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第十四話
しおりを挟む「ヒュウ!」
「ミア、おはよう」
事件があった次の日、ミアが勢いよく階段を駆け降りて俺のことを探しに来た。
そんなに階段を急いで駆け降りたら、転んで怪我をしてしまうかもしれない。
怪我をしないように、階段を坂にしてしまおうか。
坂にしたら転んでもミアが階段ほど大きな怪我をする可能性は低くなる。
ミアが怪我をすることだけは避けなくては。
「朝ごはんは、何がいい?」
「好きなの?お芋、チーズ!」
「分かった。芋の上に蕩けたチーズを置いて焼こうな」
「うん!」
嬉しそうなミアの顔が可愛い。一生見てられる。
目を覚ましたミアは、今のミアだ。昨日見た昔のミアは、神様が一瞬だけくれた機会だったのか、もしくは治る兆候だったのかもしれない。
どちらにせよ、俺があと望むことはミアが生きて幸せになることだけ。
その隣に俺がいなくても構わない。
目を輝かせて喜んでいたミアだったが、急にふと焦った顔に戻ってしまった。
「違う!」
「朝食、別のにするか?」
「違う!」
一生懸命否定するミアが可愛くて、ついつい分からないふりをしたくなるが、これ以上分からないふりをしたら、泣き出してしまうかもしれない。
そろそろ止めないとな。
「冗談はここまでにして、何かあったのか?」
ミアが何回も頷いているが、ミアが寝ている間にこの家の中に侵入者が入った気配も形跡もなかった。
先程、勢いよく階段を駆け降りていたことからも分かるように、身体的な問題があったわけではない。
俺の知らないところ、ミアの精神的な方で何か、ミアにとってそれだけ重大なことが起きたのだろう。
「聞いた方が良いか?」
もう一度、縦に首が動かされる。
「分かった。椅子に座ろう」
キッチンの火を消して、壊れ物に触れるかのように彼女をそっと抱き上げてソファーに連れて行く。
俺は力が強いから、ミアを傷つけてしまう可能性があるため、大切に触れる必要がある。
彼女をソファーに座らせて、俺はその隣に座った。
「話せるか?」
彼女は、こくりと頷いて、言葉を詰まらせながらも話を始めてくれた。
「夢、見た。たくさんの人、戦う?」
「未来の夢か?」
「王様、危なかった」
語ってくれるミアには悪いが、俺は数日前までその話に参加していたし、王族がどうなろうとあんまり興味はない。
「未来の夢を見れるようになったんだな。少し、前進したなぁ」
俺は、彼女の頭をぽんぽんと撫でる。
未来が見えるようになったのなら、今までの彼女に戻りつつあるということだ。
「未来の夢、欲しくない」
「ミア?」
ぽつりとミアが呟いた。
顔は俯いていて見えないが、声は落ちていた。
「未来の夢、見たらまた連れて行かれる。見えなくなったら、酷いことされる」
「ミア」
「ヒューも、未来見えない私を、捨てる?」
顔をあげ、涙で潤んだ目で見られる。
可愛いミア、俺がそんなことするわけない。
「未来なんて、夢なんて関係ない。ミアはミアだろ?」
俺の言葉でミアがはっとした顔になった。
「なあ、ミア。覚えているか?」
本当はもう少しだけ、後にする予定だったのにな。
「昔、花畑でした約束のこと」
幼い俺とミアは、二人で手を繋いで花畑に行った。
その中から、俺はミアの一番好きな花を編み、指輪にしてミアと約束をした。
俺は、ポケットから箱を取り出し、あの時のように、ミアの前で片膝をつく。
「ミア、俺は未来が見える巫女じゃなくて、ミアそのものが欲しい。だから、俺とずっと一緒にいてほしい」
ミアの手を取って、優しく、でも力強く握る。
ミアの手は緊張で冷たくなっていた。
「今度こそ、ミアを絶対に守るから、ミアも俺と一緒にいてくれないか?」
ミアは、昔のように、幸せそうに笑って一粒だけ涙を零した。
それが彼女の明確な答えであり、俺を幸せにしてくれる源だった。
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