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24話 大臣視点

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 まさかあんなことを言い放った私を、こうもあっさりと許してしまうとは驚いた。
 おかげで何とも言えないもやのような物が残る事になってしまったが、今はとにかく王都へ戻ることだけを考えよう。
 報告が確かなら騎士団の上層部が仕事もせずに遊び歩いていたせいで騎士へ命令が出ず、それにより全く動けない状態なのだと言う。
 となると城内を巡回している騎士と宮廷魔術師が何とかする必要があるのだが……。
 前者は数の暴力には叶わないらしく、後者は今までエミエルに全てやらせていたせいで味方を誤射したりと散々なことになっているらしい。
 流石に王は近衛兵や騎士を部屋の周辺に設置させているようだが、それが破られるのも時間の問題だろう。
 
 さて、私は一体どうするべきなのだろうか。
 恐らく今戻れば行きとは違って馬車の中にまで暴徒が入り、最悪殺されることになるだろう。
 死ぬ覚悟は出来ているが、せめて自分の尻拭いは自分でしてから死なせて欲しいものだ。
 
「そんなに戻らないとダメですか?」

 ずっと無言だった近衛兵の唐突なその言葉に、私は思わず振り返る。

「私は大臣補佐なのだぞ? 戻るのは義務だろう」

「あなたを変革の道具としてしか使っていなかった国の義務ですか?」

「……ああ、そうだ」

 私は国にとって、王にとって替えの効く道具に過ぎないのは否定のしようがない。
 ただ、最初から捨てる気で使われていたというは悲しいが。
 すると近衛兵は大きな溜息を吐くと、呆れたような表情で。

「あなたの捧げた忠誠をあの王はあなたへ仇という形で返したんですよ? 恋愛で言ってしまえば振られたも同然なんです」

「そうかもしれないが……」

「それにあの王が真に目指しているのは実力主義なんて物では無く、言わば王の下の平等です。例え相手が貴族であっても関係無く命令出来るようにしたいだけなんですよ」

「……」

「目を覚ます時です。あの元魔術師が言っていた通り、逃げるのが勝ちなんですよ」

 必死に訴えかける近衛兵に、私は気が付けば涙が湧いて現れた。
 ああ、そうだ。確かに逃げるが勝ちだ。最早、あの国が内戦状態に陥るのも、王が斬首されるのも、時間の問題だろう。
 ……私は臆病だ。
 私は胸ポケットから取り出したハンカチで目頭を押さえながら、悲し気な表情を浮かべる近衛兵に。

「まさか、名前も知らないお前に諭されるとはな。……お前は逃げる先を考えているのか? 候補はどこだ」

 一瞬驚いた様子で目を見開いた近衛兵は、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべると。

「そうですね、北のスパパと呼ばれる街なんて良いんじゃないですか? あそこは治安も良いですし景色も綺麗ですから」

「そうか。なら、そこへ行くとしよう。……待て、エミエルに礼を言わなければならないな」

 私は胸に溜まり続けていた物から解放されたような、そんな爽快なもので満たされながら、元来た道を戻った。
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