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穏やかな時間 ノア
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ユリウスがマホの事から解放され、いつもの日常が戻った。
兄さんとマホがどうなっているのか、俺には関係がないことだから興味はないし、キラキラを失ったマホにもすっかり興味を失ってしまった。
ユリウスと恋仲だったとか言っていたのも、きっと勘違いしていたんだ。
うん。そうだ。
ユリウスとマホにはその後接点はないようだし、とりあえずそう思う事にしている。
ユリウスが急に呼び出されることがなければ、二人だけの日々はとても平穏なのだ。
ただ一つ困ったことがある。
夜になってユリウスがいなくなると、なぜか胸が苦しくなり、なかなか寝付けなくなってしまうことだ。。ユリウスの休日前夜なんて、それはもう大変だ。
当日代わりに来るルドルフの横で、早くユリウスが戻ってこないかそればかり考えて落ち着かない。
…あの匂いのせいだろうか?
あの匂いを嗅ぐと、ほっとして、でも悲しい気持ちにもなって、何か大切なことを忘れているようなそんな気になるからだろうか?
「…ノア様?上手くいきませんか?」
母様から頼まれたオルゴールの修理をしていると、背後にユリウスの気配を感じる。
「んあ?あ、ああそう。この部品、摩耗して機能しなくなってるから、新しいのに替えようとしてるんだけど、上手くはまんないんだ。」
「…ああ、少しだけ大きさが異なるのかもしれませんね。」
背後から部品の大きさを確かめようと、ユリウスの腕が伸びてくる。
「少し削りましょうか。」
「…ん、って、うわあっ!」
耳元に響く声に、ぞわぞわっと身震いし、思わず振り向くと、あまりにも顔が近すぎて、驚いてしまった。
「…どうされました?」
「いや、近すぎて、びっくりした。」
「……申し訳ありません。つい、わたしも夢中になり…」
そのまま後ろへ退こうとするユリウスを引き止め、もう一度部品の確認をしてもらう。
…近くにいると、やっぱりいい匂い。
くん、くんくん、くんくんくん。
すっかりユリウスの匂いを嗅ぐことが習慣になってしまった。
俺って、変態みたいだな。
「少し、削りましょう。……また、匂いを嗅がれているのですか?」
「あ、ばれた?」
「…そんなに、匂うでしょうか。」
「だから、いい匂いなんだって。臭いとかじゃなくて、とっても、いい匂いだから、もっと嗅がせて。」
困惑気味のユリウスだけど、最近はしょうがないなあという感じで、俺の好きなようにさせてくれる。
明後日はユリウスの休日だ。
「…ユリウス、明日上着置いて行って。」
「…?」
「な?いいよな?」
「……?」
それから、ユリウスがお休みの前日には上着を置いていってもらっている。
夜は上着に包まって寝て、翌朝からは上着を着たまま過ごす俺を、ルドルフはすごく変な目で見るけど、そんなの全然へっちゃらだ。
「なあ、そろそろ切って欲しいんだけど。」
天気がいい日は、中庭で剣の稽古をつけてもらい、それから母様たちとお茶をする。
肩につくぐらい伸びた髪が邪魔で、何度も切って欲しいと言っているのに、担当の三妃はなかなか切ろうとしてくれない。
「もったいないから、もう少し伸ばしましょうよ。ねえ、皆さんもそう思いません?」
そういうと、皆んなうんうんと頷くだけだ。
「もっと伸ばして、わたしみたいにお団子にしたらいいある。」
「ワタシ、アミコミ、デキルヨ。」
「くるくると巻いても可愛いわねえ。」
そして、好き放題言い過ぎだ。
どれもしたくない。
せっかく剣の腕も上達したんだから、格好よくしたい。
ユリウスには全く及ばないが、筋がいいと最近褒められた。
「どれも、しない。したくない。なあ、ユリウス、短い方が格好いいだろ?」
「…今の長さも、お似合いですよ。」
真顔で言われても…。
ううん、どうしよう、切りたいのに、と思っているうちに、いつの間にか、俺は14歳になっていた。
中庭での誕生祝いの後、ユリウスから髪をくくるためのするりとした絹のリボンを貰ったので、そのままずっと伸ばしている。
ユリウスからの贈り物は、他の誰からの贈り物より、とっても嬉しかった。
兄さんとマホがどうなっているのか、俺には関係がないことだから興味はないし、キラキラを失ったマホにもすっかり興味を失ってしまった。
ユリウスと恋仲だったとか言っていたのも、きっと勘違いしていたんだ。
うん。そうだ。
ユリウスとマホにはその後接点はないようだし、とりあえずそう思う事にしている。
ユリウスが急に呼び出されることがなければ、二人だけの日々はとても平穏なのだ。
ただ一つ困ったことがある。
夜になってユリウスがいなくなると、なぜか胸が苦しくなり、なかなか寝付けなくなってしまうことだ。。ユリウスの休日前夜なんて、それはもう大変だ。
当日代わりに来るルドルフの横で、早くユリウスが戻ってこないかそればかり考えて落ち着かない。
…あの匂いのせいだろうか?
あの匂いを嗅ぐと、ほっとして、でも悲しい気持ちにもなって、何か大切なことを忘れているようなそんな気になるからだろうか?
「…ノア様?上手くいきませんか?」
母様から頼まれたオルゴールの修理をしていると、背後にユリウスの気配を感じる。
「んあ?あ、ああそう。この部品、摩耗して機能しなくなってるから、新しいのに替えようとしてるんだけど、上手くはまんないんだ。」
「…ああ、少しだけ大きさが異なるのかもしれませんね。」
背後から部品の大きさを確かめようと、ユリウスの腕が伸びてくる。
「少し削りましょうか。」
「…ん、って、うわあっ!」
耳元に響く声に、ぞわぞわっと身震いし、思わず振り向くと、あまりにも顔が近すぎて、驚いてしまった。
「…どうされました?」
「いや、近すぎて、びっくりした。」
「……申し訳ありません。つい、わたしも夢中になり…」
そのまま後ろへ退こうとするユリウスを引き止め、もう一度部品の確認をしてもらう。
…近くにいると、やっぱりいい匂い。
くん、くんくん、くんくんくん。
すっかりユリウスの匂いを嗅ぐことが習慣になってしまった。
俺って、変態みたいだな。
「少し、削りましょう。……また、匂いを嗅がれているのですか?」
「あ、ばれた?」
「…そんなに、匂うでしょうか。」
「だから、いい匂いなんだって。臭いとかじゃなくて、とっても、いい匂いだから、もっと嗅がせて。」
困惑気味のユリウスだけど、最近はしょうがないなあという感じで、俺の好きなようにさせてくれる。
明後日はユリウスの休日だ。
「…ユリウス、明日上着置いて行って。」
「…?」
「な?いいよな?」
「……?」
それから、ユリウスがお休みの前日には上着を置いていってもらっている。
夜は上着に包まって寝て、翌朝からは上着を着たまま過ごす俺を、ルドルフはすごく変な目で見るけど、そんなの全然へっちゃらだ。
「なあ、そろそろ切って欲しいんだけど。」
天気がいい日は、中庭で剣の稽古をつけてもらい、それから母様たちとお茶をする。
肩につくぐらい伸びた髪が邪魔で、何度も切って欲しいと言っているのに、担当の三妃はなかなか切ろうとしてくれない。
「もったいないから、もう少し伸ばしましょうよ。ねえ、皆さんもそう思いません?」
そういうと、皆んなうんうんと頷くだけだ。
「もっと伸ばして、わたしみたいにお団子にしたらいいある。」
「ワタシ、アミコミ、デキルヨ。」
「くるくると巻いても可愛いわねえ。」
そして、好き放題言い過ぎだ。
どれもしたくない。
せっかく剣の腕も上達したんだから、格好よくしたい。
ユリウスには全く及ばないが、筋がいいと最近褒められた。
「どれも、しない。したくない。なあ、ユリウス、短い方が格好いいだろ?」
「…今の長さも、お似合いですよ。」
真顔で言われても…。
ううん、どうしよう、切りたいのに、と思っているうちに、いつの間にか、俺は14歳になっていた。
中庭での誕生祝いの後、ユリウスから髪をくくるためのするりとした絹のリボンを貰ったので、そのままずっと伸ばしている。
ユリウスからの贈り物は、他の誰からの贈り物より、とっても嬉しかった。
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