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第38話

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「ほんとだ。昔テレビで見た、ワインの醸造所みたいだな」

「もう、誰も飲むことのない、哀れなお酒だけどね。……見たところ、このフロアに大したものはなさそうだし、さらに下に降りるわよ」

「下の階に、またアンデッドの大軍がいたらどうする?」

「その時は、一時退散するしかないわね。でも、私のダンジョン探索の経験上、大きなフロアの下は、だいたいこじんまりとしたフロアよ。少なくとも、大軍が控えてるってことはないと思うわ。……たぶんね」

 しばしの探索の後、下り階段を発見した俺たちは、疲れた体に鞭打って地下四階を目指す。長い間誰も使っていないせいか、なんだかじめっとしている下り階段を踏みしめながら、俺は言う。

「盗まれたエルフの里の秘宝……えっと、エルフィン・カルドライトだっけ? このダンジョンにあるといいな。せっかく苦労してここまで来たんだし」

「そうね。でも、たぶんないわ」

「えっ? だけど、このダンジョンにエルフィン・カルドライトあるかもしれないって手掛かりを掴んだから、命がけで探索してるんだろ?」

 ルイーズは階段を下りながら、やや重たいため息を漏らした。

「ダンジョンに入る前もちょっと話したけど、『手がかりを掴んだ』って言えるほど、明確な情報じゃないのよ。消去法で、盗賊が根城にしていたダンジョンを探していくしかないっていうか……」

「消去法? どういうことだ?」

「エルフィン・カルドライトみたいな秘宝は普通、盗まれたらすぐブラックマーケットに出品されるの。ずっと手元に持っていると、別の盗賊に狙われたり、元の持ち主が取り返しに来る危険があるからね。でも、どんなに調べても、ブラックマーケットに出回った情報はない。一応、表の市場も調べたけど、その形跡は皆無だった」

「市場には出さず、商人を直接訪ねて売ったとか?」

「その可能性は低いわ。最近の商人は、扱う品物の『出どころ』にうるさいのよ。盗品をつかまされたら、自分たちまで犯罪の片棒を担いだことになるからね」

「なるほど」

「それでもまあ、駆け出しの商人が盗品を売りつけられることもあるでしょうけど、そんな素人同然の商人が、エルフィン・カルドライトみたいな秘宝を買うだけの大金を用意できるわけがないわ。盗賊たちだって、なるべく高く売りつけたいから、相手はちゃんと選ぶはずよ」

「う~ん、それじゃ、綺麗なエルフィン・カルドライトを見ているうちに、手放すのが惜しくなって、手元に置いてたとか……」
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