくるが、ミアには少しも関係ない。
俺が言った言葉に、ミアは目を輝かせていただけだった。
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