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第十一話・破綻してる

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「う、嘘?何言って…」
「全部嘘ですわ」
「オイ、何勝手なこと言ってやがる!」

混乱するマリアを庇うように、ノーゼルがツカツカとルリアの元に歩き出してきた。それを冷めた目で見つめたルリアは、義理とはいえ、こんなのが弟なのね、と少し切なくなる。情けない男を弟に持ったものだと心から悲しくなった。

「貴方もおかしいとは思いませんでしたか?マリア様と貴方の口振りでは、貧民街ではその日の生活で精一杯で、お祭りを開催するなんて悠長なことは出来なかったはずです。けれどマリア様、貴方は先程、たしかにご自分の口でお祭りについてお話ししてくれましたよね」
「ちが…それは、違くて!貴方とは違う日に行ったんです。その時にお祭りが開催されてて、」
「服にもその日のご飯にも困るような方達がですか?」

優しい瞳で問いかけるルリアに何も言えなくなったのか、マリアは演技ではなく本当に泣きそうな顔をしてルーカスの腕にしがみついた。ルーカスといえば、展開についていけないのか目を白黒とさせており、そんなマリアを抱きしめ返すでもなく、唖然として突っ立っている。

「マリア様、それと、貴方の故郷はあの貧民街ではなく男爵様の領地だったはずです。お母様と二人で、小さなお屋敷に住んでおられたのですよね?」
「…屋敷……?違うよな、マリア」

マリアを信じきれなくなってきたのか、ノーゼルが揺れる瞳でマリアを見た。それにひく、と口の端を引き攣らせたマリアは、回らない頭を必死に回転させて、最適な言い訳を探していた。

「そ、それは…」
「それは?」
「ひっこしたん、です」
「貧民街からお屋敷に、ですか?」
「そ、そうです!だから、小さい時の辛い記憶を忘れられなくて…」
「辛い記憶を思い出してしまうような場所でも、街の皆様のためを思って帰郷していたのですね」
「そ、そうです!」

我ながらいい言い訳を思いついた、なんてマリアはすっかり安心した。心臓の鼓動がやっと戻ってきたような心地になって、冷や汗が冷えていく。

「ところで」

ルリアの口角が少し下がる。彼女の透明な声が、少し曇りを帯びたような気がした。

「ノーゼル、貴方はマリア様から沢山の昔話を聞いたのよね。それは、子供の頃の話だった?先程はマリア様は、年頃になってもおしゃれなできなくて辛かったって言っていたけれど、言い間違いかしら」


マリアの目の前で、青い顔をしたノーゼルがゆっくりと振り返った。

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