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母さんと母様
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部屋に入って来たユリウスは、俺の隣にゆうゆうと腰掛けている母さんを目にし、一度だけ瞬きをした。
多分、いや絶対に驚いたんだろう。
「…失礼しました。部屋の外で待機しておりますので、何かございましたら、お声がけ下さい。」
「ちょ、ちょっと、ユリウス!行かないで!」
せっかく戻って来たのに!
慌てて立ち上がり、すでに背を向けているユリウスの元へと急いで、その袖口を引き寄せる。
「ご来客があるとは存じませんでした。扉の前で待機しておりますから。今日はこの後ずっとここにおりますので、ご安心下さい。」
ユリウスは振り返えりながら、袖口を掴んで離さない俺の手をそっと引き剥がそうとしている。
「…ノア様、手を、」
「だめ!行かせないぞ!」
「ですから、どこにも参りません。部屋の外にいるだけです。」
いつもすんとしているユリウスが、困惑ぎみの表情を浮かべている。
「ふ、ははは!ノアはすいぶんと懐いているんだね。わたし以外の人をこんな風に引き止めるなんて、妬けちゃうな。君もそうだろう?」
「…いえ、わたくしは、そのような…」
ルドルフは最近時折見せる、なんとも言えない複雑そうな表情で俺とユリウスを見ていた。
「出ていけなんて言ってないよ。ユリウスもルドルフの隣りに座って。」
「かしこまりました。では、ここで待機しております。申し遅れましたが、ノア様の護衛を任されている、ユリウス マクワイアと申します。」
俺に袖を引かれたまま、ユリウスは母さんに礼をした。
「ははは、本当にかたいんだね。知ってるよ。会うのは二度目だ。」
「…二度目、ですか?」
「そうだよ。そんなにかたくならないで、ルドルフの隣に座ってくれないか?」
躊躇するユリウスをルドルフの隣りに無理矢理座らせて、俺もその横におさまる。
「ノアはこっちに座りなよ。寂しいじゃないか。」
「え、嫌だ。」
ユリウスの前で子どもみたいに頭を撫でられたり、そんなの恥ずかしいじゃないか。
「ノア様、その、お手を…」
「嫌だ。離したくない。ずっとあいつの所にいたくせに。」
浅く腰掛けているユリウスの右腕にぎゅうっとしがみついて、困った様に見下ろす顔を睨んでやる。
ユリウスは何もしていない。しているのは、マホと呼ばれるあいつだ。わかっているけど、ユリウスがあいつに翻弄されているのが気に食わない。こうやってユリウスを困らせていいのは、全部俺だけだ。俺だけの護衛だからな。
「わあ。これはまた、なんて言うか、想定外だね。ルドルフ、陛下には何か話しているのかい?」
母さんはなぜか目をきらきらさせて、俺とユリウスを見ている。
「いえ、何も。きっと気のせいだと思い込もうとしているところです。ノア様も無意識でしょうし…。陛下には…」
母さんは笑っていて、ルドルフは深く長い溜め息を吐いた。
いったい何の話しをしてるんだろう。
「…ノア様、こちらのお方は…」
しがみつく耳元でユリウスが俺に囁く。囁く声も低く響いて、心地いい。
「あ、俺の母さんだよ。ニイナって言うんだ。母さん、ユリウスに会ったことあるのか?」
「ノア様の…、こ、これは失礼しました。」
立ちあがろうとするユリウスに、しがみつく腕の力をこめる。
「ノア様、手を、目の前に腰をおろすなど、不敬になります!」
「いいから、いいから、座っててよ。」
ひらひらと手を振って、母さんはユリウスにそのまま座っているように促した。
「で、何の話しをしていたのだったかな?」
ん?
んんん?
そういえば、なんだか重要な話をしていたような………
多分、いや絶対に驚いたんだろう。
「…失礼しました。部屋の外で待機しておりますので、何かございましたら、お声がけ下さい。」
「ちょ、ちょっと、ユリウス!行かないで!」
せっかく戻って来たのに!
慌てて立ち上がり、すでに背を向けているユリウスの元へと急いで、その袖口を引き寄せる。
「ご来客があるとは存じませんでした。扉の前で待機しておりますから。今日はこの後ずっとここにおりますので、ご安心下さい。」
ユリウスは振り返えりながら、袖口を掴んで離さない俺の手をそっと引き剥がそうとしている。
「…ノア様、手を、」
「だめ!行かせないぞ!」
「ですから、どこにも参りません。部屋の外にいるだけです。」
いつもすんとしているユリウスが、困惑ぎみの表情を浮かべている。
「ふ、ははは!ノアはすいぶんと懐いているんだね。わたし以外の人をこんな風に引き止めるなんて、妬けちゃうな。君もそうだろう?」
「…いえ、わたくしは、そのような…」
ルドルフは最近時折見せる、なんとも言えない複雑そうな表情で俺とユリウスを見ていた。
「出ていけなんて言ってないよ。ユリウスもルドルフの隣りに座って。」
「かしこまりました。では、ここで待機しております。申し遅れましたが、ノア様の護衛を任されている、ユリウス マクワイアと申します。」
俺に袖を引かれたまま、ユリウスは母さんに礼をした。
「ははは、本当にかたいんだね。知ってるよ。会うのは二度目だ。」
「…二度目、ですか?」
「そうだよ。そんなにかたくならないで、ルドルフの隣に座ってくれないか?」
躊躇するユリウスをルドルフの隣りに無理矢理座らせて、俺もその横におさまる。
「ノアはこっちに座りなよ。寂しいじゃないか。」
「え、嫌だ。」
ユリウスの前で子どもみたいに頭を撫でられたり、そんなの恥ずかしいじゃないか。
「ノア様、その、お手を…」
「嫌だ。離したくない。ずっとあいつの所にいたくせに。」
浅く腰掛けているユリウスの右腕にぎゅうっとしがみついて、困った様に見下ろす顔を睨んでやる。
ユリウスは何もしていない。しているのは、マホと呼ばれるあいつだ。わかっているけど、ユリウスがあいつに翻弄されているのが気に食わない。こうやってユリウスを困らせていいのは、全部俺だけだ。俺だけの護衛だからな。
「わあ。これはまた、なんて言うか、想定外だね。ルドルフ、陛下には何か話しているのかい?」
母さんはなぜか目をきらきらさせて、俺とユリウスを見ている。
「いえ、何も。きっと気のせいだと思い込もうとしているところです。ノア様も無意識でしょうし…。陛下には…」
母さんは笑っていて、ルドルフは深く長い溜め息を吐いた。
いったい何の話しをしてるんだろう。
「…ノア様、こちらのお方は…」
しがみつく耳元でユリウスが俺に囁く。囁く声も低く響いて、心地いい。
「あ、俺の母さんだよ。ニイナって言うんだ。母さん、ユリウスに会ったことあるのか?」
「ノア様の…、こ、これは失礼しました。」
立ちあがろうとするユリウスに、しがみつく腕の力をこめる。
「ノア様、手を、目の前に腰をおろすなど、不敬になります!」
「いいから、いいから、座っててよ。」
ひらひらと手を振って、母さんはユリウスにそのまま座っているように促した。
「で、何の話しをしていたのだったかな?」
ん?
んんん?
そういえば、なんだか重要な話をしていたような………
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