幽閉塔の彼女と僕

紅花

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攻められない理由

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 何故、他国からこの王国が攻められることがないのか。
 この王国に住む人間の中にも、考えたことがある人間がいたのだろう。しかし、長い年月の間、その理由が判明したことがない。どこかの人間が憶測で理由を書いた本なら数冊存在している。そして、僕はその理由の憶測が書かれた本を読んだことがある。
『竜神がこの国にいるから』
『王族が勇者の血筋であり、その力に他国が慄いているから』
『小国である王国を襲っても旨みが少ないから』
 色々と書かれていたが、どれも正解ではなかった。
 竜神はこの国にはいないし、王族が持つ、勇者としての力はとても弱い。竜神とペアを組み、竜神の加護を得て魔法を使える他国の勇者の方が絶対に強い。
 他国にかかれば勇者と竜神だけでこんな小国はすぐに潰すことができる。旨みがあるかどうかは分からないが、この国の民や領地、技術を手に入れれるのであれば旨みは少しはある。
 どれも攻められない理由にはならなかった。
 しかし、当たっている本が1冊だけあった。
『この王国には、月華草が存在するから』
 月華草はこの国でしか見つからない。
 そして、月華草がある限り、絶対に他国はこの王国には勝てない。それは他国からしてみれば常識であり、多くの人間が誰しも月華草を求めているから、この国は攻められない。
「月華草は本当に存在するの?生きている状態では誰も見たことがないのよ。だったら他国が攻めてくるかもしれないじゃない」
「月華草は存在するよ」
 彼女の疑問も最もだが、月華草を見ている僕からすると存在するとしか言えない。
「伝説だって言われているのよ?ルークは見たことがあるの?」
「あるよ。僕の髪や君の瞳みたいな色の普通に咲いている花だよ」
 ただ、月夜にしか咲かないため見ることが難しい花ではある。
「嘘でしょう?月華草は王都では幻の花って呼ばれているのよ」
 幻の花……ああ、そうか。
「王都では咲かないよ。……あれ?一輪だけある。全部消した筈なのに。消しておこう」
 月華草の存在をざっと確認してみると、王都の方に一輪だけ存在していた。300年前に全部消したはずなのに。
「誰かが押し花にしていたんだね。それが今まで残っているなんて」
 可哀想だという感情しか湧かない。あいつらの元で生きるなんて可哀想だ。
「待って、消しては駄目」
「何故?花は咲き誇り、枯れるのが自然の摂理。それが花の誇りなんだよ。死んでも形が残るのは苦しいことだ」
 人間で例えると、死んでも身体が腐らずに残ってしまうことと同じだ。
「王都のものは役割があるの。だから消しては駄目なのよ」
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