綺麗で優しい花々と小さな鳥籠

紅花

文字の大きさ
17 / 18

七夕編1話

しおりを挟む
「見て!変な木が立ってる!」
「ああ、そう言えば旅人が言ってたな」
「旅人さん?」
「ああ、ミアは見なかったか?」

 今日はざわざわと騒がしい。

 市場もいつもよりも人が多かった。

 目敏く笹を見つけてしまったミア。

 笹を指さして笑うミアも、首を傾げるミアも可愛らしい。

「遠い遠い場所にある東の国の文化らしい。タナバタ?だったかな。こっちの言葉で言いやすいように変えると星祭りだな」
「遠くから来たんだね」
「そうだな。この細長い紙に願い事を書いて、ササに結んだら願い事が叶うらしいぞ」
「ほんと!」
「ああ」

 幸せそうに笑うミアの頭をくしゃくしゃと撫でる。

 ミアが幸せそうなことが何よりも嬉しい。

「星祭りは、恋人が年に1度だけ会える日らしい」
「年に1度は悲しいね」
「だな。年に1度だけしか会えないのはすごく悲しい。けど、会えない日が長い分、会える日を大切に思えるのかもしれないな」

 俺がそう言うと、ミアはクスクスっと笑った。

「ヒュウって案外ロマンチックだよね」
「そうか?」
「うん!」

 俺がロマンチックだか何だかは正直どうでもいい。

 ミアが喜んでくれるなら何でもいいのだ。

「参加してみるか?」
「いいの?」
「やってみたいって顔してるぞ」

 じっと見つめて、やってみたいと言わんばかりの顔をしている。

 まあ、たまには、こんなのもいいだろう。

 ミアにだって自由に願いたいことはある。

「紙は……あ、リズさん達だ!おーい!」

 ミアが大きく手を手を振っている先を見ると、リズが頭を下げていた。

 頭を上げたリズは、連れと共に俺たちのもとに歩いてくる。

「リズ、ルイ、元気そうだな」
「ミア様、ヒューズ様も。また、俺に稽古をお願いします」
「ああ、夕方ごろにな。涼しくなってからの方が身体の負担も軽いはずだ」
「はい。夕刻に参ります」
「私も参りますね」
「ああ、ミアを頼む」

 リズが来てくれるのならば、ミアの相手は大丈夫だろう。

「ところで、ミア様は何をお探しで?」
「紙を探してるの。星祭り、やってみたくて!」
「それはこちらですね。ちょうど机も空きましたし、書きましょうか?」
「うん!」

 リズは籠から細長い紙を取り出し、ミアに渡した。

「お願い事を書けばいいんだよね?」
「ええ。前日祭にササに飾って、祭り本番でランタンに短冊を括り付けて空に飛ばすんです」
「今日は前日祭?」
「いいえ。祭り当日ですが、まだ時間ではないのでササに飾っているんです」

 そう言えば、昨日から騒がしかった。

「今からでも、間に合う?」
「本番でランタンと共に飛ばせば大丈夫ですよ」
「ランタンの時間って?」
「夜ですね。すっかり暮れてしまった頃にあげると言ってました」

 今はおやつの時間だ。

 日が暮れるまでまだまだ時間がかかる。

「ヒュウ」
「一回家に帰るか、このまま村をブラブラするかどっちがいい?」
「村にいたい」
「分かった。カフェにでも行くか?」
「うん、行く!リズさん達も一緒?」

 リズの方に目をやり、首をこてんと傾げたミアは、誰よりも可愛かった。

「是非」
「やった!ヒュウ、行こう!」

 俺の手とリズの手を取り、勢いよく引いて前に行こうとする。

「ミア、落ち着け」
「ミア様、カフェは逃げませんよ。それにあまり急ぐと怪我をなさいますから、落ち着いて参りましょう?」

 リズの言葉を聞いたミアは落ち着いて、淑女のように歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

行かないで、と言ったでしょう?

松本雀
恋愛
誰よりも愛した婚約者アルノーは、華やかな令嬢エリザベートばかりを大切にした。 病に臥せったアリシアの「行かないで」――必死に願ったその声すら、届かなかった。 壊れた心を抱え、療養の為訪れた辺境の地。そこで待っていたのは、氷のように冷たい辺境伯エーヴェルト。 人を信じることをやめた令嬢アリシアと愛を知らず、誰にも心を許さなかったエーヴェルト。 スノードロップの咲く庭で、静かに寄り添い、ふたりは少しずつ、互いの孤独を溶かしあっていく。 これは、春を信じられなかったふたりが、 長い冬を越えた果てに見つけた、たったひとつの物語。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...