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第3話
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はい……
私は馬鹿です……
ごめんなさい……
「間抜けなお前が、『どうしてこんな酷いことをするんですか』って聞いてきた時は、思わずキレて色々拷問してしまったよ。『どうして』じゃねぇよ。お前の頭が悪いから苦労してるのに、くだらないこと聞いてんじゃねぇよ」
はい……
私の頭が悪いせいです……
ごめんなさい……
「まっ、もともとの知能が低いから、調教の成果にも限界があり、結局、人並みの頭にはならなかったがな。だが、こんな馬鹿女の相手も、今日までだ。……喜べ、アドレーラ。もう、痛い思いをしなくて済むぞ」
それはどういうことでしょう?
「アドレーラ、今日限りで、お前との婚約を破棄する」
こんやく……はき……?
「くくっ、くくくっ、少し前に父上が死んでな、兄上が跡を継いだんだ。許嫁だのなんだの、古臭い慣習にこだわる父上とは違い、兄上はそういうことにまったく無頓着でな。お前との婚約を、嫌なら破棄してもいいって言ってくれたんだ。いや、ほんとに、弟想いの兄を持って、僕は幸せ者だよ」
お父様が死んだら悲しいはずなのに、どうしてルーパート様は幸せそうに笑っているのでしょう。私には、どうしてもわかりませんでした。
「さて、そう言うわけで、今日でお前と会うのも最後だ。わかったな、アドレーラ」
何度も暴力を振るわれ、委縮し、憔悴しきった私の頭では、状況を正確に理解することはできませんでしたが、私は「はい」と頷きました。『わかりません』と言って、また蹴られるのは嫌だったのです。
「よしよし。だが、『さあ、婚約を破棄するぞ』と思い至った段階で、二つ、大きな問題があることに気がついたんだ。……まず一つ。調教の為とはいえ、僕はお前に、かなり苛烈な仕打ちをした。実家に戻ったお前が、そのことを家族に喋ったら、僕の立場は非常に悪くなる」
そうなのでしょうか。
でも、ルーパート様に喋るなと言われれば、私は約束を守ります。
『約束したことは、必ず守りなさい』と、お父様に言われているからです。
「そして二つ目の問題は、お前がうちに来る際に持ってきた多額の持参金だ。こちらからの一方的な婚約破棄となったら、さすがに持参金は返却しなきゃいけなくなるだろう?」
ルーパート様は、そこで一度言葉を切り、ため息を漏らしてから、話を続けます。
「最近、何かと出費がかさんでな、うちも懐具合が苦しいんだ。そんな状況で、持参金をみすみす手放すのは、実に惜しい。だから僕は、『普通とは違った方法』で婚約を破棄しようと思っている。わかるな? アドレーラ」
私は馬鹿です……
ごめんなさい……
「間抜けなお前が、『どうしてこんな酷いことをするんですか』って聞いてきた時は、思わずキレて色々拷問してしまったよ。『どうして』じゃねぇよ。お前の頭が悪いから苦労してるのに、くだらないこと聞いてんじゃねぇよ」
はい……
私の頭が悪いせいです……
ごめんなさい……
「まっ、もともとの知能が低いから、調教の成果にも限界があり、結局、人並みの頭にはならなかったがな。だが、こんな馬鹿女の相手も、今日までだ。……喜べ、アドレーラ。もう、痛い思いをしなくて済むぞ」
それはどういうことでしょう?
「アドレーラ、今日限りで、お前との婚約を破棄する」
こんやく……はき……?
「くくっ、くくくっ、少し前に父上が死んでな、兄上が跡を継いだんだ。許嫁だのなんだの、古臭い慣習にこだわる父上とは違い、兄上はそういうことにまったく無頓着でな。お前との婚約を、嫌なら破棄してもいいって言ってくれたんだ。いや、ほんとに、弟想いの兄を持って、僕は幸せ者だよ」
お父様が死んだら悲しいはずなのに、どうしてルーパート様は幸せそうに笑っているのでしょう。私には、どうしてもわかりませんでした。
「さて、そう言うわけで、今日でお前と会うのも最後だ。わかったな、アドレーラ」
何度も暴力を振るわれ、委縮し、憔悴しきった私の頭では、状況を正確に理解することはできませんでしたが、私は「はい」と頷きました。『わかりません』と言って、また蹴られるのは嫌だったのです。
「よしよし。だが、『さあ、婚約を破棄するぞ』と思い至った段階で、二つ、大きな問題があることに気がついたんだ。……まず一つ。調教の為とはいえ、僕はお前に、かなり苛烈な仕打ちをした。実家に戻ったお前が、そのことを家族に喋ったら、僕の立場は非常に悪くなる」
そうなのでしょうか。
でも、ルーパート様に喋るなと言われれば、私は約束を守ります。
『約束したことは、必ず守りなさい』と、お父様に言われているからです。
「そして二つ目の問題は、お前がうちに来る際に持ってきた多額の持参金だ。こちらからの一方的な婚約破棄となったら、さすがに持参金は返却しなきゃいけなくなるだろう?」
ルーパート様は、そこで一度言葉を切り、ため息を漏らしてから、話を続けます。
「最近、何かと出費がかさんでな、うちも懐具合が苦しいんだ。そんな状況で、持参金をみすみす手放すのは、実に惜しい。だから僕は、『普通とは違った方法』で婚約を破棄しようと思っている。わかるな? アドレーラ」
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