秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ

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ナターシャ

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この後宮は女たちの園だ。

護衛のルドルフとユリウスを除けば、足を踏み入れることができる男はただ一人、シュヴァイゼルだけ。

夫であり、王である彼だけ。

幼い頃に婚約を結び、何の障壁もないままここへと嫁いできた。

美しい容姿に、柔らかな物腰、気品漂う風貌は女たちの憧れであったが、シュヴァイゼルの裏の顔を知る者は少ないだろう。

婚約が決まった当初から、妾にはその裏の顔を隠すつもりはないようであった。

婚約中、どれだけ女たちが騒いでも、近寄ろうとしても、婚約者である妾を蔑ろにすることはなく、いつでも最優先にされた。

互いに恋慕うような雰囲気はない。共にいることが当然のこと、ただそれだけだったように思う。

どういう訳か、シュヴァイゼルは妾のそう言ったところが好ましいと言っていた。妾には、どう言った所なのか、いまだ分からない。

シュヴァイゼル以外の者との未来は想像できなかったのだから、妾もそれなりに愛着を感じているのやもしれない。

王になったシュヴァイゼルは、あっという間に周辺諸国を制圧し、統一してしまった。

そして、諸国から送られてくる美姫たちが次々と側妃として迎え入れられた。

シュヴァイゼルが側妃を迎えることに抵抗はなかった。正直シュヴァイゼルの夜伽相手を一人でこなすことは、かなり難儀なことであったせいだ。

彼を独占したいとも思わないし、するつもりもない。

数人で共有できるのであれば、妾にとってはそれが一番都合が良かった。

迎え入れる前に、一人一人必ず一度は対峙し、妾が否と言ったものは国に送り返された。

シュヴァイゼルは妾が否とした者を受け入れることはせず、最終的に残ったのが今の8人、そして違った経緯でここへ来たニイナを含め、十人の女たちがここ後宮で暮らしている。

否とした者たちは、王からの寵愛をただ一人受けようと企んでいそうな者や、女の園の秩序を乱しそうな者、幼すぎる者、精神的に不安定そうな者たちだ。判断に狂いはなかったか迷いもあったが、その時もシュヴァイゼルは妾の判断を一番に尊重してくれた。

ニイナが現れるより前、集められた9人の女たちによって、後宮での暮らしが静かに幕を開けた。

恐れていた秩序の乱れは起こらず、代わりに女たちが集まる園とは思えない程、後宮内はいつもしんと静まりかえっていた。

どの部屋からも望める中庭で週に一度義務的な茶会を開いていたが、それもすぐに途絶えた。

シュヴァイゼルによって、妾も含め、一人、また一人と次々に懐妊し、皆部屋にこもることが多くなったせいだ。

シュヴァイゼルとの夜伽は、身体に相当な負荷がかかる。

身をもって知っていた妾なりに、彼女らを労うよう気を配りつつ、我が身も労う、そんな日々の中、王子たちが次々に生まれた。

全ての側妃と平等に過ごしていたシュヴァイゼルは、生まれた王子たちも平等にすると、後宮には住まわせず、王宮で平等に育てると告げた。

皆王子で、生まれてくる子の性別まで平等であったことには、流石に驚いたものだ。

いずれにせよ、交流を深める間もないままに子を産み終えた妾たちは、ただ漫然と過ぎていく日々を過ごすしかなかった。

…その日は唐突にやってきおった。

シュヴァイゼルにより、ニイナが密かに後宮へと連れられてきたのだ。

建国当初から立つというこの後宮内、十の部屋はこれで全てが埋まった。

大広間を除けば、残りの部屋は当時まだ妾も入ったことのない、奥深くにある開かずの間だけ。

長い回廊を渡った奥深く、一目でわかる重厚な扉は一体何のための部屋なのか、なぜそこに造られたのか。

ずっと存在していたはずであるのに、その時初めてその異質さが気になったことを今でも覚えている。




















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