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STS第八期開講
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しおりを挟むそして次はいよいよ最後の生徒、雛汰が自己紹介をする番だ。
「はじめまして、えっと……名前は、ヒナ、って呼んでください。知り合いのカフェで働いています。……ネコ、です。ちょっと言いにくいんですけど、あの……キス、とか、えっち……とかの経験はないです。でも、理由は言えないんですけど、テクニックを身につける必要があって……なので、ここで色々学べたらいいなって思ってます。あと、ゲイってことが理由でイジメられたことがあって友達もいないんで、友達もできたらいいなと思ってます。よろしくお願いします」
──うん。途中ちょっと恥ずくて口ごもっちゃったけど、人見知りなおれにしてはなかなかうまく自己紹介できたんじゃないかな?
そんな満足感に浸りつつ、ぺこりと下げていた頭を上げた雛汰は、皆がニコニコしながら自分のことを見ていることに気がついた。
それはまるで、子供のお遊戯会を見守る保護者のようなあたたかい視線。
──おれの自己紹介、なんかおかしかったのかな……?
雛汰はなんとなく照れくさくなって、いそいそと席に戻った。
九人の生徒全員の自己紹介が終わると、次は二手に分かれて建物の中を見て回ることになり、雛汰はレイが案内をするグループに振り分けられた。
雛汰と同じグループには、謎に包まれた男ルイ、ウリセンで働く予定のリョウ、女性不信に陥ったというシュンがいる。
友達すらいない雛汰は、三人ものタイプの違うイケメン(しかも全員雛汰より頭一つ分近く背が高い)に囲まれるなんて状況に遭遇したことが無かった為ソワソワしながら部屋を出ると、忘れていたあの濃厚な甘い香りが漂ってきて、今度は耐えられずにふらついてしまった。
そのまま膝から力が抜けてしまい、あ、やばい、転ぶ、そう思った時。
横からすっと逞しい腕がのびてきて、雛汰の身体はその腕にガッシリと抱きとめられた。
「へーきか?」
「あ……、だ、大丈夫です!ありがとうございます!」
転びそうになった雛汰を抱きとめてくれたのは、同じ見学グループのリョウだった。
──やばい、ちかい……!
誰かにこんな至近距離で顔を見られたことが無かった雛汰は、恥ずかしさのあまり顔から火が出そうになった。
すると今度は、尋常じゃないほど顔を赤くしている雛汰を見て心配したのか、前にいたルイが、
「どこか具合悪い?」
と言いながら雛汰の顔を覗き込んできた。
──やばいやばい、これ以上寄られたらおれ心臓破裂してしんじゃう……!
命の危機を感じた雛汰は慌ててリョウの腕の中から抜け出すと、
「な、なんともないです!ほんとに!あの、おれ、ちょっとこのにおいがニガテで……なんかこのにおい嗅ぐとクラクラしちゃって……」
と、ややどもり気味で二人に話した。
「そう?それならいいけど……無理しちゃダメだよ」
「あー、わかるわー、俺もこのにおい苦手!なんつーか、頭の芯がブヨブヨになるよな!」
わたわたと挙動不審な雛汰に優しい言葉をかけてくれるルイ。
そんなルイの後ろから、突然ひょっこりと顔を出してめちゃくちゃデカい声でちょっとよく分からないことを言ってきたのはシュンだった。
ルイとリョウも、シュンの意味不明な言葉に、
「ブヨブヨ……?」
と眉を寄せ、首を傾げている。
「ブヨブヨ伝わらねぇ?まあいいけど。あ、俺シュンな!多分俺のが年上だけどシュンくんでいいから!敬語も無しで!ヒナとルイとリョウだったよな、改めてよろしく!」
突然訳の分からないことを言って三人を困惑させたシュンだったが、それでもこの人は他人の懐に入り込む天才なのだと、雛汰はすぐに気が付いた。
こんなにもグイグイ来るし、自分のことはくん付で呼ばせようとする割に他の生徒のことはちゃっかり呼び捨てしているのに全然嫌な感じがしなくて、むしろ、すぐに名前を覚えて呼んでくれているところには感心するし、昔から友達だったっけ?と錯覚するほどすんなり受け入れてしまう。
だから、人見知りで、仕事以外で他人と接することが苦手な雛汰でも、
「うん。こちらこそよろしくね、シュンくん」
なんて自然と返せたし、ルイとリョウも楽しそうに笑いながらシュンと握手を交わしていた。
その後雛汰、ルイ、リョウ、シュンの四人はレイの案内で建物の中を見て回った。
その時に説明を受けたのだが、どうやら雛汰が苦手なあの香りには性行為を行う際の気分を高める催淫作用に似た効果がらしく、あの身体が言うことを聞かなくなるような感覚はそのせいか…と雛汰は納得すると共に、あの香りを聞きながら講習を受けたら一体自分はどうなってしまうのだろうか...と少し怖くなった。
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