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第28話
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とにかく、いつまでもここで話し込んでいるわけにはいかない。
まともな指揮官がいない状態では、新米聖騎士たちも満足に戦えないだろう。僭越ながら、指揮経験のある私が陣頭に立って彼らを率いれば、少なくとも今よりはマシな状態になるはず。そのために、まずはちゃんとした武装をしないと。
私と兄さんは、ライリーに先導され、聖騎士団本部の地下倉庫に向かった。あそこにならきっと、私がかつて使っていた装備が、まだ保管されているだろう。
道の途中で、何度か魔物に遭遇したが、私が魔法を使うまでもなく、ライリーがやっつけてしまった。聖騎士としては新米だが、彼の剣の腕は確かなようである。
そして、現在私たちは、聖騎士団地下倉庫の入り口――その分厚い扉の前にいる。
突然、頭上から大きな地響きか聞こえてきて、兄さんが天井を見上げた。
「なんだ? 凄い音だな、地下にまで響いてくるなんて」
ライリーが扉を押しながら、答える。
「飛行型の魔物が、瓦礫か何かを地上に落として、爆撃の真似事をおこなっているのでしょう。地下設備は、普段ならとても静かですから、余計に凄まじい音に感じますね」
「確かにな。気の小さい奴なら、音だけでどうにかなりそうだ。……どうしたんだ? 扉の開閉、ずいぶん手こずってるようだが」
「それが、どうにも建て付けが悪くて、開かないんです」
「地上からの衝撃で、扉か壁が、少し歪んだのかもな。もたもたしてる場合じゃないし、体当たりで開けよう」
「そうですね。では、せーので行きましょう」
掛け声と同時に、ライリーと兄さんは力強く扉に体当たりをした。『バキッ』とも『ゴキッ』とも聞こえる音がして、重たい扉が勢いよく開く。
……扉が開いた瞬間に漂ってきた匂いに、私たち三人は顔を顰めた。地下室独特の鈍重な空気に混ざって、明らかな血の匂いがする。それも、大量の血だ。
警戒しながら地下倉庫の中に入ると、匂いの正体はすぐわかった。
冷たい壁に寄りかかるようにして、私とそれほど年恰好の変わらない少女が、死んでいたのだ。彼女の細い首には、自分で刺したと思われる姿勢で、短刀が突き刺さっている。……どうやら、自殺したらしい。
ライリーがしゃがみ込み、念のために脈をとってから、首を左右に振った。
「彼女が、先程お話しした、倉庫に隠れてしまった現任の『聖女』様です。……かわいそうに、地上から響いてくる轟音に怯え、慌てて外に出ようとしたのでしょうが、扉が開かなくて、精神的に追い詰められてしまったのでしょう」
まともな指揮官がいない状態では、新米聖騎士たちも満足に戦えないだろう。僭越ながら、指揮経験のある私が陣頭に立って彼らを率いれば、少なくとも今よりはマシな状態になるはず。そのために、まずはちゃんとした武装をしないと。
私と兄さんは、ライリーに先導され、聖騎士団本部の地下倉庫に向かった。あそこにならきっと、私がかつて使っていた装備が、まだ保管されているだろう。
道の途中で、何度か魔物に遭遇したが、私が魔法を使うまでもなく、ライリーがやっつけてしまった。聖騎士としては新米だが、彼の剣の腕は確かなようである。
そして、現在私たちは、聖騎士団地下倉庫の入り口――その分厚い扉の前にいる。
突然、頭上から大きな地響きか聞こえてきて、兄さんが天井を見上げた。
「なんだ? 凄い音だな、地下にまで響いてくるなんて」
ライリーが扉を押しながら、答える。
「飛行型の魔物が、瓦礫か何かを地上に落として、爆撃の真似事をおこなっているのでしょう。地下設備は、普段ならとても静かですから、余計に凄まじい音に感じますね」
「確かにな。気の小さい奴なら、音だけでどうにかなりそうだ。……どうしたんだ? 扉の開閉、ずいぶん手こずってるようだが」
「それが、どうにも建て付けが悪くて、開かないんです」
「地上からの衝撃で、扉か壁が、少し歪んだのかもな。もたもたしてる場合じゃないし、体当たりで開けよう」
「そうですね。では、せーので行きましょう」
掛け声と同時に、ライリーと兄さんは力強く扉に体当たりをした。『バキッ』とも『ゴキッ』とも聞こえる音がして、重たい扉が勢いよく開く。
……扉が開いた瞬間に漂ってきた匂いに、私たち三人は顔を顰めた。地下室独特の鈍重な空気に混ざって、明らかな血の匂いがする。それも、大量の血だ。
警戒しながら地下倉庫の中に入ると、匂いの正体はすぐわかった。
冷たい壁に寄りかかるようにして、私とそれほど年恰好の変わらない少女が、死んでいたのだ。彼女の細い首には、自分で刺したと思われる姿勢で、短刀が突き刺さっている。……どうやら、自殺したらしい。
ライリーがしゃがみ込み、念のために脈をとってから、首を左右に振った。
「彼女が、先程お話しした、倉庫に隠れてしまった現任の『聖女』様です。……かわいそうに、地上から響いてくる轟音に怯え、慌てて外に出ようとしたのでしょうが、扉が開かなくて、精神的に追い詰められてしまったのでしょう」
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