「呪いの子」と蔑まれてきた私と婚約者の幼馴染、一体何が違うの?

きんもくせい

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第5話・悪意

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アマンダはグレースの腕を軽くとりながら、わざとらしい猫なで声で話しかけた。
「突然の誘いだったのに、一緒に組んでくれてありがとう!」
グレースは一瞬ためらいながらも、小さく首を横に振り、「いえ……。私の方こそ、ありがとうございます」と控えめに答える。

「んーもう、グレース様って本当に遠慮がち。でも魔法の腕器用なんでしょう?……ただ、呪いって移ったりしないよねぇ?ただでさえ私の心臓には呪いがあるのに、その肌までうつっちゃったらたまんないわあ」

その声音の陰にちらりと毒が混じる。すぐ後ろからリアムが、鼻先で笑いながら言葉を挟んだ。

「心配ないさ、アマンダ。君がもし呪われたって、僕が守ってあげるよ」

教室の後ろからクスクスと笑い声が聞こえ、生徒たちの何人かは露骨に眉をひそめた。

「ああいうのと組むの、ほんとご愁傷さま」「あんな見た目じゃあね……」

グレースは長い前髪の奥から俯いて教師のほうへと視線を動かし、気配を薄くして自分の立ち位置を確かめた。

リアムとグレースは、6つの頃からの婚約者同士だ。けれど、両者の間にはいつも一人の女の子が居た。

アマンダ・ミューテッド。茶色の巻毛に大きな瞳。庇護欲をそそる愛らしい容貌には、グレースと同じ“呪い”が刻み付けられている。
グレースの呪いが外側に現れているとするならば、彼女の呪いは極々内側。時折心臓が痛むらしいそれを、リアムは大層哀れがっていた。
───彼がグレースの心配をしたことなんて、一度だって無かった。
あるのはいつも、侮蔑と嫌悪だけ。醜いものが大嫌いで、美しいものが大好きな彼にとって、アマンダとグレースはちょうど両極端な“指標”だった。


「先生、ペアが決まりました」
リアムが声を張ると、教師は淡々とした表情で頷いた。「ロイペスト君、ミューテッド嬢、ナイヴァバーン嬢――準備はいいですね。規定どおり、手順を守りなさい」
アマンダは背筋をぴんと伸ばして、「はいっ、見ててください!絶対うまくやりますから!」と無邪気な声を響かせる。リアムはカリスマめいた余裕を見せて「僕に任せておけば安心さ」とウィンクし、グレースには視線を戻そうとしない。

魔法陣の中心に三人が立つと、淡い光が床に集まる。グレースは静かに両手を重ね、誰にも聞こえない小さな声で呪文を口ずさむ。背中には、冷たい視線と、独特の孤独感が重くのしかかってきた。
周囲の囁き――「近くにいると、呪われそう……」「魔法が混ざると不吉じゃない?」――それすら、今は遠い水音のように感じていた。
アマンダが一歩先に立ち、「よろしくね、グレース様」と、振り向きざま、グレースにだけ冷たい視線を落とす。

それでも、グレースは懸命に気を静めた。誰にも見えない場所で、誰よりもまっすぐな意志を、彼女だけは護っていた。
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