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第3話・お友達になって
しおりを挟む「………っ!?」
突然の大声に、マリアナの耳がキーンと劈く。会場中の視線がこちらに向いたのが分かった。公爵令嬢としてのプライドから無様な姿を晒すことは無かったが、もう無礼どころでは済まない仕打ちに、扇を持つ手が震える。怒りで目の前が真っ暗になった。
「貴女達____」
「うわーーっ!!マジのマリアナだ!顎下扇で撫でてるし!初めての原作キャラ……っ!悪役だけど」
「まだ9歳?8歳?だよな??うわーーかっわいっ。原作キャラだと思うとますます愛おしい」
「はあ……マリアナたん…………」
「はいだめー」
「そのまま取り押さえといてよ」
「このロリコン、ハイールの見た目じゃ無かったら池に捨ててンだけどな」
「離せっ!!嗚呼…マリアナたそ……ぼ、僕はマリアナたそが一番好きなんだっ!!人気投票でどれだけ僕が貢献したと思っ__もがっ」
なぜか突然こちらに詰め寄ろうとした赤毛の少年を、若草色の瞳の男の子が羽交い締めにする。栗色の髪の女の子は満足げにそれに頷いており、こちらに視線を向けていた周りの貴族たちが「ああ、またあの三人よ」「ふふ、元気ですわね~」なんて呑気に話している。
その声を聞いて、マリアナは悟った。
こいつら、頭がおかしいのだと。
馬鹿に何を説教しても無駄だ。そもそも会話が成立しなくて当たり前である。マリアナとて、会話が成立する相手であれば可愛がってやるのだが、そもそも脳みその方が異常ならそんなことをしても意味がない。
離れよう。一人でも良いからアルフレッド様を探そう。そう思ってくるりと背を向けたマリアナのドレスを、誰かの手が掴んだ。
「!?」
「ま、待って!あ、いや、お待ちになって!」
栗色の髪の毛の女の子だった。馴れ馴れしい態度にぐわんと顔が歪み、大きな瞳が冷酷に細まる。
「汚らしい手で、私のドレスに触らないでくださいまし。貴女達と話すことなんて何もなくってよ」
「はわ……」
「はぁ……はあ……マリアナたん……かわゆ…」
「お前ちょっとは黙ってられないの?」
「もがっ」
睨みつけたというのに何故か瞳をキラキラとさせた少女は、そのままスッと後ろに引くと、見事なカーテシーを披露する。
「ローズ・カルドーゾですわ。マリアナ・ワットソン様の瞳に映れることへの栄誉をここに表します。ぜひ、是非____私とお友達なってください!」
カルドーゾ。その家名を聞いたマリアナの顔が、思わず幼なげになる。きょとん、と瞳を瞬かせるマリアナに、また赤毛の少年が興奮し始めていた。
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