兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい

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番外編12・一方その頃

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レオンは自室で1人、頭を抱えていた。

机の上には煌びやかな招待状と、びっしりと文字で埋め尽くされた報告書が散らばっている。
過去150年分の、王家に連なる男児の婚約者を決める“選別会”のデータ。150年分と言っても、開催された回数はたったの2回。しかしその2回どちらとも、調べなければ知り得ない“ある共通点”があった。

それは、選別の終わり送られる「正式な婚約者の証」らしい。
一番古いデータでは、大粒のガーネットが鎮座する見事なネックレス。二つ目のデータでは、金銀でできた扇。
そのどちらも、選ばれた「婚約者」に送られ、それを受け取った時点で婚約は同意とみなされる。
つまりは、婚約指輪のようなものだ。選別を行うものは予め用意した婚約指輪を、選び抜いたたった1人に渡す。伝統的な儀式であるはずなのに知名度が低いのは、選別会自体稀な行事であることと、選ばれなかった令嬢達の名誉のためであろう。まさかそんなあからさまな選び方だとは誰も思うまい。

それに、直近の一例では結局婚約破棄にもなっている。
どうりで、ろくすっぽ情報が降ってこない訳だ。大々的な選別会を行なっておいて、婚約破棄という結果はあまりにも情け無い。王家も周辺貴族も、わざわざ言いふらしたりはしないだろう。

しかし、問題なのは選別会の招待状だ。ある令嬢の招待状の写しとして今日手元に届いたそれには、ソフィアの受け取った招待状といくつかの相違点があった。

まず、ソフィアの招待状に刻印されていた王家の紋章がどこにも見当たらない。姉様はあの紋章のせいで強制的に参加することになったのに───そう考えて、背筋にはヒヤリとしたものが走った。

しかし、恐ろしいのはその後である。写しの招待状には、ソフィアの招待状には見当たらなかった、とある一文が添えられていた。


『選ばれた婚約者の証として、当日には白薔薇のブーケを用意する。これを受け取ったものは即ち、第二王子の正式な婚約者として認められる』

この文章を読んだ時、記憶違いかと思って、レオンはソフィアの招待状を何度も思い出した。招待状は当日持参して見せる必要があるため、残念ながら今手元には無いが、どれだけ思い返しても、ブーケのことが書かれていた記憶はない。
それに、比較的記憶力の良い自分がこんな重要なことを忘れるはずないと、何らかの奸計を確信したレオンはすぐさま嫌な予感に全身を浸し、頭を抱えた。

今からでは、使者を送っても手紙を送っても馬車を走らせても、おそらく間に合わない。

もっと僕が気をつけていれば、と拳を握りしめたレオンは、徐に神に祈り始めた。


どうかどうか、姉様が何らかのきっかけで思惑に気がつき、上手く切り抜けられますように。


変なところで鈍くて性善説の抜けきらないあの人が、突如飛躍的に賢くなって名探偵の如き推察力を発揮できますように。



どうか、姉様が悲しむ結末にはなりませんように。



健気にも無茶苦茶なことを願い始めたレオンは、そうしてしばらく祈りの姿勢を取っていたのであった。
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