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第18話(ラジアス視点)
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トレイボンを一人で休ませてやるために、俺はヒーラーの少女と部屋を出た。
……そして、たった今トレイボンが言ったことを、頭の中で反芻する。
『俺たちのパーティーの要は、俺でもお前でもない。あの、聖女ディーナだ』
『本当は薄々分かっていた。ディーナの方が、俺よりも優れた存在であると』
どちらも、俺の心に直接突き刺さるような、鋭い言葉だった。
俺は、宿の廊下に座り込み、右手で額を押さえた。
……そうだ。
俺も、本当は分かっていた。
あのディーナが、勇者パーティーの中で最も重要な存在であり、彼女がいなければ、パーティーは機能しないと。……だが、それを認めることは、勇者としてのプライドが許さなかった。だから、ディーナを追い出し、彼女抜きでもやっていけると、証明したかった。
世間に。
そして、自分に。
だが、結果は大失敗だった。
逆に、ディーナがいなければやっていけないことを、心の底から思い知らされることになった。そして、親友であるトレイボンは大怪我をし、パーティーからの長期離脱を余儀なくされてしまった。
「くそっ……!」
口から自然と、悪態が漏れた。そんな、いらだった様子の俺に、ヒーラーの少女は、おっかなびっくりと言った感じで話しかけてくる。
「あ、あのぉ~、勇者様。トレイボン様はこれから、療養のためにパーティーを離脱しなければならないと思うのですが、そうなったら、勇者パーティーは、私と勇者様の、二人だけになってしまいますよね……?」
「……そうだな。それがどうした?」
「そ、そのですね……大変申し上げにくいんですけど、トレイボン様がいても、あんまりパーティーとして機能してなかったのに、勇者様と私、二人だけじゃ、とてもじゃないけど、やってくことはできないと思うんです……」
「…………」
「えっと、それで、その……私、このあたりが、潮時だと思うです……えっと、えっと、凄く、言いづらいんですけど……」
「そんなにビクビクするな。言いたいことがあるならハッキリ言え。別に怒ったりしない」
「は、はい。それじゃ、ハッキリ申し上げます。私、勇者パーティーを辞めて、実家に帰ろうと思うんです。その、なんて言うか、魔物たちと戦いながら旅をするのって、私、性格的に向いてないな~ってよく分かったので、これからは実家の診療所で、のんびり患者さんを診て暮らしていこうと思ってるんです」
「そうか。分かった」
彼女を引き留める気はなかった。ヒーラーとしては優秀だが、戦いの旅に耐えられる性格じゃないことは、これまでのことでよく分かったからな。ある意味、自分から辞意を表明してくれて助かったとも言える。
……そして、たった今トレイボンが言ったことを、頭の中で反芻する。
『俺たちのパーティーの要は、俺でもお前でもない。あの、聖女ディーナだ』
『本当は薄々分かっていた。ディーナの方が、俺よりも優れた存在であると』
どちらも、俺の心に直接突き刺さるような、鋭い言葉だった。
俺は、宿の廊下に座り込み、右手で額を押さえた。
……そうだ。
俺も、本当は分かっていた。
あのディーナが、勇者パーティーの中で最も重要な存在であり、彼女がいなければ、パーティーは機能しないと。……だが、それを認めることは、勇者としてのプライドが許さなかった。だから、ディーナを追い出し、彼女抜きでもやっていけると、証明したかった。
世間に。
そして、自分に。
だが、結果は大失敗だった。
逆に、ディーナがいなければやっていけないことを、心の底から思い知らされることになった。そして、親友であるトレイボンは大怪我をし、パーティーからの長期離脱を余儀なくされてしまった。
「くそっ……!」
口から自然と、悪態が漏れた。そんな、いらだった様子の俺に、ヒーラーの少女は、おっかなびっくりと言った感じで話しかけてくる。
「あ、あのぉ~、勇者様。トレイボン様はこれから、療養のためにパーティーを離脱しなければならないと思うのですが、そうなったら、勇者パーティーは、私と勇者様の、二人だけになってしまいますよね……?」
「……そうだな。それがどうした?」
「そ、そのですね……大変申し上げにくいんですけど、トレイボン様がいても、あんまりパーティーとして機能してなかったのに、勇者様と私、二人だけじゃ、とてもじゃないけど、やってくことはできないと思うんです……」
「…………」
「えっと、それで、その……私、このあたりが、潮時だと思うです……えっと、えっと、凄く、言いづらいんですけど……」
「そんなにビクビクするな。言いたいことがあるならハッキリ言え。別に怒ったりしない」
「は、はい。それじゃ、ハッキリ申し上げます。私、勇者パーティーを辞めて、実家に帰ろうと思うんです。その、なんて言うか、魔物たちと戦いながら旅をするのって、私、性格的に向いてないな~ってよく分かったので、これからは実家の診療所で、のんびり患者さんを診て暮らしていこうと思ってるんです」
「そうか。分かった」
彼女を引き留める気はなかった。ヒーラーとしては優秀だが、戦いの旅に耐えられる性格じゃないことは、これまでのことでよく分かったからな。ある意味、自分から辞意を表明してくれて助かったとも言える。
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