光と影

ロキ

文字の大きさ
12 / 25

第十二話「姉妹の誓い」

しおりを挟む
2025年2月14日、バレンタインデー。
聖マリア病院の特別病室。
美咲は治療のため、一週間前から入院していた。
窓辺には、「Lumière」のアトリエで製作中だった「Quatre」のドレスが飾られている。純白のドレスと漆黒のドレス。光と影の調和を表現した姉妹の衣装。
「おはよう、美咲」
麗子が大きな花束を持って入室してきた。
「バレンタインだから、特別な差し入れ」
花束の中には、Pierre Hermé(ピエール・エルメ)の特製チョコレートが隠されていた。
「お姉ちゃん…でも、今は甘いものNG」
「知ってる。これは退院後のお楽しみ」
麗子は微笑みながら、ベッドサイドに座る。
その時、村井医師が入ってくる。
手には最新の検査結果。
「麗子さん、ちょうど良かった」
医師は二人を見つめる。
「治療方針について、重要なお話があります」
***
診察室には、真理子と健一も同席していた。
村井医師は慎重に説明を始める。
「美咲さんの症状は、予想以上に進行が早い」
スクリーンには詳細な検査データが映し出される。
「しかし、希望もあります」
医師は麗子の方を向く。
「双子の姉妹であるあなたの存在です」

「具体的には、どういう治療になるの?」
麗子の声が、静かな診察室に響く。
村井医師はタブレットで図を示しながら説明を始める。
「まず、麗子さんの骨髄を採取させていただきます。その後、美咲さんへの移植手術…」
「リスクは?」
健一が身を乗り出して尋ねる。
「ドナーとなる麗子さんには、全身麻酔による骨髄採取の負担。術後1週間ほどの入院が必要です」
医師は一旦言葉を区切り、続ける。
「美咲さんの場合は…」
真理子が息を呑む。
「移植後の拒絶反応との戦いになります。3ヶ月ほどのクリーンルームでの隔離生活。そして、免疫システムの再構築には約1年…」
診察室に重い沈黙が落ちる。
「私、やります」
麗子の声に迷いはなかった。
「妹を救えるのは、私しかいないんでしょう?」
真理子が娘の手を握る。
「麗子…」
「ママ、大丈夫」
麗子は母に微笑みかける。
「これも『Quatre』のストーリーの一部になるわ」
その時、健一が立ち上がる。
「先生、手術の同意書を」
「待って」
真理子が遮る。
「その前に、美咲の気持ちも…」

病室に戻ると、美咲はウィンドウ越しに夕暮れを見つめていた。
「美咲」
麗子が声をかける。
「お姉ちゃんの骨髄…受け取れない」
「どうして?」
「お姉ちゃんのキャリア、『Quatre』のこと。全部台無しにしてしまう」
美咲の瞳に涙が光る。
麗子はベッドに腰かけ、妹の手を取る。
「覚えてる?私たちが初めて再会した日のこと」
「銀座のカフェ…」
「あの時、15年の空白を埋めようって誓ったでしょう」
麗子の声が強くなる。
「これは、その誓いの続きよ」
廊下では、真理子と健一が会話していた。
「あの子たち、本当の姉妹になったわね」
真理子の目に涙が浮かぶ。
「ああ」
健一も声を詰まらせる。
「血のつながりより、強い絆が生まれた」
病室に戻ると、姉妹は抱き合っていた。
「決めたの?」
真理子が尋ねる。
美咲が頷く。
「うん。お姉ちゃんの光を…受け取ります」
その夜、「Lumière」本社。
真理子は新しいプレスリリースを書いていた。
『「Quatre」新コレクション企画変更のお知らせ
テーマ:「Rebirth - 光と影の再生」
─姉妹の愛が紡ぐ、新たな物語─』
窓の外では、東京タワーが夜空に輝いていた。
その光は、まるで希望の象徴のように見えた。
***
2月20日、手術前日。
麗子と美咲は並んでベッドに横たわっていた。
「明日から、私たちの細胞が一つになるのね」
麗子が言う。
「うん。本当の姉妹に…」
美咲の声が小さく震える。
「私たちは既に本物よ」
麗子は妹の手を強く握る。
「光と影のように、離れられない存在として」
夜が更けていく。
明日という日を前に、姉妹は静かに目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...