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第82話(デルロック視点)
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だがマールセンは、もはや私の言うことに何の興味もないようであり、話の途中だった『魔女フェルヴァとのシンパシー』について、まるで独りごとのように滔々と語っていく。
「僕は子供の頃から、周囲の人間にまったく共感することがありませんでした。多少の好き嫌いはありましたが、本当の意味で誰かを愛したこともないし、夜も眠れぬほど誰かを憎んだこともない。結局のところ、僕は他人に興味がないのかもしれません。……不思議ですよね、そんな僕が、フェルヴァさんにシンパシーを感じるなんて」
話の最中も、私の命はどんどん吸われていく……
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと……まるで、小さなストローで、溶けた脳みそをすすられるような、おぞましい気分……ああ……あああ……頭が……ぼんやりする……だんだんと……意識がおぼろげになっていく……
「フェルヴァさんも、僕に対し、『何か似たものを感じる』って言ってました。でもやっぱり、僕と彼女は、ちょっと違うと思います。僕は他人に興味がないだけですが、あの人は、人間そのものを憎んでる感じがありますからね。まあ、どっちも異常であることには変わりありません。だから僕たちは、奇妙なシンパシーを感じるのでしょう」
私はもう、マールセンの話を聞いていなかった。
いや、正確に言うなら、聞いてはいるが、言っていることを理解できないのだ。
頭が、ぼおっとする。
最初にあったおぞましい感覚は、もうない。
今はただ、気持ちいい。
全身から何もかもが抜けていくこの感覚が、気持ちいい。
私は虚ろな目で、ぼそりと呟いた。
「気持ちいい……」
マールセンは、ニッコリと微笑んだ。
「兄上、気持ちいいですか? 僕に命を吸われた人たちは皆、最初はとても怖がるんですが、最後には全員、今の兄上のようにとろんとして、『気持ちいい、気持ちいい』って言うんですよ。泣きながらね」
「気持ちいい……気持ちいい……」
本当に、気持ちよかった。
もう、目も見えず、耳も聞こえず、熱さも寒さも感じない。
今腰かけているはずの、ソファの感触も、少しも感じない。
まるで、宇宙空間に、ふわふわと漂っているみたいだ……
私に残った感覚は、蕩けるような快感。
吸われていく。
吸われていく。
快感と入れ替わるように、何かが吸われていく。
吸われていく。
吸われていく。
もう、吸い取るものも、ほとんど残っていないのに。
吸われていく。
吸われていく。
体の底で、ストローが水滴をすするような音がした。
空っぽだ。
私は、完全に空っぽになった。
そして私は、マールセンの一部となった。
「僕は子供の頃から、周囲の人間にまったく共感することがありませんでした。多少の好き嫌いはありましたが、本当の意味で誰かを愛したこともないし、夜も眠れぬほど誰かを憎んだこともない。結局のところ、僕は他人に興味がないのかもしれません。……不思議ですよね、そんな僕が、フェルヴァさんにシンパシーを感じるなんて」
話の最中も、私の命はどんどん吸われていく……
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと……まるで、小さなストローで、溶けた脳みそをすすられるような、おぞましい気分……ああ……あああ……頭が……ぼんやりする……だんだんと……意識がおぼろげになっていく……
「フェルヴァさんも、僕に対し、『何か似たものを感じる』って言ってました。でもやっぱり、僕と彼女は、ちょっと違うと思います。僕は他人に興味がないだけですが、あの人は、人間そのものを憎んでる感じがありますからね。まあ、どっちも異常であることには変わりありません。だから僕たちは、奇妙なシンパシーを感じるのでしょう」
私はもう、マールセンの話を聞いていなかった。
いや、正確に言うなら、聞いてはいるが、言っていることを理解できないのだ。
頭が、ぼおっとする。
最初にあったおぞましい感覚は、もうない。
今はただ、気持ちいい。
全身から何もかもが抜けていくこの感覚が、気持ちいい。
私は虚ろな目で、ぼそりと呟いた。
「気持ちいい……」
マールセンは、ニッコリと微笑んだ。
「兄上、気持ちいいですか? 僕に命を吸われた人たちは皆、最初はとても怖がるんですが、最後には全員、今の兄上のようにとろんとして、『気持ちいい、気持ちいい』って言うんですよ。泣きながらね」
「気持ちいい……気持ちいい……」
本当に、気持ちよかった。
もう、目も見えず、耳も聞こえず、熱さも寒さも感じない。
今腰かけているはずの、ソファの感触も、少しも感じない。
まるで、宇宙空間に、ふわふわと漂っているみたいだ……
私に残った感覚は、蕩けるような快感。
吸われていく。
吸われていく。
快感と入れ替わるように、何かが吸われていく。
吸われていく。
吸われていく。
もう、吸い取るものも、ほとんど残っていないのに。
吸われていく。
吸われていく。
体の底で、ストローが水滴をすするような音がした。
空っぽだ。
私は、完全に空っぽになった。
そして私は、マールセンの一部となった。
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