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14話 大臣視点
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エミエルの座る席の対面に用意された椅子に腰掛けた私は、少し寂しくなった髪を撫でながら問い掛ける。
「何で呼ばれたのか分かるな?」
「……分かりません」
本当分からないような顔をしていということは、最早サボることは当たり前のこととでも思っているのだろうか。
私はイラつきながら不安を露にするエミエルに数か月前から上がっている報告を突き付ける。
「お前が仕事サボって遊び歩いてると宮廷魔術師たちから報告が上がった。一体どう言う事だ?」
「サボってなんて――」
「しらばっくれるな!」
明らかに動揺している。これは黒で確定だろう。
私がそう確信するのと同時、エミエルはサボって何が悪いとばかりの不満げな表情を浮かべ、思わず舌打ちして。
「もういい。お前は追放だ。城から出て行け」
「追放……ですか」
「ああ、そうだ。平民出身の女なんざもう二度と雇わない」
俯いて黙り込んだエミエルに私は流石に追放は効いたかと内心で笑みを浮かべるが、微笑を浮かべていることに気付いた私は気味の悪いものを感じながら。
「おい、何か言ったらどうだ?」
「もう働かなくて良いんですか?」
「まあ、そうだな」
「もう、騎士団の予算も計算しなくて良いんですね?」
「結界を一人で管理するのも、侵入者を一人で迎撃するのも、今日で終わりなんですね?!」
「はぁ?!」
その爆弾発言に思わず変な声が出た私をエミエルは気にする様子無く部屋を出て行った。
騎士団の書類を? 結界の管理を? 侵入者の迎撃を?
……いや、落ち着くんだ。貴族や宮廷魔術師たちが口を揃えてあの女をサボりと言っていた。きっと私が詳しく調べていないと見て鎌を掛けたのだろう。
私はそう考えを改め、後ろで待機する近衛兵にあの女の処理を任せ、仕事の続きをするべく部屋を出た。
☆
今日提出された書類を片付け終えた私は紅茶を片手に窓辺に近付く。
仕事を終えた後にここから眺める景色は最高だ。何年経っても飽きることは無い。
空には赤い夕陽に照らされる鳥型の魔物が飛んでいるのが見え、もしも結界が無かったらなんて少し恐ろしいことを考える。
魔物は私の視線に気付いた様子で空中に留まると、やがてこちらへ向きを変えて飛んで来る。
珍しい行動に驚きながら紅茶をすすり、ぼんやり眺めていると――
「ぬあ?!」
結界の効果範囲内に入ったにも関わらず接近を続ける魔物に、私は慌てて窓から離れた。
直後、窓をいとも容易く破壊して侵入した魔物は三メートルはある翼を広げて見せると甲高い鳴き声を上げ。
「どうしました?!」
そんな慌てた声と共に室内に入った二人の近衛兵は、魔物に気付くと素早く私の前へ立ち、それぞれの得物を構える。
「お逃げ下さい! 我々が倒しますので!」
「あ、ああ。任せたぞ」
人生で初めて味わう恐怖で震える足に鞭を打って部屋から逃げた私は、音を聞き付けて駆け付けた騎士たちに近衛兵二人の援護をするよう言いつけ、思わずその場に座り込んだ。
この城に設置された結界は例えドラゴンであっても追い返す代物だったはず。それなのに、一体なぜ低級の魔物が容易に通り抜けているんだ?
そんな混乱が脳内をかき乱す中、数時間前のエミエルの言葉が再生された。
――結界を一人で管理するのも今日で終わりなのかという、私が嘘と断定した言葉が。
「何で呼ばれたのか分かるな?」
「……分かりません」
本当分からないような顔をしていということは、最早サボることは当たり前のこととでも思っているのだろうか。
私はイラつきながら不安を露にするエミエルに数か月前から上がっている報告を突き付ける。
「お前が仕事サボって遊び歩いてると宮廷魔術師たちから報告が上がった。一体どう言う事だ?」
「サボってなんて――」
「しらばっくれるな!」
明らかに動揺している。これは黒で確定だろう。
私がそう確信するのと同時、エミエルはサボって何が悪いとばかりの不満げな表情を浮かべ、思わず舌打ちして。
「もういい。お前は追放だ。城から出て行け」
「追放……ですか」
「ああ、そうだ。平民出身の女なんざもう二度と雇わない」
俯いて黙り込んだエミエルに私は流石に追放は効いたかと内心で笑みを浮かべるが、微笑を浮かべていることに気付いた私は気味の悪いものを感じながら。
「おい、何か言ったらどうだ?」
「もう働かなくて良いんですか?」
「まあ、そうだな」
「もう、騎士団の予算も計算しなくて良いんですね?」
「結界を一人で管理するのも、侵入者を一人で迎撃するのも、今日で終わりなんですね?!」
「はぁ?!」
その爆弾発言に思わず変な声が出た私をエミエルは気にする様子無く部屋を出て行った。
騎士団の書類を? 結界の管理を? 侵入者の迎撃を?
……いや、落ち着くんだ。貴族や宮廷魔術師たちが口を揃えてあの女をサボりと言っていた。きっと私が詳しく調べていないと見て鎌を掛けたのだろう。
私はそう考えを改め、後ろで待機する近衛兵にあの女の処理を任せ、仕事の続きをするべく部屋を出た。
☆
今日提出された書類を片付け終えた私は紅茶を片手に窓辺に近付く。
仕事を終えた後にここから眺める景色は最高だ。何年経っても飽きることは無い。
空には赤い夕陽に照らされる鳥型の魔物が飛んでいるのが見え、もしも結界が無かったらなんて少し恐ろしいことを考える。
魔物は私の視線に気付いた様子で空中に留まると、やがてこちらへ向きを変えて飛んで来る。
珍しい行動に驚きながら紅茶をすすり、ぼんやり眺めていると――
「ぬあ?!」
結界の効果範囲内に入ったにも関わらず接近を続ける魔物に、私は慌てて窓から離れた。
直後、窓をいとも容易く破壊して侵入した魔物は三メートルはある翼を広げて見せると甲高い鳴き声を上げ。
「どうしました?!」
そんな慌てた声と共に室内に入った二人の近衛兵は、魔物に気付くと素早く私の前へ立ち、それぞれの得物を構える。
「お逃げ下さい! 我々が倒しますので!」
「あ、ああ。任せたぞ」
人生で初めて味わう恐怖で震える足に鞭を打って部屋から逃げた私は、音を聞き付けて駆け付けた騎士たちに近衛兵二人の援護をするよう言いつけ、思わずその場に座り込んだ。
この城に設置された結界は例えドラゴンであっても追い返す代物だったはず。それなのに、一体なぜ低級の魔物が容易に通り抜けているんだ?
そんな混乱が脳内をかき乱す中、数時間前のエミエルの言葉が再生された。
――結界を一人で管理するのも今日で終わりなのかという、私が嘘と断定した言葉が。
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