綺麗で優しい花々と小さな鳥籠

紅花

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第十二話

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「……チッ」
「怠かった」

 処理は最も簡単にできた。

 戦闘経験のない貴族と、戦闘経験はあるが俺よりも弱い傭兵。命を奪うことくらい何の問題もなかった。

 子供達も簡単に救出できた。

 勿論、子供をアイツに任せて、子供達がいないところで処理した。

 アイツはアイツで子供達を村の男衆に任せて戻ってきた。

 まあ、戻ってきた時にはアイツらの命は事切れていたが。

 問題というか、面倒くさいのはそこからだった。

 血のついた雪と、事切れた身体を処理場に持っていかないといけなかったから。

 服に血がつかないよう、証拠も残さないようにするのは物凄く面倒くさい。

 俺らは協力しながら処理場へとアイツらを埋めた。

 これでアイツらを養分として、春にはきちんと処理されているだろう。

「春が楽しみだな」
「春?」
「こっちの話だ」

 アイツはここが処理場なんて知らない。

 この村の闇なのだから、コイツが知る必要ないし、知られてはいけない。

「森は春と秋が1番鮮やかだからな。近いのは春だし、春には1つ約束をしているから楽しみなんだよ」
「あっそ、どうでもいい」

 そんな返事をするのであれば「なら、聞くな」と言ってしまいたいが、コイツはこの国において上から3番目くらいに地位が高い。

 そんな奴に、気軽に言ったらどうなるか分かったもんじゃない。

「これで膿が少しでも出せてたらいいが」

 国の膿は少しは吐き出せたと思う。

 しかし、この国の権力者どもを殺さない限り、膿はなくなるどころか、できるばかりだということは、学のない俺でも分かることだ。

「彼女の傷も、浅くなればいい」

 彼女が、リズがコイツを受け入れられるようになるかはまた別の話だろう。

 コイツが、あのクズと同じ顔をしていなければ良かったが、それは生まれ持ってきてしまったものだからしょうがない。

 まあ、ミアのように、少しずつ、少しずつ、時間をかけることで治ってくる傷もあると思う。

「少しずつは治っていると思うぞ。ミアを含めた、村の奴らとも話ができるようになっているからな」
「それは良かった。彼女が幸せなら、俺はそれでいい」
「……」

 何とも言えない発言をされた気がする。

 俺も同じ台詞をどこかで言ったような覚えがある。

「自分のことも考えてやれよ」
「そう、だな」

 俺はコイツが嫌いだ。

 何故なら、コイツと俺は似過ぎているから。

 大切な人との約束を守れなかったことも、大切な人へと向ける感情も、考えも全て。

 俺をそのまま写しとったかのような人生を歩んでいるコイツは、俺の人生を見ているかのようで嫌になる。

 俺は、コイツと初めて会った時の言葉が印象深すぎてよく覚えている。

『悪魔同士仲良くしよう』
 そう言って手を差し出された。

 その時にはもう、俺もコイツも悪魔と言われていた。

 黒髪赤眼の俺は最悪最強の黒騎士様、もしくは悪魔騎士として。

 金髪青眼のコイツは、血も涙もない悪魔王子として。

 悪魔の名が一人歩きしていた。

 俺達は血だって涙だって、大切な人だって感情だってある、ただの人間なのに。

 悪魔ではないのに、俺達は悪魔としてこれからの人生を歩むことになってしまった。

 歩んできた人生こそは違う。
 生まれも、血も、過去も、全く違う。

 それでも、コイツと俺はどこか似た闇に堕ちている。

 抜け出せない、変われない、深い深い闇に。

「……ここらでお別れだ」
「ああ。俺はあっちに戻るが、彼女を頼む」
「面倒だけは見てやる」

 コイツと俺の、同じ闇に堕ちている者としての仲だ。必要最低限のことだけはしてやろう。

「俺が参加しないことで失敗して、知らない所で知り合いが死ぬのは良心が痛む。だから、俺の名は使っていい」
「感謝する」
「感謝は成功させてからだ。これはミアの為でしかない。分かったら、ミアに2度と関わらないことだな」

 俺は森の入り口でアイツと別れた。

 取り敢えず、家に帰らないと。

 ミアとの約束だから。
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