甘く蕩ける程に愛して

みのる

文字の大きさ
25 / 87
そしてふたりは………

お嬢様と栗栖の「お忍びデート」※

しおりを挟む
『さぁ‼お嬢様!出かけましょう!』

と、部屋をノックして入ってくるなりそう私に言う栗栖。

『でも…今日は確か…カグラの当番の日では…?』

疑問を栗栖にぶつけるも、栗栖は、

『あぁ、その辺は大丈夫ですよ!ちゃんと了承を得てきましたから!』

その栗栖の得意満面な顔。

続けて栗栖は私に、とある袋を渡してくる。
???な顔をする私に、

『さぁ、それに着替えて下さい。今日は「お嬢様」としてではなく、「普通な女の子」としてオレとデートです!』

そう言う栗栖は、何処か照れ臭そうである。

『オレも隣の部屋で着替えて来ますから…』

と栗栖は、自分の着替えを持ち…隣の部屋に消えた。

1人になった私は、袋を開いてみる。
薄手のピンク色のセーターと、白地に赤のチェックのミニスカート、それにぺたんこめなピンクな靴と、白い靴下が入っていた。(+白いつば付きの帽子)
“な…なんて短いスカート⁉こんなん履いたら…私!お嫁にいけなくなる‼”
…と、お嬢様が思ったかは謎だが、割と直ぐに着替えていた。「普通な服」を身に纏ってみたかったのであろう。

お嬢様がそれらを全て装備したすぐあとに、ドアをノックした栗栖が現れた。
濃紺のジーンズに、黄色のパーカー、それに赤いキャップ。
私の着替えた姿を見て、栗栖はため息を1つ吐き、一言。


『良く似合ってますよ、お嬢様。さぁ、行きましょう!』

しきりに辺りをキョロキョロ見回しながら出かけようとする栗栖。…隠れるようにして。
私は不思議に思い、栗栖に訊ねる。
『何故、こんな隠れるようにして出かけなければならないのですか?…カグラに了承は得てるのでしょう?』

すると、栗栖はこう答えた。

『…さすがに、お嬢様をこんな格好させて出かけさせる訳にはいかないでしょう?だから見つかる訳には…』

この「普通な女の子の格好」は、栗栖独断の判断だと私は漸く気づいた。
無事、屋敷を脱出した私たちを待ち構えていたのは…車では無く、、、自転車⁉茂みに隠すように、置かれてある。
栗栖は笑顔で私に言う。

『後ろの荷台にお乗り下さい、お嬢様!』

見ればそこには、座布団のようなものがくくりつけられている。私は良く分からないけれど、その自転車の荷台に跨るようにして座った。


『では、出発しますよ!』

栗栖は自転車を勢い良く漕ぎだした。ものすごいスピードで風を切り、走るクリス号。
私はしっかりと栗栖の背中にしがみついて、振り落とされないよう必死であった。

『帽子飛ばされないように、気を付けてくださいね!』

途中、栗栖がなんか叫んでたけど…聞こえない。
※しつこいようですが!自転車の2人乗りは禁止されております‼

何時も出かける街に着き、私たちは自転車を降りる。チュウリンジョウ(?)というところに自転車を停めないとならないらしい。
そんな私を…栗栖がさり気に手を引き…導いたのは、何か分かんないけど!とてもうるさいところ‼
栗栖も大きな声で私に向かって叫ぶ。

『ここは!若者の集う場所‼“ゲームセンター”というところです‼』

そこは、私にとって…謎な物ばかりであった。
栗栖は、私の手を引いたまま、とある妙な箱の中に入った。そして、私に言う。

『お嬢様、これから…写真撮影ですよ?この機械に言われた通りに動いて下さいね』

こんな箱の中で…写真撮影??

『とりあえず…オレの真似をして下さい。お嬢様』

箱の中の…カメラの様な物に向かって視線を送り、
栗栖はなんか…ポーズを決めてる。慌てて私も真似をする。ピースをしたり…敬礼してみたり…抱き合ったり…(恥!)
最後に!栗栖はカメラに向かって…私の唇に、栗栖のそれを重ねて来た。

『⁉』

唐突過ぎて、また目を閉じるのも忘れていた私。
タイミング良く、シャッターがおりた。



『後は落書きして…プリントアウトを待つだけですよ』

栗栖は手慣れた様子でこれまで撮った写真に落書きを始める。私は、何をしたら良いのかサッパリであったので、見ているだけだった。
とにかく慌ただしくて、少しだけ疲れた私。
落書きが終わり、写真が出来上がり、取り出し口から、コトンと音を立てて落ちて来た。それを嬉しそうに取り上げる栗栖。

満足気にそれを眺めながら、続いて栗栖は言う。

『さて…ゲーセンの中に…何か気に入ったぬいぐるみとかあったら…オレ、取りますよ?』

なんか良く分かんないけど…透明な箱にギッシリとぬいぐるみが詰まってる。

『可愛い♡』

色々あって、私は悩んだ。悩みながらも…選んだ1つのクマの大きなぬいぐるみ。
栗栖は苦笑いしながら…

『これは…取れないかもな…』

そう言いつつ、そのぬいぐるみを取ろうとする栗栖の目は真剣そのものだ。
ぬいぐるみを掴むやつが、(※クレーン)ぬいぐるみから滑って獲得失敗する度に…栗栖は悔しそうな顔をする。
栗栖が幾ら投じたのか…既に分からない頃。
クマの耳が、上手いこと引っかかってくれて…私たちは希望の品を手に入れた!



『栗栖!!ありがとう♡』

そう私が言って、ぬいぐるみを抱きしめる。

「お嬢様が喜んでくれるなら…オレも嬉しいです」

栗栖が何か呟いてたが…騒音に掻き消された。


そのあとまた、例のハンバーガーの店で昼食を摂り、屋敷にこっそりと戻る…も、(私が一般人の衣服を纏ってた姿が)カグラに見つかってしまい、こっぴどく叱られる私たちであった。
でも私はとても充実した1日を過ごした。

今日…生まれて初めて思った。ありきたりな台詞だけれども…私…、此処の「お嬢様」として生きることが出来て、、、「栗栖」かれに出逢えて…本当に良かった‼
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ヘンタイ好きシリーズ・女子高校生ミコ

hosimure
恋愛
わたしには友達にも親にも言えない秘密があります…。 それは彼氏のこと。 3年前から付き合っている彼氏は実は、ヘンタイなんです!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...