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第21話

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 やがて、食事が終わる頃。
 ルイーズが思い出したようにポツリと言う。

「私、この世界の人間より、シャンパ人の方が好きよ」

「えっ?」

「一週間前、あんたに声をかけたのも、あんたがシャンパ人だったからよ。もしもこの世界の人間だったら、気にはなったけど声はかけなかったと思うわ」

「そ、そう」

 いきなり『好きよ』と言われて、ちょっとドキッとしてしまった。別に俺のことが特別に好きと言うわけではなく、シャンパ人が好きという意味だろうけど……

 なんとなく緊張し、一度ゴクリと喉を鳴らしてから、俺は問う。

「あの、なんでシャンパ人が好きなの?」

 ルイーズは焚き火ではなく、雑木林の上に広がっている星空を見ながら答える。

「何も知らないからよ。この世界の悲惨な歴史も、現状も、私たちエルフのことも。だから、素直に話すことができる。……サトシ、あんた私の事、『人見知り』なんて大嘘の、おしゃべり女だと思ってるでしょ?」

「い、いや、別にそんなことは……」

「私、こんなに喋ったのは1年ぶりよ。どうしても事情があって町に寄らなきゃならないときでも、必要最低限の事しか口に出さなかったからね。ごくまれに、エルフの同胞から情報を聞くこともあるけど、こんなには喋らないわ。自分でも驚いてるけど、あんた、ビックリするくらい喋りやすいのよ」

「…………」

「だから最初に会ったとき、我を忘れて言っちゃいけない『私の旅の目的』まで喋っちゃったわ。それで、『誓いの契り』まで結んじゃったけど、今日、買い物したあんたの話を聞いて、ちょっと思ったの」

「何を?」

「あんたは私と一緒に危険な旅をするより、どこかの大きな町に留まった方が、『無理やり召喚された哀れなシャンパ人』として、誰かに保護してもらえるかもしれないって」

「そんなこと、あるのか?」

「ええ、風の噂で聞いたことあるわ。南の大都市ラーティに、自分で生きていけないシャンパ人を世話している商人か何かがいるって。少し胡散臭い話だから今まで話題に出さなかったけど、さっきの町であんたに親切にしてくれた人たちみたいに、その商人も、純粋な善意でシャンパ人を助けてるのかもしれない」

「そうか……そういう人も、いるんだな。一度、会ってみたいな」

「残念だけど、私の旅はこれからさらに北へ北へと進んでいく。ラーティとは真逆よ。……だからね、もしもあんたが、私と別れてラーティに行きたいと望むなら、『誓いの契り』、破棄してもいいわよ。エルフ同士の場合、契りの破棄はお互いの死を意味するけど、エルフとシャンパ人の間の契りなら、まあ、ギリギリセーフでしょ」

 そう述べるルイーズの顔は、とても寂しそうだった。
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