二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第17話(ラジアス視点)

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 そして今、宿の一室で、トレイボンはヒーラーの治療を受けている。

 ヒーラーの少女は、額に汗を浮かべながら、言う。

「……ふぅ。なんとか、一命はとりとめました」

 俺は、ホッとした。

「そうか。よくやってくれた。さすがは治癒魔法のスペシャリストだな。内臓に達するほどの深い傷を、治してしまうなんて」

「でも、治癒魔法も、万能ではありません。これだけの深手だと、痛みはしばらく残りますし、何より、出血を止め、傷をふさいだだけですから、体力が完全に回復するまでには、長い時間がかかります。恐らく、半年以上は……」

 半年以上……

 それは、事実上、魔王を倒すための旅からリタイアしなければならないということだ。……くそっ、弱り目に祟り目ってやつだな。聖女ディーナが抜けてから、ただでさえうまくいっていないのに、魔法攻撃を一手に担っていた大魔導師トレイボンが離脱してしまうことは、俺たちのパーティーにとって、決定的な打撃だ。

 だが、どうしようもない。
 俺はため息を漏らし、「分かった」と頷いた。

 その時、トレイボンが弱々しく唸りながら、口を開いた。

「ラジアス……俺は……俺は……馬鹿者だ……天才魔導師と呼ばれ、いい気になっていたが、実際は、ただの馬鹿だったのだ……俺は……パーティーの構成と、戦術について、何もわかっていなかった……」

 俺は、驚いた。

 若くしてあらゆる攻撃魔法を極め、誰よりもプライドの高いトレイボンが、こんなふうに自分を卑下するなんて。トレイボンは目に涙を浮かべ、うわごとのように言う。

「俺たちの……パーティーのかなめは……俺でも、お前でもない……あの、聖女ディーナだったのだ……攻撃、防御、治癒……相反する要素を、たった一人でこなす……いつぞやの新聞に書かれていた通り……まさに、偉大なる聖女だ……」

「トレイボン……」

「何より彼女は……戦いの場をいつも冷静に見渡し……誰に言うでもなく、そして、自らの功績を誇るわけでもなく……最適な行動をしていた……俺たちは……いつの間にか、それを当然のことと思い、感謝しなくなった……それどころか……人々の注目を集める彼女を妬みすらした……なんて浅ましい……大魔導師が聞いて呆れる……」

「もういいトレイボン。これ以上喋るな。傷が開いてしまう」

 しかし、トレイボンは黙らなかった。
 目尻に溜まっていた涙が、とうとうこぼれ落ちる。

「本当は薄々……分かっていたんだよ……ディーナの方が、俺よりも優れた存在であると……しかし俺には……見栄があった……大魔導師としての、見栄があった……だからラジアス……お前に賛同し……彼女を追い出した……ふふ、ふふふ、その、くだらない虚栄心の結果が、このざまだ……これぞ、自業自得だな……うぐっ」

 そこでトレイボンは、喋ることができなくなった。傷口がふさがったとはいえ、魔物のおぞましい爪で内臓をえぐられたのだ。その苦痛は、そう簡単には消えはしない。まさに、地獄の苦しみだろう。
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