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第十話
しおりを挟むああ、音が聞こえる。アイツが来る。
「ミア、リズ達と共に部屋の中へ。4人ともミアを頼みます」
「何かあるんだね、分かった。ミアちゃん、おばさん達と中に行こう」
「外は寒くて凍えそうだもの、入りましょ?」
「風邪をひいてしまうからね。ささっ、入った、入った」
「ミア様、さあ、中へ。ヒューズ様は大丈夫でいらっしゃいますから」
リズが俺に頷き、ミアを素早く家の中に入れてしまった。
リズ達がついている限り、ミアは安全だ。
マーク達、仲良し3人組には嘘をついてしまったが、この村の女衆は森に1人で入っても大丈夫なほどの腕を持っている。
弓矢だけじゃない、銃、剣、暗器、体術、等々何か1つは必ず秀でたものを持っていることが多い。
この村の人間は、皆、戦争に行っても充分に戦う技量と必ず帰ってこれるだけの勘がある。
言ってしまえば、この村の大人だけで、中規模程度の国の軍隊を壊滅状態にすることができる。
だから、駄目だったのだ。
いくら暗部の人間を送り込んでミアを攫おうとしても、必ず始末、処理されてしまう。
俺が手を出したこともあるが、大体はこの村の大人によって潰されていた。
俺がこの目で、きちんと山の中にある処理場で、処理されていたのを確認したのだから間違いはない。
ミアを攫うには俺だけではない、この村の大人を無力にしなければならない。
よって、子供に手を出した。
この村の子供を攫い、この村の大人が手を出せないようする。
そうして俺宛に連絡を寄越すだろう。
『子供はミアを引き換えだ、ミアを引き渡さなければ子供を殺す』と脅すに違いない。
俺がミアを取った時は『子供を返して欲しくば、俺とミア、村人どもが協力しろ』と子供の指か耳か、生死に関わらない所を切り取り、ミアに送りつけるはずだ。
俺が子供を取った時は『ミアを返して欲しければ、俺と村人が協力しろ』との連絡を寄越すだろう。
彼らの中では、俺が頭を殺す、もしくは人質に取って、取られたものを救い出すという計画を練ることができることを考えていないらしい。
馬鹿だと、嘲笑ってしまいそうだ。
俺がリズ経由でアイツに手紙を送って、誘き出すことくらい考えればいいのに。
アイツらの中で、リズは、エリザベスは未だ味方なのだろう。
あれだけのことをしておいて、リズは自分達の味方だと言い切っている、脳内がお花畑の者達は何とも滑稽で滑稽でしょうがない。
そんな脳内お花畑を味方として飼っておかないといけないアイツには哀れみしか感じない。
馬がこちらに走ってくる音がする。
元婚約者であるリズからの手紙を受け取ったアイツは、愛しき彼女から久方ぶりに来た手紙を読んでみると、青天の霹靂のことばかりで頭を抱えただろう。
上手く手綱を取れなかったことに悔しさを感じているのか、それとも脳内お花畑と同じ考えをして俺達を利用しようとするのか。
お前は、どの選択肢を取り、どんな未来をその手で掴む?
俺の名だけを利用し、王位簒奪を成功させたうえで愚王、もしくは賢王と呼ばれる未来。
俺の名を利用しても王位簒奪を失敗し、逃げ去る、もしくは、命を取られる未来。
部下を殺し、王位簒奪を諦める未来。
俺にこの場で命を奪われる未来。
俺を再び、ミアやこの村の者達と共に仲間にして王位簒奪をする未来。
さあ、お前はどんな未来を取る?
「なあ、第二王子殿下?」
「……ヒューズ」
俺の目の前には、ミアを散々傷つけ、この村にゴミを捨てるかのように放り去って行った第一王子と同じ姿をした青年が立っていた。
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