追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第53話

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 私は、小さくため息を漏らす。

『至高なる魔女の会』のナンバー9であるシャーリー・シャールと騒動を起こし、リーゼルから『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』の概要を聞いた後、その組織の副会長とやらが接触を図ってきたのだ。これはどう考えても、偶然ではない。

 今後の対応次第によっては、戦いになるかもしれない。
 まあ、それならそれで、叩き潰してやるだけよ。

 私は気を緩めず、かといって慌てず、ごく普通にリリエンヌに言う。

「それで、リリエンヌさん。何の御用? もしかして、『至高なる魔女の会』について詳しく知った私を、殺しに来たのかしら?」

 その言葉で、リリエンヌの朗らかな表情が一変した。誇張ではなく、真っ青になったのである。『血の気が引く』とは、まさにこのことだろう。リリエンヌはあわあわと両手を振り、泣き出しそうな顔で言葉を紡いでいく。

「ち、違います~! そんな恐ろしいこと、できるはずありません~! 私、ただ、誤解を解きたくて……」

「誤解? 何が誤解なの?」

「『至高なる魔女の会』に対する誤解です~……」

 リリエンヌはそこで言葉を切ると、一度深呼吸して、話を続ける。

「あ、あの~……大変申し上げにくいのですが、私、先程の、あなたとリーゼル様のお話、聞いてたんです~……えっと、その、シャーリーさんが『プラチナカードを奪われたから取り返してきてくれ』って泣きついて来たので、それで、あなたたちの行動を伺ってて、そしたら、話してたこと、全部、聞こえちゃったんです~……」

「へえ、そうなの。あなたも、さっきのカフェにいたわけ?」

「いえ、あまり接近すると、私の顔を知っているリーゼル様にバレてしまうので、向かいのお店の陰に隠れて、魔法で話を聞いていました~。あの、お恥ずかしいのですが、私、盗聴とか、通信とか、そっち系の魔法、得意なんです~」

「ふうん」

『盗聴』と書くと非常にイメージが悪いが、遠く離れた場所の音を聞いたり、通信をしたりするような魔法は、単純な攻撃魔法なんかより、ずっと難しく、レベルが高い。あのシャーリー・シャールが泣きつくくらいなのだから、このリリエンヌ、こう見えて相当強力な魔法使いなのだろう。

 役職も副会長だし、普通に考えたら『至高なる魔女の会』のナンバー2ってことになる。こりゃまた、いきなり大物が現れたもんだわ。

 ……しかし、それにしてはオドオドした子ね。リーゼルもシャーリーも気が強いし、『至高なる魔女の会』の魔法使いは皆あんな感じなんだろうと思ってたから、なんか意外だわ。

 リリエンヌはこちらの顔色をちらちら伺いながら、恐る恐るといった感じで、言葉を紡いでいく。

「あ、あの、先程リーゼル様は、『至高なる魔女の会』を、差別主義の恐ろしい集団のように言っていましたが、それは違うんです~。『至高なる魔女の会』の最終目的は、表向きの顔である『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』と同じで、みんなを幸せにすることなんです~」
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