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第52話
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ただ、感心するのは、これほどの混雑の中、誰もぶつかったりせずに、すいすいと人を避けて歩いていることだ。大人も、子供も、老人もである。これは、人の多い都会で暮らす中で、自然と身につく技能なのだろう。
そんなことを思っていると、不意に、背後に視線を感じた。
人ごみの中で急に立ち止まると迷惑になるので、私は歩きながら、ちらりと後ろを見る。……駄目だ。確かに視線を感じたのだが、人が多すぎて、誰が私を見ているのか、見分けることができない。
私は正面に顔を戻し、黙々と歩き続ける。
……うーん。
やっぱり、後頭部に視線を感じる。
敵意や邪念のようなものが含まれている、嫌な視線ではない。だが、これだけ人がいる中で、私のことだけをじっと見ているのだから、少々奇妙な視線であることは確かだ。
よし。
どこのどなたが私に熱視線を注いでいるのか、確かめてみるとしましょうか。
私は人ごみの中を縫うようにして、少しずつ人気のない路地の方に進んでいく。後頭部に突き刺さる視線は、少しも外れることなく、私について来ている。……間違いない、この視線の主は、私を尾行しているのだ。
そして、どういうわけか、尾行していることを隠すつもりはないらしい。だって、こっそり尾行するつもりなら、後ろからギンギンに視線を飛ばしてきたりはしないはずだもの。
謎の尾行者の意図をはかりかね、私はちょっとだけ困惑するが、まあ、わからないなら、直接本人に問いただせばいい。私は積極的に、人気のない方、人気のない方へと進路を取り、やっとこさ誰もいない路地裏に到達すると、勢いよく振り向いた。
それにより、とうとう謎の尾行者と対面する。
……謎の尾行者は、女の子だった。
年齢は、私と同じくらいか、少し年下だろうか。
柔らかそうな桃色の髪をした、優しげな雰囲気の子である。
女の子は、走って私を追いかけてきたせいか、少々息を荒げ、額の汗を拭いながら、ニコニコ笑顔で言う。
「はぁ……はぁ……やっと止まってくれました~。あと少しで見失うところでした~」
……『あと少しで見失うところでした』か。尾行対象に、それ言っちゃう? やはり、尾行していたことをごまかす気は、まったくないみたいね。
私は肩をすくめ、問う。
「あなた、どなた? 私に何か用?」
やっと呼吸が落ち着いたのか、女の子は姿勢を正し、懐から何かを取りだす。……それは、名刺だった。女の子はキッチリ45度の角度でお辞儀をし、名刺を差し出しながら、挨拶をした。
「自己紹介が遅れて、申し訳ありません~。私、『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』の、リリエンヌ・リリアンヌという者です~」
「あ、これはご丁寧にどうも……」
あまりにも丁寧な態度に、私はなんとなく恐縮し、名刺を受け取る。名刺には、『魔法で市民の皆さんを幸せにする会。副会長。リリエンヌ・リリアンヌ』と書かれていた。
そんなことを思っていると、不意に、背後に視線を感じた。
人ごみの中で急に立ち止まると迷惑になるので、私は歩きながら、ちらりと後ろを見る。……駄目だ。確かに視線を感じたのだが、人が多すぎて、誰が私を見ているのか、見分けることができない。
私は正面に顔を戻し、黙々と歩き続ける。
……うーん。
やっぱり、後頭部に視線を感じる。
敵意や邪念のようなものが含まれている、嫌な視線ではない。だが、これだけ人がいる中で、私のことだけをじっと見ているのだから、少々奇妙な視線であることは確かだ。
よし。
どこのどなたが私に熱視線を注いでいるのか、確かめてみるとしましょうか。
私は人ごみの中を縫うようにして、少しずつ人気のない路地の方に進んでいく。後頭部に突き刺さる視線は、少しも外れることなく、私について来ている。……間違いない、この視線の主は、私を尾行しているのだ。
そして、どういうわけか、尾行していることを隠すつもりはないらしい。だって、こっそり尾行するつもりなら、後ろからギンギンに視線を飛ばしてきたりはしないはずだもの。
謎の尾行者の意図をはかりかね、私はちょっとだけ困惑するが、まあ、わからないなら、直接本人に問いただせばいい。私は積極的に、人気のない方、人気のない方へと進路を取り、やっとこさ誰もいない路地裏に到達すると、勢いよく振り向いた。
それにより、とうとう謎の尾行者と対面する。
……謎の尾行者は、女の子だった。
年齢は、私と同じくらいか、少し年下だろうか。
柔らかそうな桃色の髪をした、優しげな雰囲気の子である。
女の子は、走って私を追いかけてきたせいか、少々息を荒げ、額の汗を拭いながら、ニコニコ笑顔で言う。
「はぁ……はぁ……やっと止まってくれました~。あと少しで見失うところでした~」
……『あと少しで見失うところでした』か。尾行対象に、それ言っちゃう? やはり、尾行していたことをごまかす気は、まったくないみたいね。
私は肩をすくめ、問う。
「あなた、どなた? 私に何か用?」
やっと呼吸が落ち着いたのか、女の子は姿勢を正し、懐から何かを取りだす。……それは、名刺だった。女の子はキッチリ45度の角度でお辞儀をし、名刺を差し出しながら、挨拶をした。
「自己紹介が遅れて、申し訳ありません~。私、『魔法で市民の皆さんを幸せにする会』の、リリエンヌ・リリアンヌという者です~」
「あ、これはご丁寧にどうも……」
あまりにも丁寧な態度に、私はなんとなく恐縮し、名刺を受け取る。名刺には、『魔法で市民の皆さんを幸せにする会。副会長。リリエンヌ・リリアンヌ』と書かれていた。
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