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退屈な男
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しおりを挟む──毎日が退屈で仕方なかった。
俺は大財閥の長男として産まれた。
子供の頃から周りにちやほやされて育ち、望めばなんだって与えられたし、身の回りの世話は世話係の人が全てやってくれる。
誰もが羨む裕福な暮らし。
だけど、長男として、この家を継ぐという使命を背負って産まれてきた俺は、そんな裕福な暮らしを手に入れる代わりに、自由を犠牲にしなきゃならなかった。
同年代の子供達が外で泥だらけになって夢中で遊んでるであろう時だって、俺は勉強か習い事。
新しいおもちゃを買ってもらっても、遊ぶ相手は友達ではなく世話係。
そんな幼少期を過ごしたせいで友達というものに飢えていた俺は、中等部へと進むと、家が大財閥だということをひけらかして周囲の気を引いた。
名家の子息、子女達が通うことで知られる学校だったから、彼らもきっと、繋がりを大切にするように親から言い付けられていたんだと思う。
俺の周りには、あっという間に人だかりが出来た。
友達に囲まれて過ごす日々。
ずっと憧れていたそれは、初めのうちはすごく楽しかった。
だけど、中二、中三と学年が上がり、高等部へと進む頃には、そんなまやかしの交友関係は虚しいだけだと気付いた。
誰も俺の内面を見てはくれない。皆が見ているのは俺の家柄だけ。
縁を切られる事を恐れる彼らは、いつだって俺の機嫌取りに勤しむ。
だから、喧嘩さえしたことが無かった。
それに加え、金目当てで近付いてくる女性達。
大学生になってからもそんな交友関係は続き、正直俺はうんざりしていた。
取り繕われた台詞、上辺だけの関係、偽物の愛情、代わり映えの無い毎日……。
俺はきっと、一生それらと付き合っていくんだろう。そう思ったら。
「あーーーーー……くっっっそつまんねぇ……」
心の底から吐き出したボヤきは、だだっ広い自室の闇にとけて消えた。
だけどそんな俺にも、最近ひそかに楽しみにしていることがある。
一つは、筋トレ。
家の中に作ってもらった俺専用のトレーニングルームで、筋肉のことだけを考えてトレーニングしている時は嫌なこと全て忘れられるし、汗をかくのは気持ちが良いし、結果的に体つきもどんどん男らしくかっこ良くなっていくしと良いことづくめで、すっかりハマってしまった。
そして、もう一つは……。
一日のルーティンを全てこなし、眠る支度を整えてからお気に入りのゲーミングチェアに腰掛けPCを立ち上げて、デスクトップに配置されたアイコンの中から一つを選び慣れた手つきでダブルクリックすると、目当てのページはすぐに表示された。
それは、ゲイ専門のポータルサイトで公開されているオンラインゲーム。
金目当てで恋人の座に収まろうとする女性達の欲望剥き出しの様相が、俺は苦手で。
友人になりたくて寄ってくる面々の中にはもちろん男性だっているけれど、彼らのアピールは比較的穏やかだ。
それは多分、友人の座は無数にあるのに対し、恋人の座は基本的に一つしかないから。
ここは日本で、どこぞの一夫多妻制の国ではない。
だからなんとかそのたった一つの座に収まりたくて、女性達は綺麗な服で着飾り、素顔が分からない程のメイクを施し、気を引こうと必死でアピールしてくるんだろう。
その気持ちが嬉しくない訳ではない。
でもそれは、彼女達が俺の内面を愛してくれているのであれば、の話だ。
結局、彼女達が愛しているのは俺の家柄だけ。
だから俺はなんとなく女性が苦手になって、男性しかユーザー登録することの出来ないゲイ専門のポータルサイトに登録した。
俺は元々色恋沙汰にあまり興味が無く、同性、異性という概念にも特にこだわりが無かったから、LGBTというセクシュアリティにも偏見は無かった。
ゲイ専門、という響きに怖気づかなかった訳では無いが、とにかく女性のいない世界に逃げたかった俺は、意を決してユーザー登録をすると、そのサイトで見付けたRPG形式のオンラインゲームにどんどんのめり込んでいった。
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