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フロイデンに連れていかれた場所は、普段待ち合わせ場所としてよく使っている裏庭だった。
エルケやクラーラとの思い出が詰まったこの場で苦い思い出を作らなければならないと考えると気がめいりそうになる。
と、周りに誰もいないことを確認したフロイデンはこちらを向いて。
「何で連れて来たのか、分かってるな?」
「別れようか迷っていたって言葉についてですよね」
「そうだ。あれはどういうことだ」
「どういう事って、言葉の通りですが……」
わざわざ聞かないと分からない事でも無いと思うのだが、現実を認めたくないのだろうか。
それはともかく、さっきは遠回しに別れを告げるような事を言ったが、今回はきっぱりと別れを告げよう。
自分自身に言いつけるつもりで考えていると、私を鋭い視線で睨み付けていたフロイデンが口を開く。
「俺が他の女に囲まれていたのがそんなに嫌だったのか? 王族なんだから人が寄って来るのはいつもの事だろ」
「寄って来ただけの人の肩を抱く必要はありましたか?」
「それは……」
言い返せなくなったらしく一瞬目を泳がせた彼は深々と溜息を吐く。
「あれは悪ふざけでやっただけだ。そんなにあれが嫌だったんならもうしねえよ」
「いえ、あなたが他の令嬢に手を出すのはもう気にしないので大丈夫です」
「……どういうことだ?」
何を言おうとしているのか察したらしく、彼は少し焦りを見せる。
何年も付き合って来たが、この人が焦っているところを見るのは初めてだなとどうでも良いことを考えながら、私は偽りの無い言葉を放つ。
「私はあなたとの婚約を破棄します。王位を継承したら捨てるおつもりのようですし、そんな惨めな思いをするくらいなら一生独身で構いません」
「あ、あれは……そう言う事じゃなくて……」
あの会話の事を私が聞いていたとは思っていなかったらしく、フロイデンは顔を真っ青にして意味を持たない言葉だけを口にする。
さて、そろそろ空腹も絶頂に達しようとしている。これ以上、下らない会話をするのもバカらしいし、早いところ食堂に行くとしよう。
「それでは、私はこれで失礼します。友人が待っていますので」
そう言って一礼した私は、踵を返そうとするが――フロイデンは腕を鷲掴みにして引き留める。
まだ何か言うつもりなのかと振り返れば、焦っているのがよく分かる彼の目が私だけを見ていた。
「俺は……お前のことを愛している」
「お腹が空いてるので放して貰えませんか」
「俺よりも飯の方が重要か?」
「はい」
即答するのと同時、彼は一瞬だけ鬼の形相をして――
エルケやクラーラとの思い出が詰まったこの場で苦い思い出を作らなければならないと考えると気がめいりそうになる。
と、周りに誰もいないことを確認したフロイデンはこちらを向いて。
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「別れようか迷っていたって言葉についてですよね」
「そうだ。あれはどういうことだ」
「どういう事って、言葉の通りですが……」
わざわざ聞かないと分からない事でも無いと思うのだが、現実を認めたくないのだろうか。
それはともかく、さっきは遠回しに別れを告げるような事を言ったが、今回はきっぱりと別れを告げよう。
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「……どういうことだ?」
何を言おうとしているのか察したらしく、彼は少し焦りを見せる。
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「あ、あれは……そう言う事じゃなくて……」
あの会話の事を私が聞いていたとは思っていなかったらしく、フロイデンは顔を真っ青にして意味を持たない言葉だけを口にする。
さて、そろそろ空腹も絶頂に達しようとしている。これ以上、下らない会話をするのもバカらしいし、早いところ食堂に行くとしよう。
「それでは、私はこれで失礼します。友人が待っていますので」
そう言って一礼した私は、踵を返そうとするが――フロイデンは腕を鷲掴みにして引き留める。
まだ何か言うつもりなのかと振り返れば、焦っているのがよく分かる彼の目が私だけを見ていた。
「俺は……お前のことを愛している」
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